たらいまわし企画・第39回「夢見る機械たち」

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tarahon37.gifちょっと出遅れましたが、たら本に参加します。今回のたらいまわしの主催は、奇妙な世界の片隅でのkazuouさんです。お題は、「夢見る機械たち」。

昔から人間は「道具」や「機械」を使って、生身の体では不可能なことを可能にしてきました。日常生活しかり、移動手段しかり。そして物語の中においては、それらは夢や空想を実現する手段としても使われてきたのです。
今回は『夢見る機械たち』と題して、そんな不思議な「道具」や「機械」を扱った作品を集めてみたいと思います。主要なテーマになっているものでも、印象に残った小道具でもかまいません。漫画やノンフィクションも含めて、いろんな作品を挙げていただきたいです。

「夢見る機械たち」だなんて、とっても素敵なお題です。でも難しい...。特にSFやファンタジーにこだわる必要はないとのことだったんですが、やっぱり道具とくるとSFというイメージが強いですしね。SFあんまり得意じゃないしなあ、うーん、どうしよう、と思ったところに、既にいっぱい作品が挙がっていて、指をくわえて見ているうちに、さらにどんどん沢山の作品が挙がってしまって、ますます難しくなってしまいました。やっぱりたら本は、早目に参加した方が楽ですね。(苦笑)
でも、なんとか思い浮かびましたよー。良かった良かった。

この企画に興味をもたれた方は、左上の「たら本」アイコンをクリック! 初めての方も大歓迎。どうぞお気軽に参加なさって下さいね。

 
ということで、「夢見る機械たち」です。
 

まずは、武藤武彦さんの「ムットーニ・カフェ」、そして桑原弘明さんと巖谷國士さんの「スコープ少年の不思議な旅」。どちらも小説ではなくて、写真が満載の、見て楽しむタイプの本です。そしてどちらかといえば、「機械」というより「道具」。

「ムットーニ・カフェ」の武藤政彦さんは自動人形とカラクリお話玉手箱の作り手で、「ムットーニ・カフェ」はその作品集。書影にはありませんが、この本の帯には「24 個の機械仕掛けの夢」とあります。今回のお題にぴったりじゃありませんか~。様々な人形が演じる芝居が美しい写真となって収められています。
このムットーニのからくり劇場は、東京の世田谷文学館で実際に見ることができるんです。という私も以前一度行きました。素敵でした! その時は常設の「猫町」(萩原朔太郎)、「月世界探険記」(海野十三)、「山月記」(中島敦)の3作を見たんですが、今年は世田谷文学館10周年の企画展として、従来の3作に4作を追加した「ムットーニのからくり書物」というのをしてたみたい。その時のポスターはこちら。いやん、前見た3作もまた見たくなっちゃうし、新たな4作も見たかったなあ。...あ、調べてたら、ムットーニのオフィシャルHPというのもありました。こちら
もちろん現物を見るのが一番なんですけど... 現物には音も動きもありますしね。でもなかなかそうもいかない人にとっては、この本の写真でもかなり楽しめるはず。素敵な人形とカラクリ箱、そして光と影の織りなす夢と幻想の世界です。

もう1冊の「スコープ少年の不思議な旅」は、桑原弘明さんが作られた手作りの極小のスコープと、その中に見える情景に、巖谷國士さんが文章をつけた本。堅固な合金で作られたスコープは、手に乗せるとずっしりと重くて、箱の側面の小さな円い穴に懐中電灯の光を当てながら覗くと、小さな部屋や庭の情景が見えてくるのだそう。手のひらサイズの箱の中に存在する世界だから、相当小さいはずなんですけど、これがものすごく精巧なんですよね。本の写真を見てると、本当に覗き窓から覗いているみたい。しかも光を入れる窓を変えることによって、その情景は白昼夢のようになったり、夕暮れ時になったり、朝の光景から一転して神秘的な夜の情景となったりするんですよ! 日常生活から一気に別世界へと引きずり込まれてしまいます。
以前開かれた個展のサイトのページがまだ生きてたみたいなので、興味のある方はこちらをどうぞ~。


