「銀色の愛ふたたび」タニス・リー

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スラム街で生まれ、宗教団体に育てられたローレンの生活はとても厳しく質素で、敬虔深いもの。しかしそんなある日、10歳だったローレンは、床下に隠されていた1冊の本を見つけます。それは「ジェーンの物語」。1人の少女とロボットとの恋愛を描いた物語でした。それまでは本と言えば聖書ぐらいしか知らなかったローレンは、たちまちのうちに夢中になります。

ジェーンとシルバーのロマンティックな恋物語「銀色の恋人」から24年ぶりの新作。この「銀色の恋人」が、本の中に登場する「ジェーンの物語」というわけです。
「銀色の恋人」は、恋に恋する少女のロマンティックな物語。人形のように扱われていたジェーンが母親から自立する物語でもあったんですけど、今回の主人公ローレンは、最初から自立していた少女。育ててくれた場所を早々に飛び出して、自分の力で生き延びています。考えてみれば、まるで逆の設定なんですね。「銀色の恋人」は、何1つ不自由のない少女がロボットを選び、そのことによって成長していく物語。今回の「銀色の愛ふたたび」は、貧しい少女がロボットに選ばれ、そしてロボットが自立する物語。どちらも選んだ側が成長するという点では共通してますけど、前回はジェーンの成長物語であったのに比べ、今回のローレンは、恋に落ちた途端に自我や自立を失ってしまったみたい。
ずっと「ジェーンの本」を読んでいたローレンがシルヴァーに憧れて、その気持ちがいつしか恋に変わっていたというのは、まだ理解の範囲内なんですけど... シルヴァーの生まれ変わりのヴァーリス(silver→verlis のアナグラムですね)がローレンのどこを好きになったのかは、よく分からなかったんですよねえ。まさかローレンの外見や条件だけに惹かれたわけでもないのだろうとは思うんですけど... 外見的な美しさでいったらロボットの方が遥かに美しいわけだし。それ以前に、ヴァーリスは本当にローレンのことを好きだったのかしら? 「銀色の恋人」には、ジェーンとシルヴァーのお互いへの思いやりが溢れてたんですけど、今回はそういうのがまるでなかったような気がします。そもそもヴァーリスがシルヴァーの記憶を持ち続けているという設定も、結局あまり生かされないままでしたしね。そこで何かを葛藤するのでなければ、記憶を持ち続けることに一体何の意味があるんでしょ? 結局、ローレンに嫉妬させるためだけにしか役立ってなかったような。
ロボットの自意識といえば、どうしてもアシモフの三原則が頭をよぎってしまいます。別にロボットの話だからといって、必ずしもその三原則に則ってる必要はないでしょうけど、やっぱりあれはとても基本的な部分をカバーしてると思うんですよね。ここの会社はそういう措置を取らないまま、ロボットを作ってたのかしら? なんて腑に落ちない部分がちょこちょこと残ってしまいました。腑に落ちない最大のポイントは、「銀色の恋人」がとても綺麗に終わっているのに、なぜここで続編を出したのかということ。本当に、なぜ24年経った今、続編が...?(ハヤカワ文庫SF)


+シリーズ既刊の感想+
「銀色の恋人」タニス・リー
「銀色の愛ふたたび」タニス・リー

+既読のタニス・リー作品の感想+
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