「英仏百年戦争」佐藤賢一

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英仏百年戦争とは、中世末の14世紀からイギリスとフランスの間で行われた戦争のこと。教科書的には、序盤は、黒太子エドワードの活躍でイギリスが圧倒的に優勢だったものの、ジャンヌ・ダルクが登場してからはフランスが勢いを盛り返して、最終的にはフランスの勝利に終わる戦争。でも平均的なイギリス人の認識では、英仏百年戦争はフランスの勝利ではなく、イギリスの勝利に終わっているのだそうです! その原因となっているのは、シェイクスピアの史劇。「ジョン王」「リチャード2世」「ヘンリー4世」「「ヘンリー5世」「ヘンリー6世」「エドワード3世」といった作品群はそのまま英仏百年戦争の時代に重なるものなんですが、イギリスでは小難しい歴史書なんかよりもシェイクスピアの方が余程読まれているだけあって、史劇としての演出が誤解を招いたようですね。でも「英仏百年戦争」と言う概念自体、シェイクスピアよりも遥か後世に生まれたもの。本当にこの戦争は英仏戦争だったのか、そして本当に百年戦争だったのか、根本から見直す本です。

先日、ポール・ドハティの「赤き死の訪れ」を読んだ時に、森山さんに教えて頂いた本です。イギリスの歴史小説が好きな割に全然知識が足りない私にとっては、ものすごーく勉強になる本でした! 佐藤賢一さんの小説もそのうち読んでみようかしら... いかにも私好みな題材を取り上げてる割に、どうも今ひとつソソられなくて読んでなかったんですが。(^^ゞ

一般的には1337年から1453年までとされている百年戦争なんですが、その前史として、古来ケルト民族の土地だったグレイト・ブリテン島に4世紀にはアングロ・サクソン人が移住した辺りから、1066年のウィリアム1世によるノルマン朝の成立までの経緯も説明してくれているので、ものすごく分かりやすいです。英国がなぜそれほどフランスにこだわったのかも、この本を読めばよーく分かります。そうそう、イギリス王家やイギリス貴族とはいえ、元々はフランス人なんですものね。イギリスなんて、海外植民地にすぎなかったんですものねー。そしてこの本を通して読んでみると、英仏百年戦争によって「イギリス」「フランス」という国ができたのだという作者の解釈もとても納得できるものでした。
作中に随時挿入されている地図もありがたいし、巻末の年表や家系図もとても便利。複雑怪奇な人物相関図もこれで一目瞭然。やっぱり長い目で見て書いてる本っていいですね。点と点が繋がって線になってきたものが、それぞれ繋がって面になっていく感覚。シェイクスピアの史劇も「ジョン王」(感想)ぐらいしか読んでないし、いずれちゃんと読まなくちゃいけないなあ。(集英社新書)

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Commentaires(4)

こんにちは、
ポール・ドハティー、お読みになりましたか。
このシリーズはぜひ1作目も読んでみてください、
アセルスタン修道士はいかにして修道士となりしか…にもふれられています。
ハヤカワからも別のシリーズの1作目『白薔薇と鎖』が訳されて出ているんですけど、続きがなかなか出ないです……(刊行予定はあるのかな)

『英仏百年戦争』はへたな教科書読むよりよほどわかりやすいです。
シェイクスピア史劇を読むよりも先にこれを読んでいたのでとても役に立ちました。
佐藤賢一さん、小説のテーマは歴史好きにはたまらないものがあります。
(最近のはあまり興味はないですが)
ただ、文章は個性的ですね。
こういう解説系(?)をもっと書いてくれるとうれしいなー、なんて思っています。

こんにちは。
お気に入られたようでなによりです。
百年戦争って名前だけ有名で実情って案外知られていないんですよね。
自分も知識に欠ける部分が多いのでこれから勉強していきたい時代です。
最近ではゲームの題材にもなっているようですが(苦笑)。
http://www.gamecity.ne.jp/products/products/ee/Rlblade.htm
遊びたいけれど機種を持っていないのが残念です。
買っちゃおうかなあ。
それにしても売れているのかどうかが疑問ではあります。

イギリス王家はフランス人とありますが,
現在のウィンザー家はもともとドイツの貴族です。
他国の貴族を王と掲げて忠誠を尽すイギリス人の精神性は面白いですね。
スコットランドとかウェールズの人はどう思っているのかなあ。

>nyuさん
調べてみたら「白薔薇と鎖」もロンドン塔の話なんですね!(笑)
時代的には、そちらの方が後なのかな?
スコットランドも出てくるとは、かなり興味をソソられます。
でもシリーズの1作目しか出てないとは残念。
「毒杯の囀り」も、いずれ読みます!
なかなか手元に回ってこないんですが、回ってきたらすぐに~。
(ファルコシリーズと同じく、人様からの借り物なので…(^^ゞ)

「英仏百年戦争」は、ほんと分かりやすいですね。
私もnyuさんみたいにシェイクスピアの史劇を読むべきだなとほんと思いましたよ。
でもって、先にこっちを読んでいてほんと良かったです。
でないと、イギリス国民と同じことに…
いや、教科書レベルの知識は残ってるから、妙な混乱状態に…(笑)
読む時は、書かれた順と時系列順、どちらがいいでしょう??

佐藤賢一さん、小説の方は未読なので何とも言えませんが
ほんともっと解説系の本も書いていただきたいですね。

>森山さん
ほんと、分かりやすくて勉強になりました!
いい本を教えて下さって、ありがとうございます。
私も「百年戦争」なんて言われても、ほんと名称ぐらいの知識でしたし…
この本を読むと、この時代のを舞台にした作品をもっと読みたくなってしまいますね。
でもでも、百年戦争がゲームになってるとは!
それはものすごーくマニアックなのでは…
登場人物も多いし、時代も長いから、結構すごいことになりそうですね。
あ、でもそれを言ったら、三国志のゲームだって相当マニアックなわけだし~。
ゲームをしながらお勉強もしてしまって、上手くすれば一石二鳥かもしれないですね。(笑)

ああー、ドイツといえばハノーヴァー朝。(ですよね?)
その辺りのこともほとんど知らないので、もうちょっと勉強しなくては~。
スコットランド女王メアリについても、ちょっと知りたいんですよねえ。
佐藤賢一さん、百年戦争の後のことも書いてくれないかしら…

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