 

次は、お話の中に出てくる機械で、とても気になっているもの。それは、フィンランドの国民的叙事詩「カレワラ」に登場する「サンポ」です。
この「カレワラ」に登場する賢者・ワイナモイネンが、魔女ロウヒの美しい娘と結婚したいと思った時、魔女が条件の1つとして出したのが、サンポという道具を持ってくることでした。ワイナモイネンは鍛冶屋のイルマリネンに言ってこのサンポを作ってもらうんですけど、これがすごく多機能な機械なんです。本文には「一方に製粉機があり、他方に製塩機があり、三つ目に貨幣鋳造機が」とあります。食べるために粉をひき、売るために塩を作り、家の貯蓄のためにお金を作る... もしや貨幣偽造機?!(笑)
でもこの3つの機能のサンポは、「カレワラ」を編集したリョンロットという人の解釈にすぎなくて、実は色んな説があるみたい。粉と塩とお金じゃなくて、世界を支える柱(もしくは木)だったり、コンパスやアストロラーベという古代の天体観測機だったり、宝物の入ったチェストだったり、コンスタンチノープルからバイキングによって盗まれた巨額の金だったり。(Wikipediaより) そもそもどんな形をしていたのかも、イマイチよく分からないんですよねえ。特別腕のいい鍛冶屋が作ったんだから、石臼が3つ括りつけられてるだけってわけでもないでしょうし... 

この「カレワラ」ですが、私は大好きなんですけど、神話にも叙事詩にも興味のない人が読むには、あまり読みやすい作品とは言えなさそう。読むなら子供用に再話されたものより、いっそのこと岩波文庫版がいいと思うんですけど、上下巻2冊組だから長いですしね。フィンランドの音楽家・シベリウスが「カレワラ」をモチーフに色々な曲を作曲してるので、そちらから入る方という手もあるんですが♪ (これも素敵です~)
それでもちょっと興味が出てきたなー、なんて思って下さった奇特な貴方には、「カレワラ」を元にした絵本なんていかがでしょう? ということで、バーバラ・クーニーの絵本「北の魔女ロウヒ」を。本家の「カレワラ」では邪悪な魔女とされてるロウヒなんですが、私は個人的にそんなに悪いイメージを持ってなかったので、こちらの絵本のちょっぴり抜けてるお茶目なロウヒが大好き。その気になれば鳥になって空を飛んだり、魚になって水の中を泳いだりもできるのに、雪が降ってるのを見て、いそいそとスキーを用意しちゃったりするんですよー。可愛いでしょう? ただ、こちらには肝心のサンポが出てこなかったような気がします...。ワイナモイネンが作ったカンテレというフィンランドの楽器は出てくるんですけどね。(ダメじゃん)

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Commentaires(10)

四季さん、こんにちは。
ムットーニのからくり劇場!!私も何気に興味があるんですが!わ!
今年の夏休みに世田谷文学館に行けば、ムットーニのからくり書物の特集展示が見られたんですね(号泣)。
去年は行ったのにー(涙)。去年行った時は、やってなかったのにー(号泣)。
世田谷文学館で確認したら、来年三月まで上演が見られるとか。
忘れずに、見に行きたいです。

そして四季さんのご紹介されている本の、魅力的なこと。
『スコープ少年の不思議な旅』はぜひプレゼントしていただきたい本かも。
こう四季さんにご紹介されると、
難しそうな『カレワラ』が読みたくてたまらなくなってきます(笑)。
もっちろん、児童向けの本で!(笑)
『北の魔女ロウヒ』と一緒に、探してみます。

