「ハイウェイとゴミ溜め」ジュノ・ディアズ

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夏休みになると、毎年田舎(カンポ)のオジさんの家にやられる9歳のユニオールと12歳のラファ。兄のラファは毎年文句を言うけれど、首都サント・ドミンゴのスラムとはまるで違う生活を、ユニオールは案外気に入っていました... という「イスラエル」以下全10編。

ドミニカ共和国からアメリカに移民した作家・ジュノ・ディアズの自伝的短編集。それぞれの短編は時系列的に並んでいるわけではなくて、主人公のユニオールは9歳だったりティーンエイジャーだったり、物語の舞台となる場所もドミニカ共和国の首都・サント・ドミンゴだったり、田舎町だったり、ニューヨークのスラムだったりと、結構ランダム。でも、それがなぜかとても自然で、その都度、すんなりとその情景に引き込んでくれるんです。
冒頭に、「あなたにこうして / 英語で書いていること自体 / 本当に伝えたかったことを / 既に裏切っている / わたしの伝えたかったこと / それは / わたしが英語の世界に属さないこと / それどころか、どこにも属していないこと」という言葉が引用されています。この言葉はキューバの詩人の言葉なのだそう。でもきっと、ディアズ自身の叫びでもあるんでしょうね。アメリカの大学や大学院に進学している以上、既に英語の方が堪能かもしれませんが、どんな風に書いても英語で書いている以上、元々話したり考えるために使っていたスペイン語とは異質なものとなっているはず。そういうことを考えると、母国語でもないフランス語を日々使い、執筆しているアゴタ・クリストフのことを思い出さずにはいられません。ジュノ・ディアズもアゴタ・クリストフのように、自分の中から母国語が消えていくのを感じていたりするのでしょうか。ジュノ・ディアズの場合は、戦争のためにやむを得なかったアゴタ・クリストフとは状況が全然違うのだけど。でもいくら上手に英語を話しても、英語は彼の母国語ではないんですよね。そしてそれこそが、この短編集に独特の雰囲気を与えているものなのかも。それぞれに余韻の残る短編集です。
でもこの題名、どこから出てきた言葉なんだろう? 原題は「DROWN」... 溺れる、です。直訳して、そのままタイトルにするわけにいかないのは分かるんですけどね。(新潮クレストブックス)

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