「東方綺譚」マルグリット・ユルスナール

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漢の大帝国の路から路へさすらいの旅を続けていた老画家汪佛(わんふお)とその弟子の玲は、ある時漢の皇帝の兵士たちに捕らえられ、王宮へと向かうことになるのですが... という「老絵師の行方」他、全9編の短編集。

これもナタリア・ギンズブルグ「ある家族の会話」(感想)と同様に、須賀敦子さんの本を読んで興味を持った本です。
どことなく東洋の香りが漂う短編集。実際に、漢時代の中国を舞台にした「老絵師の行方」や源氏物語を題材に取った「源氏の君の最後の恋」、インドを舞台にした「斬首されたカーリ女神」のように、誰が見ても「東方」だという場所を舞台にした話もあるんですが、バルカン半島もフランス人(ベルギー人?)のユルスナールにとっては「東方」だったのかな... 同じバルカン半島でも、トルコなら分かるんですけど、ギリシャや他の国の話も「東方」に入れられていたのが、ちょっとびっくりでした。でもギリシャはギリシャでも、遥か昔のギリシャ神話の物語に題材を取っていたり、チューリップというトルコ原産の花が重要なモチーフになってたりするせいか、一貫して感じるのはやっぱり「東方」の幻想的な異国情緒でした。民話などに題材を取ってる作品が多いので、独創性という意味ではそれほど発揮されていないのかもしれませんが、どれを読んでもとにかく美しい! 思わず息を呑むような美しい情景が広がります。その中でも特に好きだったのは、上にもあらすじをちらっと書いた「老絵師の行方」。小泉八雲の「果心居士」とかなり共通しているようだし、私自身何かの中国物の本でも読んだことがあるような話なんですが、そちらはそれほど美しくなかったですよぅ。いやあ、これはすごいな。これはユルスナールだけじゃなくて、訳者の多田智満子さんもすごいのだろうけど。
あと驚いたのは、「源氏の君の最後の恋」ですね。まさかこんなところで源氏物語を読むことになるとは...。「訳者として困ったのは、さすがのユルスナールの博識をもってしても日本の固有名詞や官職名にいささか不適切なものがあることで、読者の興をそがぬために、適当に修正したり省略したりしたところもあるが」と解題にあった通り、この作品を訳すには多田智満子さんも結構苦労されたようです。ユルスナール版の「雲隠」、とても興味深い1篇となっていました。私としてはちょっと受け入れがたいものがあったのだけど...。(白水uブックス)


+既読のマルグリット・ユルスナール作品の感想+
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