「サクリファイス」近藤史恵

Catégories: /

 [amazon]
大学に入る時に、それまで続けていた陸上競技をやめて自転車のロードレースを始めた白石誓は、今は国産自転車フレームメーカーが母体のチームに所属する選手。チームのエースは33歳のベテラン、石尾。そしてその次の位置につけているのが、誓と同期でまだ23歳の伊庭。誓はエースを狙うほどの実力ではなく、アシストに徹した走り。そして日本で行われる数少ないステージレース、ツール・ド・ジャポンに、誓も出場することになります。しかしその中の南信州での山岳コースで、思いがけず誓が総合トップに踊り出てしまうのです。その時、エースの石尾にまつわる3年前の黒い噂が明るみに出て...。

近藤史恵さんの、久々のノンシリーズ作品。近藤史恵さんにしてはちょっと珍しい雰囲気かな。自転車のロードレースの話です。今まで自転車競技には全然興味も知識も無かった私なんですけど、いやあ、面白かった!

まず、この本で知ったこと。

・自転車のロードレースは、紳士のスポーツとも、この世で最も過酷なスポーツとも呼ばれる。
・集団の先頭を引っ張る選手が空気抵抗を1人で引き受けることになるので、レースの最中でも、相手がライバルだったとしても、順番に先頭交代するのがマナー。(紳士のスポーツたる所以の1つ)
・ロードレースにはエースとアシストという役割分担があり、実際には個人競技というよりも団体競技に近い。
・アシストはチームのために、時にはエースの風除けとなり、時にはエースとは違う場所でレースを作る。エースの自転車にトラブルがあった時は、アシストが自分の自転車を明け渡すこともある。

まあ、ほかにも色々あるんですが(紳士協定的な暗黙の了解がいっぱい)、内容を読む上で重要なのはこのぐらいでしょうか。作品の中には、うちから比較的近い地名も登場してて、確かにそこの道で自転車のトレーニング姿をよく見かけてはいたんですけど、こういうことをやっていたとは、ほんと全然知らなかった。でもこれが素直に面白くて~。本当の自転車レースを見たくなってしまったわ! 自ら1位でゴールするよりも、アシストに徹する方が好きだという主人公の気持ちにも共感してしまったし。でも、アシストに徹したい主人公の思いとは裏腹に、思いがけずエースへの道が開けてしまって、周囲の人間の主人公に対する視線や態度が変わっていくんですね。それにつれて、様々な思惑が交錯して。
でもそんな風にロードレースの魅力とか、それにまつわる人間ドラマを描く作品だったはずなのに、さすが近藤史恵さん。ミステリ作品でもありました。しかもそのミステリ部分がいいんです~。そういう風にミステリが絡むと、思いがけない人間の暗部が見えてきたりするものだし、近藤作品だからこそ尚更そうなりそうなところなんですけど... この解決は良かったな。自転車のロードレースがそれまで以上に理解できたような気がします。...本当にそこまで...?という部分も正直ちょっぴりあるんですけど、でも良かった。ほおおっ。

自転車を扱った作品といえば、竹内真さんの「自転車少年記」もそうですね。この作品とはまたタイプが違いますが、あれもとっても爽やかな青春小説でオススメです~。今度テレビで自転車のロードレースをやってることがあれば、見逃さないようにしようっと。(新潮社)


+既読の近藤史恵作品の感想+
「モップの精は深夜現れる」近藤史恵
「賢者はベンチで思索する」近藤史恵
「南方署強行犯係 黄泉路の犬」近藤史恵
「にわか大根」近藤史恵
「ふたつめの月」近藤史恵
「モップの魔女は呪文を知ってる」近藤史恵
「サクリファイス」近藤史恵
「タルト・タタンの夢」近藤史恵
「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵
「寒椿ゆれる」近藤史恵
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

| | commentaire(5) | trackback(3)

Trackbacks(3)

「サクリファイス」近藤史恵 へのトラックバック一覧:

URL TrackBack de cette note:

自転車ロードレースをモチーフにした話で、エンターテイメントとしての完成度が高いので、今後いろいろな賞レースに顔を出してきそうですね(早速、本日購入の「このミス」... » Lire la suite

サクリファイス (新潮文庫)近藤 史恵新潮社このアイテムの詳細を見る 「心に残る本」の牛くんの母様推薦→記事はこちら 今回は、近藤史恵『サクリファイス』を紹... » Lire la suite

「サクリファイス」は日本ではマイナーな自転車のロードレースを描いた作品。 08年本屋大賞2位。 (この記事ネタばれあり)    【送料無料】サクリファイス価格... » Lire la suite

Commentaires(5)

四季さん、こんばんはー。
『サクリファイス』読まれたんですねー!
四季さんの反応も上々ですね(^^)

主人公のチカと石尾さんは”勝つ”ということの重さを肌で感じて、身をもって知っているんですよね。
でも、それに対する考え方が全然違うところがとてもよく描けていましたよね(^^)それから、伊庭くんの存在も良かったと思います。
チカだからこそ、あの結末を導くことができたんだと思うんです。
ところで、私の友人に自転車してる人が居るんですけど、その友人にこの機会に自転車についていろいろ聞いてしまいました!
やはり日本ではメジャーなスポーツではないので、興味をもたれたことが嬉しかったみたいですごく丁寧に教えてくれましたよー。
一番のびっくりだったのが、これ!自転車の競技選手って全身の(ウエアの外に出てる部分の)毛を剃ってるって知ってました?落車したときの擦り傷が化膿して回復が遅れるのを防ぐ為だそうです!!へぇぇ、奥が深い・・・。
いえ、私が知らなかっただけで、本当は常識なのかもしれないけど。。

追伸です(^^;)

『サクリファイス』増刷かかったそうです!
そして!CATVミステリチャンネルの「ミステリブックナビ」というチャンネルオリジナル番組「今月のイチオシ」コーナー国内本で『サクリファイス』がイチオシ!になってました~♪
これで手にとってくれる人が増えて、近藤さんのファンが増えると素敵ですね☆

彩水仙さん、こんにちは。
読みましたよー。面白かったです!!
歌舞伎の時もそうだったんですけど、近藤さんの作品って
全く知らない題材が使われていても、安心して読めるなあって実感しました。
ごく自然に、その世界に入り込んでいけますよね。寧ろその題材に興味津々になっちゃう。
おお、自転車に詳しいお友達がいるなんて、羨ましい~。私も色々聞いてみたい~。
しかし、化膿を防ぐために毛を剃ってるとは。それはすごいなあ…
神経の細やかなところがある人に向いてるスポーツなのかもしれないですね。
何も考えずに力だけで押していくタイプは、ちょっとダメかも。(笑)

うんうん、伊庭くんの存在も良かったですね。最初はどうなるかと思いましたが…
あ、最初といえば、冒頭のあの文章があるじゃないですか。回想っぽいヤツ。
あれがあったので、どうなることかとほんとドキドキしてしまいましたよ。
心臓に悪かったです。(笑)

ほんと、これで近藤さんの読者層が広がると嬉しいですね。
自転車をやってる人や自転車ファンにもが読者が増えるかな? 増えるといいな♪

こんにちは、お久しぶりです。読書好きのPNUです。
この本は楽しかったですね、私もTVでロードレースを見てみたくなってしまいました。

PNUさん、こんにちは!
こちらこそ、すっかりご無沙汰してしまって申し訳ありません~。
私の海外物の比率がすっかり増えてしまったせいなんですが… てへへ。

この本は本当に楽しかったですね。大好き!
実際のロードレースがほんと見たくなりますよね~。

コメントする(要JavaScript)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.