「魔法の玩具店」アンジェラ・カーター

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何不自由なく育ってきたメラニーの15歳の夏、アメリカに講演旅行に出かけていた両親が事故で亡くなります。有名な作家だった父に貯金はなく、一文無しとなったメラニーと弟のジョナソン、妹・ヴィクトリアは、南ロンドンで玩具店を営んでいる、会ったこともない叔父に引き取られることに。叔父の家での生活は、豊かだった両親との暮らしとはまるで異なるもの。不潔で不便な環境の中で、学校にも行かせてもらえないまま、叔父の顔色を窺う日々が続きます。

アンジェラ・カーターの作品を読むのは、「ワイズ・チルドレン」(感想)に続いて2作目。華やかで猥雑な雰囲気が楽しい「ワイズ・チルドレン」とは全然雰囲気が違っていて、こっちはもっと文学っぽい作品でちょっとびっくり。あ、題名に「魔法の」とはあるけど、全然魔法は出てこないし、ファンタジー作品でもないです。
冒頭の場面はとても綺麗なんです。メラニーが自分の部屋で鏡で見つめながら未来の恋人のことを考えてときめいていたり、母のウェディングドレスをこっそり取り出して、月の光を浴びながらそれを着て、夜の庭に出て行く場面がものすごく美しいー。でもそういう美しい場面があるから、両親の死後の貧しさが一層強調されてしまうんですね。両親の家とは対照的に、叔父の家の生活には美しさも幻想のかけらもなくて、とても現実的。
でも、それほど生活が零落しても、メラニーの恋に恋するところは変わらず。同居してる青年(叔母の弟)の不潔さに嫌悪感を抱きつつも、幻想の中の王子様を求めるように、ほのかな恋心を抱くんです。この辺りは、あまりにお手軽だなあという印象なんですが、でもそれがまた現実なのかも。そして最後に全てを失ってしまうところでは、メラニーの中の幻想も燃え尽きてしまうみたい。

私としては、「ワイズ・チルドレン」の方がずっと楽しくて好きだったなあ。でも「ワイズ・チルドレン」は晩年の傑作で、この「魔法の玩具店」は、長編2作目という初期の作品、しかもアンジェラ・カーターの作品の中でもちょっと異質な方らしい... やっぱりもうちょっと違う作品を選んだ方が良かったかも。(河出書房新社)


+既読のアンジェラ・カーター作品の感想+
「ワイズ・チルドレン」アンジェラ・カーター
「魔法の玩具店」アンジェラ・カーター
「夜ごとのサーカス」アンジェラ・カーター
「血染めの部屋 大人のための幻想童話」アンジェラ・カーター

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