「1/4のオレンジ5切れ」ジョアン・ハリス

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母が亡くなった時に兄のカシスが託されたのは、子供の頃を過ごしたレ・ラヴーズの農園。姉のレーヌ=クロードに託されたのは、地下庫に眠る一財産になりそうなワイン。そして末っ子のフランボワーズが受け継いだのは、母の料理のレシピや様々なメモが書かれた雑記帳1冊とペリゴール産トリュフが1個。母の死から30年、フランボワーズは生まれ故郷の農園をカシスから買い取り、フランソワーズ・シモンという名でそこに住み始めます。本名のフランボワーズ・ダルティジャンを出さなかったのは、この村ではダルティジャンという名が忌まわしいものとされているから。幸い村人たちは誰も現在65歳の女性がかつての女の子であることを思い出さず、じきにフランボワーズが開いたクレープ屋も順調に繁盛します。しかしフランボワーズの料理がある有名シェフの目に留まり、クレープ屋が雑誌で紹介されると、その生活の静けさを破る人間たちが現れて...。

「ショコラ」「ブラックベリー・ワイン」に続く、ジョアン・ハリスの3作目。前2作のようにランスクネ・スー・タンヌという小さな村が登場することはないのだけど、この3作は食にまつわる「食の三部作(フード・トリロジー)」なんだそうです。確かに美味しそうな料理が、これでもかというほどに登場! でも、ものすごーく美味しそうなんだけど、それが明るい光となってるかといえばそうではなく、逆にものすごーく不穏な空気が流れてました。「ショコラ」に登場するチョコレートなんて、あの甘い香りが人々の頑なさを蕩かすって感じだったのに。でも改めて考えてみれば、あの時も不穏な空気は十分漂っていたんだな... 今回ほどにはダークではなかったのだけど。今回特に不吉だったのは、芳しい香りを放つ瑞々しいオレンジ。
物語は、フランボワーズの現在の話と、9歳の少女だった1942年当時の回想によって進んでいきます。その頃に何かとてつもなく不愉快な出来事があったんだろうなというのはすぐに分かるのだけど、それが何なのかなかなか分からなくて、最初はじれったいです。でも母の遺した雑記帳を読み解くうちに、ベールがはがされるように徐々にその出来事が見えてきます。求めている愛情を得られないまま意固地になってしまった子供と、素直に愛情を示すことのできない母。子供ならではの残酷さと浅はかな知恵。そして隠し通さなければならない秘密。
いやあ、面白かった。やっぱりジョアン・ハリスはイイ! ちょっと的外れかもしれないんだけど、やっぱり「食べる」ということは、人間が生きるための基本なんだなあ、なんて思ったりもしました。「1/4のオレンジ5切れ」というこの題名の不安定さがまた、内容にとても合っていていいですねえ。(角川書店)


+既読のジョアン・ハリス作品の感想+
「ブラックベリー・ワイン」ジョアン・ハリス
「1/4のオレンジ5切れ」ジョアン・ハリス
Livreに「ショコラ」の感想があります)

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 ジョアン・ハリス『1/4のオレンジ5切れ』の感想をこちらに。『ショコラ』、『ブラックベリー・ワイン』と姉妹編のような関係にあたる本書、前2作が好きな人間ならぜ... » Lire la suite

Commentaires(4)

こんにちは♪
四季さんも読まれたんですね~~。あの村は登場しませんでしたが、「食の三部作」のトリにふさわしい、瑞々しくって涎モノで不穏な作品でしたね(笑)。

ちょろいもさん、こんにちは~。
読みましたよ! そうそう「瑞々しくって涎モノで不穏な作品」でしたね。良かったです♪

ところで「ショコラ」の続編が出てるらしいですね。
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早く訳が出ないかな~。でも「食の三部作」も完結して、こちらはもう涎モノではないのかな…?(笑)

うわー、その情報は知りませんでした!
ぜひぜひ、早くの邦訳が待たれますね。
けど、涎モノじゃないジョアン・ハリスなんて(笑)。

「食の三部作」って、誰が言い出したのかは知りませんが
(やっぱり販売促進のためのククリなんでしょうねえ)
ジョアン・ハリスの持ち味は、そうそう変わらないような気もしてきました。
そのうちレシピ本も出たりしてぇ。…と思ったら、ほんとに洋書で出てましたよ!(驚)
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これは、「The French Kitchen」という作品のレシピ本なのかな…?
だとしたら、他の作品も「涎モノ」決定ですね。(爆)

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