「密偵ファルコ 錆色の女神」リンゼイ・デイヴィス

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紀元71年。今回の仕事の依頼主は、解放奴隷のサビナとアティリアという女性2人。彼女たちとそれぞれの夫は解放奴隷であり、そして同じく解放奴隷仲間だったノヴスと一緒に、ローマの北にある広大な屋敷に暮らしています。しかし、ノヴスが近々セヴェリナという女性と結婚しようとしているのですが、セヴェリナには過去3回の結婚歴があり、その3回とも夫が早死にしているというのです。ファルコは調べ始めます。

密偵ファルコシリーズ3作目。
今回仕事の依頼人となるのは、解放奴隷。この解放奴隷については、先日アントーニーヌス・リーベラーリスの「メタモルフォーシス」を読んだ時にも出てきました。このアントーニーヌス・リーベラーリスという作者が解放奴隷らしいんですよね。奴隷とは言ってもローマ時代の奴隷は大抵が戦争捕虜で、高い教養を持つ知識人も含まれていることから、ローマ人貴族の秘書となったり、その子弟のギリシャ古典教育のために家庭教師になるなど、重用されていたのだという説明がありました。お金を貯めて自由を買い取ったり、主人が亡くなった時に遺言で解放されるなど、自由の身になる機会もそこそこあったようです。「奴隷」という言葉を聞くと、どうしても生まれた時から死ぬ時まで、みたいなイメージがあるんですけど、解放奴隷は全然違うんですねー。今回登場する解放奴隷も、ある程度の教養人だし、貯めたお金を元手に商売で大成功したようです。今や大富豪。
今回もひねくれたユーモアセンスの持ち主であるファルコの語りが楽しいんですが、前2作とは違って、全編通してローマ内での展開でした。そして前2作よりもずっとミステリ色が強かったです。果たしてセヴェリナは白なのか黒なのか。セヴェリナが白だとしたら、黒は誰なのか。その方法と動機は。セヴェリナの行動には今ひとつ納得のいかないところもあったんですが、そのファム・ファタールぶりと、それに対抗するファルコの姿が楽しかったです。実際的に見えるファルコなんですけど、実は結構ロマンティックなんですよね~。
可笑しかったのは、ファルコが皇帝の息子にもらった巨大ヒラメ(ターボット)を、アパートの部屋で料理する場面。狭い部屋で焼くわけにもいかず、最初は兄の形見の盾(!)で煮ようとするんですが、深さが足りなくて、結局洗濯用の大きな銅の盥を借りてくるんです。一体どれだけ大きいの? この場面には招かれざる客まで登場して、ちょっとしたどたばた劇。それともう1つ可笑しかったのは、ルシウスという法務官の書記に関する描写。「いかにも切れ者」という辺りはいいんですけど、「馬券屋のおやじみたいな粋なかっこうをしている」ですって! 馬券屋のおやじって... 競馬が貴族のスポーツのイギリスでは、「馬券屋のおやじ」も粋なんでしょうけど、この日本語だと到底かっこよく感じられませんー。でもこんなところに、作者のお国柄が出てくるのが楽しいです。これはやっぱり狙ったものなのかな? それとも無意識...? やっぱり狙ったものなんだろうなあ。(光文社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「密偵ファルコ 白銀の誓い」「密偵ファルコ 青銅の翳り」リンゼイ・デイヴィス
「密偵ファルコ 錆色の女神」リンゼイ・デイヴィス
「密偵ファルコ 鋼鉄の軍神」「密偵ファルコ 海神の黄金」リンゼイ・デイヴィス
「密偵ファルコ 砂漠の守護神」「密偵ファルコ 新たな旅立ち」リンゼイ・デイヴィス
「密偵ファルコ オリーブの真実」「密偵ファルコ 水路の連続殺人」リンゼイ・デイヴィス
「密偵ファルコ 獅子の目覚め」「密偵ファルコ 聖なる灯を守れ」リンゼイ・デイヴィス
「密偵ファルコ 亡者を哀れむ詩」「密偵ファルコ 疑惑の王宮建設」リンゼイ・デイヴィス
「密偵ファルコ 娘に語る神話」「密偵ファルコ 一人きりの法廷」リンゼイ・デイヴィス
「密偵ファルコ 地中海の海賊」リンゼイ・デイヴィス
「密偵ファルコ 最後の神託」リンゼイ・デイヴィス

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