「鬼仙」南條竹則

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浙江省の南の町の役所にいるのは、英華という名の鬼仙。英華はかつてこの町の役所で殺された幽霊。しかし修業をして仙籍を得て鬼仙となり、そのまま役所の中に棲み付いているのです。「肌の色雪をあざむく、天人のような美女」の英華のこと、気に入った役人がいれば恋仲になることもあれば、自分を魔物祓いの祈祷で追い払おうとする役人がいれば、それ相応の報復で思い知らせることも。そんなある日、能吏だが堅物の范公明がここの役所に赴任して来て... という表題作「鬼仙」他全6編。

宋から清の時代の中国を舞台にした短編集です。どうやら「緑窓新話」という中国の古い本を種本として書き上げた物語のようですね。6編のうち最後の2編でその「緑窓新話」の中の話を南條竹則さんが脚色しつつ紹介されていて、それがまた面白いんです。
この「緑窓新話」は、「聊斎志異」から遡ること数百年、南宋の風月主人が志怪、小説、史書、随筆、逸話集などから物語を集めて編集した154編の物語集なのだそう。「聊斎志異」ほどの生彩の豊かさはないそうなんですけど、その辺りが逆に宋の好事家の仕事という感じでいいみたい。それはぜひとも読んでみたーい。...と、ネットで古本屋を調べてみたんですけど... 3件ほど該当する本が出てきたんですけど... 上海古籍出版社の中国古典小説研究資料叢書って、日本語じゃあないんですかね...? 中文書っていうのは...? どちらも日本語じゃなさそうな気配が濃厚... そんなの怖すぎて注文できませんーっ。

6編中で私が一番好きだったのは、表題作の「鬼仙」。英華姐さん、とでも呼びたくなるような鉄火肌の英華と、堅物の范公明の関係がいいんです。情が深くて、恋人の一族に重い病気の人間がいれば、よく効く薬を与えたりもする英華なんですが、魔物祓いの祈祷なんてしようとする役人には容赦しません。「この無礼者!何をする!あたしは下等な狐狸妖怪じゃないぞ!」なんて啖呵を切っちゃうし、その後、きっちりと報復が...。范公明も最初は英華を追い払おうとして、逆に英華に命を狙われたりもするんですけど、英華のおかげで悪人が罪を自白したのを見て、悪い妖怪ではないと悟って、きちんと感謝と謝罪をするんです。で、ちょっとした茶飲み友達になっちゃう。(范公明は妻帯者だし、英華はその辺りの仁義を大切にするから、あくまでも茶飲み友達)
あと、「我輩は猫である」ブラック風「犬と観音」も面白かったし、料理の上手な小琴の活躍が小気味いい「小琴の火鍋」も、南條さんらしい美味しそう~な作品でした。やっぱり南條竹則さんの本はもっとガンガン読もうっと。(中央公論新社)


+既読の南條竹則作品の感想+
「セレス」南條竹則
「りえちゃんとマーおじさん」南條竹則
「鬼仙」南條竹則
「あくび猫」南條竹則
「魔法探偵」南條竹則
Livreに「酒仙」「満漢全席」「遊仙譜」「ドリトル先生の英国」の感想があります)

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