「つまみぐい文学食堂」柴田元幸

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「Menu」「Aors d'Oeuvre」「Fish」「Meat」「Specials」「Beverages」「Desserts」と、フルコースのメニューになぞらえた章立てで、翻訳家の柴田元幸さんが主にアメリカ文学の中の食べ物を紹介していく本。あとがきとして、挿絵を描いた吉野朔実さん、一日従業員だという都甲幸治さんとの対談付きです。

美味しそうな料理が登場する本は大好き。自分も食べてみたくてうずうずするし、読んでるだけでも楽しいですよね。そんな美味しそうな作品っていっぱいあると思うんですが... この本を一読して驚いたのは、これだけ料理の場面を紹介しておきながら、美味しそうな料理がほとんどないこと! 一番美味しそうだったのが、柴田元幸さんの小学校時代の給食の鯨の話なんですよー。たまに美味しそうだと思えば、紹介されるだけで品切れと判明してしまうし、大抵のは全然食べてみたくなりません。「オードブル」の中の「根菜類等」の章なんて、かつてミスター・ポテトヘッドというゲームで使われたじゃがいもが、そのまま箱の中に放置されて、今はすっかりしなしなに萎れてる話とか... あとこの章には、医者が83歳の老人の腸から取り出した良性のポリープをキクイモとして料理して、兄夫婦にご馳走してしまうなんて話もありました。^^; (これは強烈だった)

これを読んでると、海外作品ってそんなに料理が不味そうだっけ? なんて思ってしまうんですけど、そんなことないですよね。子供の頃読んだ本にも美味しそうな本はいっぱいあったし。私の中ではワイルダーの「農場の少年」が一番なんですが、その他にも「ちびくろさんぼ」のホットケーキとか、「ハイジ」のおじいさんのチーズとパンの食事とか。「秘密の花園」のはちみつたっぷりのおかゆ、食べてみたかったなあ。それなのになぜそんな不味そうな料理ばかり? と思ったら、対談にこんな言葉がありました。

上手くいってる恋愛の話なんか聞きたくないじゃないですか。それと同じように、旨い食べ物の話を聞くぐらいなら自分で旨いものを食べたいと思うから、人は旨い食べ物の話なんか読みたくないだろうというのが、僕の頭の中のロジックなわけです

な、なるほどね。そういうものなのでしょうかー。

やっぱり、だから『アンナ・カレーニナ』の出だしの、幸福な家庭はどこも似たようなものだが、不幸な家庭はみんなそれぞれ違っている、それぞれの不幸があるという、あれですよ。あれと同じで、おいしい食べ物はみな似たようなものだが、不味い食べ物には、それぞれ独自の不味さがある... 違うか。(笑)

そこまで!(笑)

どうやら、アメリカの日々のベーシックな食事がとーっても不味いということも関係してるようなんですけどね。(そんなに不味いの?) 
吉野朔実さんの「あんまり不味いものの話を聞くと、ちょっと心惹かれるんですよね。一度ぐらい、それを口にしてみようかなって」という言葉も可笑しかったです。食べてみたくなるかどうかは不味さの質によるんだけど、この言葉って読書にそのまんま当てはまりますね。あんまりぼろくそにケナされてると、逆に読みたくなってみたり。

と、そんな風に不味そうな料理が勢ぞろいしてるんですけど、紹介されてる作品には面白そうなのがいっぱい。いや、「面白い」というよりもむしろ「妙」や「変」という言葉が相応しい作品かもしれないんですが... 柴田元幸さんの読み方も時々妙にマニアックですしね。(というより妄想系? 笑) でも、料理が料理として純粋に存在しているのではなくて、小説の中の負の要素を強調するような使い方をされているのが分かったりなんかして、その辺りも面白かったです。(角川書店)

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Commentaires(2)

四季さん、こんばんは!
えへへ、この記事、待ってましたよ~。

真面目そうに見える柴田さん、やっぱり意外と妄想系ですよね。笑
その柴田さんが集めたお話だから、これはまた…という感じで。
ほんと、本の中でも美味しい料理の話は沢山あるし(この間の「柘榴のスープ」とか!)、
そういうのも大好きだけれど、不味い話でもいろいろあるんだな、と思えたのも収穫ですよね、これ。笑

四季さんはワイルダーの美味しいものと言えば、「農場の少年」なんですね~。
私は初期の方が好きで、手作りバターとか、燻製にわくわくしていました♪

そうそう、わたし、これを読んで、さらにニコルソン・ベイカーが気になったんですよね。
スティーブン・キングに酷評されて、対抗して書いた作品、なんて気になりません?
しかも、恐怖の源がジャガイモって…。笑
(四季さんも挙げておられる、キクイモの話も相当強烈でしたけど)

つなさん、こんにちは。えへへ、読みましたよん。
この本、前から気になってはいたんですけど、以前にも書いたようにフォントが…(笑)
ということで、今回読めたのはつなさんのおかげです! ありがとうございます~。
いや、ほんと不味そうながらも面白かったですね。うん、収穫でした。(笑)
おお、そう読むのか、という発見も多かったし、食べ物の不在の話も面白かったし~。

ああ、ニコルソン・ベイカーのじゃがいも! あれは私も気になりました。読んでみたいです。
じゃがいもが恐怖の源とは、キングもびっくりだったでしょうね。(笑)
あと、ブローティガンも気に入ってるのに、「アメリカの鱒釣り」は未読なんです。これも早めに読みたいな、と。

そもそも、私が読んでる柴田訳作品って、ポール・オースターの「幽霊たち」と「ムーンパレス」、
(チキンポッドパイが品切れで悲しかったというアレです)
あと、シナモン嫌いの柴田さんでもシナモンロールが食べたくなるという、レベッカ・ブラウンの「体の贈り物」、
あとはシミック少しと、エドワード ゴーリーの絵本… もっと色々と読んでみたいです~!
まずは、つなさんオススメの「ミスター・ヴァーティゴ」からいってみようかな♪

「農場の少年」は、砂糖楓の木の樹液をとってメープルシロップを作るところとか大好きで!
あとドーナッツとかベイクドビーンズとか、食べたくなるものがいっぱいでした。
ローラの家は、幸せそうだけどいつも生活がギリギリで、実は読んでてちょっとツラかったんです。
アルマンゾの家はも少し落ち着いていて余裕がある分、安心して読めました。(笑)

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