「映画篇」金城一紀

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「太陽がいっぱい」ドラゴン怒りの鉄拳」「恋のためらい/フランキーとジョニーもしくはトゥルー・ロマンス」「ペイルライダー」「愛の泉」という、映画の題名のついた短編5編。「太陽がいっぱい」には在日朝鮮人の少年たちが登場して、これまでの金城一紀さんの作品にかなり近いんですけど(最初、実話かと思いました...)、2作目以降の作風はハードボイルドタッチだったり、ハートウォーミングだったりと様々。でも全ての話に、8月31日に区民会館で上演の「ローマの休日」が共通していて、それぞれの物語の登場人物たちが、それぞれの想いを胸に「ローマの休日」を同じスクリーンで観ることになりますし、他にもちょこちょことリンクしてる部分がある、ゆるいくくりの連作短編集。

「ローマの休日」以外のリンクから浮かび上がってくるのは、結構重いドラマだったりするんですけど、5つの物語を締めくくる「愛の泉」がとても暖かいので、幸せな読後感。最後まで読んで、最初の「ローマの休日」上映会のポスターに戻ると感慨深いものが~。その後が気になる話もあるんですけど、これはトム・リプリーが逮捕されない「太陽がいっぱい」ということなのかな。この中だとやっぱり「愛の泉」がいい、という人が多いと思うんですけど、ちょっぴり冗長な感じもあったので(浜石教授の口癖「easy come, easy go」が効いてるのかも)、私は「ドラゴン怒りの鉄拳」が好きでした。これは、夫がある日突然自殺してしまって、戸惑う妻の物語。ゾンビーズシリーズのようにページをめくる手が止まらないという感じではなくて、読んでる途中で何度も前に戻ったりして、私としては読むのにとても時間がかかった作品だったかも。すっと読めば、それほど長くないんですけどね。

そしてこの作品、とにかく映画が沢山登場します。公式サイトによると、なんと全部で96本の題名が挙がっているのだとか。私は、今でこそほとんど映画をを観なくなってしまったんですけど、高校から大学にかけて白黒映画を中心に古い名画を観るのが好きだった時期があるので、懐かしい作品が色々ありました。「太陽がいっぱい」を観たのもその頃。フランス映画にもいいのがいっぱいあると思うのに、金城さんがお好きなフランス映画ってこれだけなのかな...。そうそう、フランス映画といえば、この作品の中で何度も登場するのに題名が一度も書かれていなくて、すごく気になった映画が1つあったんです。金持ちでインテリの主婦がアラブ系の労働者階級の若者と不倫して、やがてアラブ系の若者は差別のために殺されてしまうという話だそうなんですが... なんだろう? カンヌか何かの国際的な映画賞を取っていて、著名人や文化人が好きな映画としてよく名前を挙げるという映画なんですって。「トップガン」(日本では1986年公開)と同時期に日本で公開しているようだったので、1985~1986年を中心に、カンヌだけじゃなくてヴェネチアの方もちょっと見てみたんですが、それらしいのは見当たらなかったです。残念。(集英社)


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Commentaires(4)

こんにちは。TBさせていただきました。
素敵な作品でしたよね~。
金城作品ははずれがありません。
確かに、スラスラと読めるというよりはじっくり読んでいきたい作品でした。
どの作品も好きですが、私は特に「ドラゴン怒りの鉄拳」が好きです。
2人の淡い恋愛模様が可愛らしくって^^
私はあまり名作と呼ばれる昔の作品って見たことがないんです。
登場した作品で見たことがあったのは「トトロ」と「ラピュタ」だけでした^^;
あのタイトルの出なかった映画は謎ですよね~
ある意味気になります。

苗坊さん、こんにちは!
お返事が遅くなってしまってごめんなさい。
ほんと素敵な作品でしたよね。今回も大当たり!
あ、苗坊さんも「ドラゴン怒りの鉄拳」がお好きだったんですね。お仲間です~♪
ほんとあの2人が、ほのぼのとしていて可愛らしかったですよね。
でね、あの彼が最初に紹介してた映画があんまり面白そうだったので
その後レンタルに探しに行ったんですけど、見つからず…
ないとなると、ますます見たくなっちゃいます。(笑)
あのタイトルの出なかった映画も、分からないとなるとますます気になります~。(^^ゞ

はじめまして、こんにちは。
かなり前の日記なんですが、コメントさせていただきます。
タイトルの出なかった映画は金城さんが考えた架空の映画らしいです。
どこで見たか忘れましたが、何かのインタビューで語ってたのを見たので、ここにお知らせしておきます。

はじめまして~。コメントありがとうございます。

あ、タイトルのないあれは、架空の映画だったのですか。
道理で調べても全然出てこないはずですね。そうか、そうだったんだ。
教えて下さってありがとうございますーー!

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