トラックバックありがとうございます。

「ムットーニ」に「カレワラ」が入っていたりと、四季さんらしい、ユニークなセレクションですね!
『スコープ少年の不思議な旅』、これは僕も大好きな作品です。ほんとうにひとつの世界がすっぽり入っている、というか「フェッセンデンの宇宙」をそのまま作品化したみたいな作品で、この手のものが好きな人にはたまらない魅力がありますね。
ムットーニの現物は、僕もいちど見て見たいと思っているのですが、まだ果たせてません。羨ましいです。

四季さんこんばんは~。
「スコープ少年の不思議な旅」、amazonに飛んでみたら、「この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています」欄に「アリスの不思議なお店」が現れました。笑
「ムットーニ・カフェ」もまた、面白そうですね。
両方とも探してみまーす。

「カレワラ」…、名前を聞いたことはあったけれど、読んだ方がいらっしゃるのだとは!笑
四季さんって、叙事詩もイケる口でうらやましいです。笑
私は紹介されている絵本の方がよさそうです。

(すみません、トラバ間違えて2つつけちゃいました~。余計な方は削除お願いします)

>七生子さん
わあ、七生子さんもムットーニに興味を持ってらしたとは~。
ふふふ、なんだかいきなり胸を張りたくなっちゃいます。嬉しいなあ。
世田谷文学館、3月まで見れるんですか。それは良かった!
私の分まで見てきて下さいませ~。
そして見に行かれた時は、ぜひぜひブログに記事をアップして下さいね。^^

わあー、魅力的だなんてありがとうございます♪
「スコープ少年の不思議な旅」は、ほんとプレゼントしてもらいたくなるような本ですよ。
それはムットーニもなんですけど。(笑)
あ、「カレワラ」は、別に難しくはないんですよー。
難しいというより、叙事詩系が好きでないと退屈しそうな気がかなり…
そういう意味では、やっぱり再話されたものの方がいいのかもしれませんね。
「北の魔女ロウヒ」は絵も可愛いので、ぜひぜひ~♪

>kazuouさん
主催、お疲れさまです!
kazuouさんは、さすがどれもご存知なんですね。^^
ええと、ユニークというかバラバラというか、何ていうか… な選択なんですが。(^^ゞ
そうそう、「フェッセンデンの宇宙」をそのまま作品化したみたいな、という言葉がぴったり。
やっぱり私はそういうのが好きなんだな、と今改めて実感しました!
SF作品も、その辺りをとっかかりにして読んでいけばいいんですね、きっと。
オススメの作品などありましたら、また教えてくださいね~。

ムットーニの現物は、いつかぜひぜひ。心を奪われますよん。^^

>つなさん
そうそう、「アリスの不思議なお店」に繋がる世界なんですよ~。
多分、「過去カラ来タ未来」にも。
だからつなさんも、きっと気に入られると思います。ぜひぜひ探してみてくださいませ♪

叙事詩、大好きです~。子供の頃からの筋金入りの叙事詩好きなんです、私。
元々はアーサー王伝説から入ったので、もう騎士道とか吟遊詩人と聞くだけでソソられる体質に…(笑)
「カレワラ」には騎士道はないし、また全然雰囲気が違うんですけど、こういうのも面白いです。
そもそも、こういう話を竪琴で奏でて歌ってたんだなあというだけで、もう堪りません~。(笑)

トラバ、大丈夫です! ありがとうございます。^^

こんばんは~!

自動人形と覗きカラクリというと、エドガー・アラン・ポー(メールツェルの将棋差し)と江戸川乱歩(押絵と旅する男)の世界を思いました。
とくに乱歩は、ふたつの世界戦争にはさまれた時期に代表作を生んだ人。
アナログSFという言葉があるそうですが、カラクリ=夢見る機械は、まさにそれですね。
乱歩はその時代の体現者と思われます。チャペックやカフカと同時代。

「覗く」というのは、小説のナレーションとすごく関わってるらしくて、
ポーは小説のナラティブ(語り口、語り手)を革新しようとした人です。
その現場にいないのに、事件について知り語ることができる、純粋に客観的な三人称の視点。
それが可能かどうか。

