「天平冥所図会」山之口洋

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天平18年秋8月。備前国から平城京に庸調を納めに行く一行の中にいたのは、采女として後宮で仕えることになっている広虫と吉備真備の娘の由利。男ばかりの一行の中で2人はすぐに意気投合します。そして、京まであと3日というところで拾ったのは、行き倒れていた百世という少年。百世は母を亡くし、丹波笹山から大仏鋳造のタタラで働いている父を探しに来たのです。京に着いた2人は早速吉備真備に葛木連戸主を紹介され、百世の父親探しに乗り出すのですが... という「三笠山」他、全4編の連作短編集。

奈良時代、聖武天皇から称徳天皇までの時代を舞台に、4編でそれぞれ東大寺の大仏建立、正倉院への宝物奉納、藤原仲麻呂(恵美押勝)の乱、そして道鏡の野心と宇佐八幡の神託が取り上げられていて、この時代の主な出来事を網羅してる連作。風待屋の sa-ki さんに教えて頂いた本です。sa-ki さんから芝田勝茂さんの「サラシナ」(感想)と時代的に結構重なってるとは聞いてたし、確かにそちらとも重なってたんですが、それ以上に高橋克彦さんの「風の陣」(感想)と重なっていてびっくり。「風の陣」は、「立志篇」「大望篇」「天命篇」の3巻を読んだんですが、それぞれ橘奈良麻呂、藤原仲麻呂(恵美押勝)、弓削道鏡を取り上げてるんです。スタートが微妙にズレてはいるけど、もうまるっきり同じ時代の話。でも雰囲気がまるっきり違っていて、それもびっくり~。「風の陣」は、陸奥出身の丸子嶋足という青年を主人公にした正統派の歴史小説なんですが、こちらは広虫と戸主という内裏で共働きをしてる夫婦を中心に据えていて、もっと明るいユーモアたっぷりの作品なんです。味付け程度とは言え、ファンタジーがかった柔らかさもありますし。どちらもそれぞれにそれぞれの作家さんらしさが出てて面白いんですが、同じ歴史的事実を描きながらも書き手によってこれほど違ってしまうとは、両極端~。(笑)
4編の中で一番面白かったのは、2編目の「正倉院」。こんな裏話があったなんて、正倉院の宝物を見る目が変わっちゃうな。あと面白かったのは、吉備真備の長女の設定。これにはびっくり! 言われてみれば、確かに同じ時代ですものねえ。でも、一体どこからこんなアイディアが浮かんだのやら。(笑)(文芸春秋)


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少し読書の方がペースダウンしておりました。 ちょっと裏でいろいろとこまごまやっていたもので。 その合間に読んでいたものたち。 狙っていたわけでは... » Lire la suite

Commentaires(6)

こんにちは。

『天平冥所図会』はよかったですよねー。
吉備真備の娘の設定も意外性があってよかったです。
物語にはそれほど関与しなかったのが残念でしたが。
どうせなら日本に辿りついて生を終えたという説をとってほしかったですね。
由利の為にも。

個人的には戸主の終盤での境遇が意外で面白かったです。
そのために序盤に幽霊話を続けたのかと納得。
あれがあるからこそ展開が自然に思えたのですよね。
構成の妙が素敵です。

残念なのは続きを望みえないということ。
大好きな作品には続編を期待してしまう性質なのですが,
流石にこの物語の続きはないでしょうねえ。
終りが近づくにつれてさびしい気持ちでいっぱいになってしまいました。

四季っち、こんばんは~。
奈良麻呂、仲麻呂、道鏡って、
ほんとだ、「風の陣」はまるまる重なってるんですね。
それは確かにびっくりしちゃう。
雰囲気ががらっと違うと、歴史的事実の見方まで変わりそう。
読み比べたら、作家さんのカラーの違いも楽しめそうですね。

なんとなく気になる存在なのは、
この本と「サラシナ」、両方に登場してた吉備由利。
陰陽道とかかわりの深い真備の娘だけあって、
ミステリアスな雰囲気を感じるんですよね~。
ほかに彼女が出てくる小説があったら読んでみたいなぁ。

>森山さん
やっぱり森山さんは読んでらっしゃいましたか♪
ほんと面白かったですね~。
そうそう、あの吉備真備の長女の設定、
確かに最後はそうして欲しかったです!!
日本に逃げて来た説があるからこそだったんでしょうけど
あんまり深みに入らずにさらっと逃げてしまった感じで
せっかくなのに、ちょっと勿体なかったかも。

戸主の境遇の変化も面白かったですね。
でもできれば最終話にして欲しかったという気持ちも実はあるんです。
「正倉院」での夫婦のがんばりが良かったので
もうちょっとあのまま見たかったというのもあって。
でもそこからぐんと山之口洋さんらしくなったので
あれはあれでよかったんだろうなと思いますが…
…って書いてるけど、この作品、
本当は「オルガニスト」辺りとは全然雰囲気が違いますよね!
何をもってして「山之口洋さんらしい」としてるのやら。(笑)

続編は期待できないけど、引き出しの多い方のようなので
また新たな面白い作品を楽しみにできそうですね。

>sa-kiっち
時代や人物的にはものすごく重なってるのに
雰囲気や人物の造形なんかは全然違うんですよー。
まるで別人!なーんて人も色々と。
そっちが読み返したくなってきちゃいました。(笑)
高橋克彦さんらしく、ずっしりとした時代物なので
そういう気分の時にぜひ。
で、この「風の陣」はまだ完結してないんですけど
その次世代の作品に「火怨」があって、これがものすごく良いので!
できればこちらも読んでみてくださいませ♪
(もう読まれてたらごめんなさい)

吉備由利は、確かに興味をソソる存在ですね。
実際には資料がとても少なくて、避けて通られがちだとか…
彼女の生まれの設定も、実は大胆ですよねえ。
うんうん、吉備由利の出てくる話はもっと読んでみたいです。
何かみつけたら、教えてくださいね。
私も探してみます~。

天平冥所図会、なかなか面白かったですね。
とはいえ、一般的にはちょっとマイナーな時代+人物だったような気がしますが。(笑)
かくいう私も、この辺の時代の記憶がだいぶ抜け落ちていて、そういえばこんな人もいたなあ・・・と思い出しながら読み進めていました。(苦笑)

戸主が早い段階でああなってしまったのが、実はかなり意外でした。タイトルから見れば、そうなることも当然とは思うのですが・・・。

こちらで挙げられている同時代の作品、未読なのでまた今後の読書の参考にさせていただきます♪

遼さん、こんいちは~。
天平冥所図会、面白かったです。
確かにマイナーではありますが…
マイナーという意味では、奈良時代はどこもマイナーですものね。(笑)
道鏡なんかが出る分、このポイントが一番知られてる方なのかな?
1つ前の飛鳥時代は天智・天武がいるし、1つ後の平安京は華やかだし
どうしたって分が悪いんですけど(笑)、この時代の話は貴重なので嬉しいです。
仲麻呂と奈良麻呂については、「風の陣」でみっちりと読んでいたので
それがとても役立ちました♪
戸主のあれは、ほんと早かったですね。
確かにタイトルはそうなんだけど… もうちょっと後でも良かったかも。
遼さんの感想も、拝見しにうかがわせていただきますね~♪

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