「ミスター・ヴァーティゴ」ポール・オースター

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1927年、セントルイスの街で小銭をせびって暮らす悪ガキだった9歳のウォルトは、イェフーディ師匠に誘われて、愛情の全くない伯父夫婦の家を出て、一緒にカンザス行きの汽車に乗ることに。イェフーディ師匠はウォルトには空を飛ぶための天賦の才があるといい、13歳までに必ず飛べるようにしてやると約束したのです。連れて行かれた家にいたのは、歯が2、3本しかない太ったインディアン女のマザー・スーと、体中の骨ががねじれて歪んでいる15歳のせむしの黒人少年・イソップ。なかなか新しい生活を受け入れることのできないウォルトですが、やがて空が飛べるようになるための33の階段を、少しずつ上り始めることに。

日常&読んだ本log のつなさんにオススメ頂いた本。(記事) 私にとってのポール・オースターのデフォルト作品が最初に読んだ「幽霊たち」のせいか、それ以来オースター作品を読む前は妙に緊張してしまうんですけど、これはすごく読みやすくて面白かったです~。今まで読んだ作品みたいなクールな大人視点じゃなくて少年視点で書かれてるし、普通の人間が空を飛ぶなんてファンタジーのようなことが大真面目に書かれてるので、今まで読んだポール・オースター作品とはちょっと違う雰囲気だなあってびっくりしたんですけど、どちらかといえば「ムーン・パレス」系の作品なんですね。
人種差別やKKK団、禁酒法やギャング、大恐慌などの背景をさりげなく絡めて1920年代の雰囲気を出しているところも良かったし、詳細な修行の様子を見ていると、本当に人間は空を飛べるのかも?なんて気になってしまいそう。でも実際に空を飛べるようになって、巡業が成功して名前が知られるようになっても、ウォルトにとってそれはゴールではなかったんですね。ウォルトの人生は飛翔と落下の連続。そして飛翔と落下の連続の人生を歩んでいるのは、ウォルトだけじゃなくて、イェフーディ師匠もマザー・スーも、イソップもなんですよね。こんなことってあり...?(絶句) って感じの展開もあるし、結構キツい部分もあるんですけど、激動の時代の中で何度も人生の岐路に立たされて、再度の方向転換を強いられながらも、最後まで「生き抜いた」ウォルトの人生は、最終的にはどこか爽やか。波乱万丈でありながら、68年にもわたって描いているせいか、どこかゆったりとした印象もあって、まるで古き良きハリウッド映画を見てたみたいな感じ。
こういう作品ばかりだったら、オースターも読みやすいんだけど... でもやっぱりデフォルトが「幽霊たち」のせいか、それでいいのか?と心配になってしまったりもするんですよね。(「ムーンパレス」を読んだ時も似たようなことを思った覚えが...) やっぱりもっと色々読んでみなくてはー。次は「偶然の音楽」かな。
あ、ちなみに終盤でダニエル・クィンなんて人物が登場しました。実は「シティ・オブ・グラス」に繋がっているんですね~。 (新潮文庫)


+既読のポール・オースター作品の感想+
「ムーン・パレス」ポール・オースター
「ミスター・ヴァーティゴ」ポール・オースター
Livreに「シティ・オヴ・グラス」「幽霊たち」の感想があります)

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ポール オースター, Paul Auster, 柴田 元幸 「ミスター・ヴァーティゴ 」 これはですねー、超楽しい読書でした。 内容はウォルト... » Lire la suite

著:ポール オースター 訳:柴田 元幸 出版社:新潮社 定価:740円(税込み » Lire la suite

Commentaires(4)

こんばんはー。
記事中リンク、ありがとうございます。
ねえ、これ、楽しいですよねー♪
キツイ描写も出来事も沢山あるんだけど、全体を通して後味は四季さんも書かれてるけれど、むしろ爽やか。
うんうん、「古き良きハリウッド映画」ってぴったり!
すっごい映像的でもありましたものね。
「空を飛ぶ」なんてのも、いや、もしかしたら、ほんとに出来ちゃうのかも!、と思えるほどに具体的というかリアルでしたし。

そして、そっか、「ムーンパレス」もこの系統なんですねえ。
いやー、ほんと、ポール・オースターは、どのポール・オースターが一番「らしい」んでしょうか…。笑
四季さんは次は「偶然の音楽」ですね。
私も追いつけるよう、がんばりまーす。笑

つなさん、こんにちは~。
素敵な本を教えてくださってありがとうございました!
いやあ、ほんと楽しかったです。
ねね、古き良き時代のハリウッド映画っぽいですよね。
その頃のハリウッド映画って、大好きなんです♪
空を飛ぶ修行についても、大真面目に書かれていたのが良かったですよね。
実際には、なんでそれが飛ぶことと関係するのよーって感じでしたけど(笑)
あそこまできっちり書いてくれると、逆に爽快だなあって思いましたよ。

「ムーン・パレス」は、安心して読めるから大丈夫ですよん♪
私はそうですね、次は「偶然の音楽」。そして「幽霊たち」を再読。
この調子だと、来年の話になっちゃいそうですが。(^^ゞ
「幽霊たち」は、「シティ・オブ・グラス」と「鍵のかかった部屋」と合わせて
ニューヨーク三部作なんです。
その時は改めてこの三部作にとりかかってみたいです。

四季さん☆こんばんは
「空を飛べるようになる」という所がラストかと思ったらとんでもない!
どんなことがあっても、諦めずに立ち向かっていけばなんとかなるさって感じが楽しかったです。
わたしはまだオースターは2冊目なのですが、四季さんの後を追っかけて読んでみたいと思っています。

Rokoさん、こんにちは~。
ほんとほんと、普通なら空が飛べるようになるところまでですよね。
でもそれが単に1つの通過点でしかなくて、びっくりしました。
おとぎ話だと、王子さまとお姫さまが「それからいつまでも幸せに暮らしました」で終わっちゃうけど
その後の夫婦喧嘩とか嫁姑の確執とか、倦怠期やその後の危機まで書いてあるって感じでしょうか?(笑)
面白かったですよね。
私もまだオースターは4冊しか読んでないので、これからぼちぼちと読んでいきたいです。

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