乱歩は、屋根裏の散歩者とか人間椅子とか、
その場にいない(はずな)のに、その状況を知りえることに固執しました。
これが「探偵」の正体です。
客観的視点としての、覗き。

ところが、二十世紀、映画のカメラが、これを実現してしまうんですw
その場にいるのに、その場にいないことになってる「目」。カメラ。
小説が目指していた完全な語り手の実現。

でも、それでも、写らないものがある。
それは、心。
内面の思いは、映らない。

ところがですね、ここで自動人形=ロボットなるものが登場します。
まさに、心を持つのか持たないのか、不明瞭な存在。
それを主人公にする。

例えば、アトムというロボットは、悩みまくるんですw
内面しかないロボット。
実際にはまったくありえませんが。
原子炉を内部動力にしているという設定が象徴的です。
彼は、内部>外部の極端な例。

「覗く」という行為は、覗きこんだ閉所が、
じつはこの世界よりはるかに開かれた無限の世界=可能性であることを、「見る」ってことなのかもしれません。

>overQさん
うわあ、overQさんの書き込みを拝見していると
このムットーニとスコープ少年の本出したのは自分ながらも
なんだか出るべくして出てきた本のような気がしてきてしまいますね。
この記事を書く時、他の人と本が重ならないかどうかチェックしたぐらいで
記事の内容まではあまり読んでなかったんですが
ここまで見事に「部分>全体」の話と繋がってしまうとは~。

3人称の視点って、ポーが始めたことだったんですか!
それは知りませんでした。
ポーは史上初の推理小説を書いたというだけじゃなかったんですね。
(私自身は、本当の世界初の推理小説は「オイディプス王」だと思ってるんですが♪)
でも考えてみれば、推理小説というのは三人称が絶対に必要な作品ジャンルですものね。
一人称でも書けないことはないけど、それだとやれることがものすごく限られてきちゃう。
江戸川乱歩がこだわった客観的視点は、いわゆる「神の視点」ってヤツですね。
乱歩の中では、そこから探偵に繋がるのか…

映画のカメラについては、「語りの新しい手法」というお話で以前少しだけ出てましたよね。
そうか、映画のカメラこそが神の視点だったのか。いや、考えてみれば確かにそうですね。
その映画の手法がやがて小説に戻ってきて、きっと新しい動きを作り出したのでしょうね。
その辺りの小説技法的な変遷のことはあまり分かりませんが…

そして、アトムまでもが「部分>全体」だったとは。
でもほんと、原子炉が内部動力というのが確かに象徴的ですね。すごーい。そうなんだ。

今回のお題は「夢見る機械」なのに、私的にはすっかり「部分>全体」になってしまいました!
今まで読んだ本にもそういうのはいっぱいあるんですよね。
枠物語が最終的に枠からはみ出してしまったファンタジーというのも。
改めて考えてみるいい機会かも。

>ムットーニ
確か去年?世田谷文学館でムットーニ展をやっていたような。
その時は見逃したのですが、
今年の夏に『美内すずえと「ガラスの仮面」展』を見に
世田谷文学館に行ったら、『美内・・・』とは別の小さな部屋で
数点のムットーニ作品が展示されていました。
9月頃には松屋銀座店で比較的大規模な『ムットーニ展』を
やっていまして、これも見に行ったのです。
そのムットーニのからくり人形、
私はもっとイロイロな動きをするのかと思っていたのですが、
(例えば日本のからくり人形の『お茶運び坊主』みたいに)
思いの外動きが少なくて、ちょっとガッカリだったのです。
音楽やライトなど雰囲気はあったんですけどねー。

>菊花さん
世田谷文学館のムットーニ展は常設なんですよ。
毎日時間を決めて、上演されてるんです。
1日3回ずつかな?
で、今年は4作品が特別に追加されてたというわけです。

お茶運び坊主みたいなのを期待してたら、
それは確かにガッカリしてしまうかもしれないですね。
楽しめなかったようで、残念です。

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