「須賀敦子全集7」須賀敦子

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須賀敦子さんの全集の文庫版第7巻は、須賀さんがローマ留学時代に1人で企画から執筆、原稿の邦訳などをこなし、コルシア書店で出版して、日本に発送していたという全15号の冊子「どんぐりのたわごと」と、夫・ペッピーノの死から4年、翻訳の仕事をしながらミラノに住み続けた須賀さんの、ミラノを去ることになるまでの日記。

こちらも6巻に引き続き、ちょっととっつきにくい面がある1冊、かな。論文のような難しさこそないんですが、「どんぐりのたわごと」は、かなりキリスト教色の強い読み物ですしね。私にとってはキリスト教色云々よりも、この6巻は全体を通してひらがな率が妙に高くて、それがちょっと読みにくかったんですが...。でも、印象に残る文章が色々とありました。特に印象に残ったのは、「どんぐりのたわごと」の第3号に載っていたダヴィデ・マリア・トゥロルド神父の詩。彼はコルシア書店の中心的存在で、以前須賀さんの「コルシア書店の仲間たち」(感想)を読んだ時にもかなり前面に描かれてた人物です。2m近い大男で、人間自体もとても大きくて、その分懐はとても深いけれど、カトリック特有のこまごまとした様式的なものにはちょっと合わないんじゃ...? という印象だった人。もちろん繊細なところも持っているのは分かっていたのだけど、その彼がこんな詩を書いていたとは...。この詩を読んでるかどうかで、彼に対する理解は相当違ってくるのでは、なんて思ってしまうほど、ちょっと衝撃的でした。
そして第7号には、後に酒井駒子さんが挿絵をつけて絵本にした「こうちゃん」(感想)の原文が載ってます。酒井駒子さんの絵はとても素敵だったし、これを読んでいると改めてあの絵本を読み返したいなあと思ってしまったのだけど、今回、絵を抜きに字だけを読んでみて、すごく自分の中に入ってきたような気がしました。
あと、私が一番好きだったのは、第8号に収められているジャン・ジオノによる「希望をうえて幸福をそだてた男」の話。須賀さんがイタリア人の友人に宮沢賢治の話をしたのがきっかけで教えてもらったという物語なんですが、これはとても素敵でした~。「こうちゃん」やこの「希望をうえて幸福をそだてた男」は、キリスト教色もあまり強くないので、比較的とっつきやすいかも。
そして後半は、須賀さんの日記。後に書かれたエッセイとは違って、こういったプライベートな日記には、人の私生活を勝手に覗き込むような居心地の悪さを感じるんですが... 須賀さんが夫のいないミラノでの生活に限界を感じていたこと、それでも続いていく慌しい人間関係に、充実しながらも疲れていたことなどが感じられるようで、とても興味深いです。(河出文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「須賀敦子全集1」須賀敦子
「須賀敦子全集2」須賀敦子
「須賀敦子全集3」須賀敦子
「須賀敦子全集4」須賀敦子
「須賀敦子全集5」須賀敦子
「須賀敦子全集6」須賀敦子
「須賀敦子全集7」須賀敦子
「須賀敦子全集8」須賀敦子

+既読の須賀敦子作品の感想+
「トリエステの坂道」須賀敦子
「本に読まれて」須賀敦子
「ヴェネツィアの宿」「コルシア書店の仲間たち」須賀敦子
「こうちゃん」須賀敦子・酒井駒子

+既読の須賀敦子翻訳作品の感想+
「インド夜想曲」アントニオ・タブッキ
「なぜ古典を読むのか」イタロ・カルヴィーノ
「ある家族の会話」ナタリア・ギンズブルグ

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Commentaires(2)

四季さん、こんにちは^^
ああ、いいなあいいなあああ。
僕は「コルシア書店の仲間たち」「ミラノ 霧の風景」しか読んでいないのですが、全集も是非読みたいと思っています。
でも楽しめると分かっているものってなぜかなかなか手をつけられないのです。
美味しいものは一番あとに食べるタイプです^^
イタリア人というと陽気で深く考え込まないイメージがあったのですが(←偏見)コルシアを読んで、イタリア人の言動を読んでしみじみさせられるとは思いませんでした。
それにしても須賀敦子さんの自然に抑制された文章って美しいなあって思います。文章そのものの魅力もさることながら、イタリア人のインテリ達との交流を鼻にかけることなく、あれだけ素直なてらいのない文章で書ける、本物のインテリの強さを垣間見た気がしました。

kyokyomさん、こんにちは~。
へへへ、いいでしょう、いいでしょう。全集、買ってますか~?(笑)
この全集は須賀さんの魅力もさることながら、表紙もとても素敵なので、手に取るのが楽しいです。
でもね、こうやって後半の巻を読んでると、全部読むっていうのもどうなんだろう?って思ったりもします。
前半の巻に収められているような、発表済みのエッセイや論文ならともかく、
発表する前提で書かれたのではない日記や、推敲されきっていない未発表稿なんかも入ってるじゃないですか。
読めるのは嬉しいんですが、反面ものすごく後ろめたい気分になってしまったりもするんですよね…

うんうん、陽気で深く考え込まないイメージは、確かにありますよね。(笑)
あの本を読んで、イタリア(特に北イタリア)のイメージが変わった人は多いかも~。(笑)

須賀さんの文章は、本当に美しいですね。
日本語としての美しさもさることながら、確かな知識と深い洞察力に裏打ちされた深みがあって。
やっぱり文章って、その人間の人間性が良くも悪くも現れてしまうものですねー。
私もいつかこんな文章が書けるようになればいいのだけど…
毎日こんなふわふわとしてる限り、いつまで経ってもどうにもならないでしょうね。(^^ゞ

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