「赤き死の訪れ」ポール・ドハティ

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1377年12月。ロンドン塔の城守・ラルフ・ホイットン卿が何者かによって殺害されます。4日前にホイットン卿の手元に警告の手紙が届いており、すっかり怯えたホイットン卿は安全だと思われた北稜堡の塔に移って、信頼のおける2人の従者に階段を見張らせ、階段と廊下の間のドアにも居室のドアにも鍵をかけていたというのに、ベッドの中で喉を掻き切られて死んでいたのです。ドアの鍵は閉まっていたものの、部屋の鎧戸がいっぱいに開いていたことから、当初、犯人は塔を外から上って侵入したと考えられ、それほど難事件とは思われないのですが、国王勅任のシティの検死官・ジョン・クランストン卿とその書記・アセルスタイン修道士が犯人を捜す中、同じように警告の手紙を受け取った人々が続けて殺されていくことに。

これは中世のイギリスを舞台にした歴史ミステリのシリーズの2作目。本当は「毒杯の囀り」というのが第1作なんですが、これが入手できなくて先にこちらを読んでしまうことに...。フィデルマのシリーズが順番通りに訳されてないとか文句を言ってる割に、せっかく順番通りに訳された作品をこんな風に逆に読んでたら仕方ないですね。いや、本当は順番通りに読みたかったのはヤマヤマなのですが!(嗚呼)
1377年といえば、リチャード2世が10歳で即位した年で、叔父のケンブリッジ伯エドマンド・オブ・ラングリーが摂政として立ち、ランカスター公ジョン・オブ・ゴーントの発言権が強かった頃。4年後にワット・タイラーの乱が起きるし、名実共に暗黒時代ですね。...と書きつつ、全然詳しくない付け焼刃の私です。(勉強しなくちゃー)

ミステリとしては王道の密室殺人。6インチ角の正方形の羊皮紙の真ん中には三本マストの船の絵、四隅に黒い十字架が描かれ、胡麻のシードケーキと一緒に送られてくるという警告の手紙も謎めいていて、結構好み。これが実は15年前の事件を発端にしていることが分かって、事件は徐々に複雑になっていきます。そして舞台となるのは、そうでなくても禍々しいイメージのあるロンドン塔! リチャード2世自身、後にここに幽閉されることになりますしね。今回は探偵役の2人にあんまり親しみを感じるところまでいかなかったんですけど、これで2人に愛着が湧いてくれば、もっと面白くなるんだろうなあ。ということは、やっぱり1作目を読まなくちゃダメですねえ。(創元推理文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「毒杯の囀り」ポール・ドハティ
「赤き死の訪れ」ポール・ドハティ
「神の家の災い」ポール・ドハティ

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Commentaires(2)

こんにちは。
『毒杯の囀り』も結構面白かったですよ。
ただ,当時のロンドンの不浄な風景が克明に描かれているのに閉口しました。
カドフェルやフィデルマの清廉なイメージとは対照的なんですよね。
この2作とは違って俗社会を描いているからなのかもしれませんが。
当時の風俗を知るという意味では得難い作品だと思います。

14世紀英国の参考資料をひとつ。
佐藤賢一『英仏百年戦争』(集英社新書)です。
1337年から1453年までの通史としては十分な内容だと思います。
自らがこの時代を扱った小説を幾つか著わしているので,
史実と小説とを比較してみるのも面白いかもしれません。
個人的には聊か苦手な描写が多いのですが,
それでも西洋中世歴史小説ではこの人の小説が一番好きですね。
お勧めしておきます。

森山さん、こんにちは~。
当時のロンドンの不浄な風景が克明に… というと
たとえばパトリック・ジュースキントの「香水」みたいな感じかしら…
あれも相当「汚いパリ」の姿が浮かび上がっていましたが。
今回、こちらの作品では、寝室用の便器がそのうち臭うようになるだろう、
程度の描写しかありませんでしたよね。
でも、なんとなく想像はできるような~。
カドフェルやフィデルマの生活にも、不浄な部分は色々とあったはずなのに
そういうのを全然感じさせない分、好対照となっていますね。

佐藤賢一さん、歴史小説を沢山書いてらっしゃるのは知ってましたが
そういった解説的な本も書かれてるとは知りませんでした。
また探してみますね! ありがとうございます。^^

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