「双生児」クリストファー・プリースト

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イングランド中部ダービシャー州の町でサイン会を開いていた作家のスチュワート・グラットンは、サイン会を訪れたアンジェラ・チッパートンという女性に、その父親が書いていたというノートのコピーを渡されます。以前からグラットンは、ソウヤーという名前の1940年代に英空軍爆撃司令部に属していた人間の情報を求める広告を出していおり、父親が書き遺したノートが役に立つのではないかと考えたアンジェラは、その一部をコピーして持参したのです。

先日「奇術師」と「魔法」を読んだクリストファー・プリーストの作品。(感想) 本当はkotaさんが「SFガジェット満載」で「最後に現実崩壊感覚を味わえます」と仰る「逆転世界」を先に読もうと思っていたのに、入手の順番が逆になってしまいましたー。「双生児」はさらに圧倒的な傑作だそうなので、最後のお楽しみにしようと思ってたのに!
というのはともかく、今回は第二次戦争下の英国が舞台の物語です。その頃のことを本に書こうと調べている作家の集めた資料を読むという形で物語は進んでいきます。グラットンが調べていたのは、ソウヤーという名前の兵士もしくは士官。ソウヤーは良心的兵役拒否者でありながら、同時に英空軍爆撃機操縦士でもあるという人物で、英国首相・チャーチルが、なぜそのようなことが可能なのかというメモを残していて、そこにグラットンは物語を感じたんですね。まあ、この疑問の答は、ソウヤーが1人の人間ではなくて一卵性双子だったということで、早々に明かされてしまうんですけど...(笑) そこからが本領発揮。そこはクリストファー・プリーストだけあって一筋縄ではいきません~。本格ミステリ作品では双子を使ったトリックは使い古されてますけど、これはそういったトリックとはまた全然違う! プリーストならではの世界。
読み始めてすぐに「1940年半ばの米中戦争」という言葉にひっかかったんですが、もうここから始まっていたんですね~。ボート競技でベルリンオリンピックに出場したところから始まる双子の物語も、時代が戦争へと流れ込んでいく辺りも、読んでいて純粋に面白いです。私がもっとウィンストン・チャーチルやルドルフ・ヘスに詳しかったらなあ、なんて思ったりもしたんですけど、それでも十分楽しめます。その辺りはこの作品の表層上のことにすぎないんですけど... やっぱり読みやすくて面白いというのは重要ポイントですね。小難しいことを小難しく書ける人はいっぱいいるけど、そういうのってごく普通。難しげな単語を振りかざしてるだけで、結局虚仮威しに過ぎないなんてこともありますし。でも本当に頭が良い人の文章ってそうじゃないと思うんです。ここまで複雑な話をこんな風に読みやすく面白く書けるのって凄いです。なーんてことを書き続けてるのは、ひとえにネタバレしたくないからなんですけど...(笑)
大胆でありながら緻密。クリストファー・プリーストならではの、知的な「語り=騙り」を試してみてください。肝心のトリックに関しては、もし読み終えた時には分からなくても、大森望さんによる解説に詳しく書かれているので大丈夫です。^^(早川書房)


+既読のクリストファー・プリースト作品の感想+
「奇術師」「魔法」クリストファー・プリースト
「双生児」クリストファー・プリースト
「逆転世界」クリストファー・プリースト

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Commentaires(4)

こんにちは♪ わたしもつい最近読みました。
いやーホントにプリーストは一筋縄ではいきませんよね。
簡単な文章でわかりやすく書いているはずなのに気がつくと惑わされてクラクラ。第1章のラスト、そして第2章のラスト、とにかく茫然自失でしたわ(2度目の救急車の中のシーンでは文頭でぞわっと鳥肌が立ちました)。ちゃんと年譜までメモしながら読んだのに(笑)!

読了してから同じ絵の色調を変化させた表表紙と裏表紙を見比べて、なんだか感慨にふけってしまいました。

あ、逆転世界もめっちゃおもしろいですから!
双生児を先に読んでも全然色褪せませんから!

ちょろいもさん、こんにちは~。
いや~、ほんと面白かったですね!
頭のいい人に翻弄されるのってなんて楽しいんだろう~って思いましたよ。えっ、マゾですか。そうですか。(笑)
おおお、年譜をメモしながら読まれても、すっかり惑わされてしまったのですね。
私もメモしようかと思ったんですけど、出先で読んでたもので、結局諦めてしまったんです。
茫然自失ポイントが1つじゃないっていうのもスゴイですよね。読みながら何度前に戻ったことか。そうそう、救急車も!
やっぱり、ここまで分かりやすい文章で書いてるのに、ってポイントですよね?!
もう、とんでもなく頭の良い人なんだろうなあ…

逆転世界、面白いですか!
全然色褪せないとお聞きできて嬉しいです。入手したら読みますね~。

TBさせていただきました。

評判どおりで面白かったです。
正直重厚すぎて歯が立たない感じはしましたが・・・。
虚実入り乱れて、本当に不思議な魅力に満ちている一冊でした。

タウムさん、こんにちは。はじめまして、でしょうか?
TBありがとうございます。

もうちょっと自分に歴史的な知識があればなあと思ってしまったんですが
ほんと面白かったですよね。ものすごく読み応えがありました。
プリーストの作品は、どこでやられてしまうか予想がつかなくて
読んでいるとドキドキしてしまいます。クセになる面白さですね。^^

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