「はじまりの記憶」柳田邦男・伊勢英子

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「風の又三郎」に描いている伊勢英子さんの絵が気に入って、相手がどこの誰なのかもまるで知らないまま、94年に毎日新聞に連載することになっていた「『死への医学』への日記」の挿絵を頼んだという柳田邦男さん。それ以来、伊勢さんは柳田さんの本の装幀や挿絵を手がけるようになったのだそうです。その柳田邦男さんと伊勢英子さんが、それぞれの心の原風景を探そうとするduoエッセイ。お題となっているのは、「かなしみ」「空」「ころぶ」「存在理由」「忘れる」「音楽」「マイウェイ」「眠る」「身体感覚」「笑う」「夢」「自立」。それぞれご自分のエッセイにご自分で挿絵を描いています。

以前伊勢英子さんの「グレイがまってるから」「気分はおすわりの日」を読んだ時に、日常&読んだ本log のつなさんに教えて頂いた本です。(記事
まず、プロローグでお2人の対談があるんですけど、ここで伊勢英子さんが仰ってる言葉が良かったなあ。

自分探しの旅というのは、いろいろなものを捨てて行くものではないんです。じつは「今」を意識することに戻り、そのたびに幼少期の原風景まで戻って行くみたいな旅です。捨てるのではなく何度でも拾いにいく。ただ五歳のとき感じたものを思い出すことはできても、今は五歳のときとは絶対違う歩き方でその同じ風景を感じたり見たりしている。そういう意味で、一見、五歳とか六歳の原風景にたどり着き、それを大事にするということは一見、後ろを向いているようでいて、本当はすごく前向きの姿勢なのではないかと思うんです。

これには全くの同感ですね。や、私は「自分探しの旅」=「いろいろなものを捨てて行く」とは考えたことがないのだけど...。だって現在のその人間があるのは、様々な過去の積み重ねである以上、捨てるなんてことはできない相談なわけですし。そうなると、自分の中の色々な引き出しの大元となった風景を探すという行動も、後ろ向きにはなりようがないわけで。というのは精神的な意味でですけど、物質的な意味でもね。そして同じ物に出会っても以前とは違う感じ方をするようになるのは全然不思議なことではない以上、「以前の自分」を知ることは、改めて一歩前に踏み出すのに大切なことじゃないかと。

お2人とも文章がとても読みやすくて、読んでるはしから胸の奥底にすとんと入ってくるようでした。伊勢英子さんの相変わらずの感受性の鋭さにはっとさせられるし。そして今回驚いたのは、柳田邦男さんの絵が想像していた以上に素敵だったこと。誠実な人柄を表しているかのような、静かなたたずまいを持つ花の絵の数々... いやあ、すごいな。さすが中学の頃に画家になりたいと思ったことがあるというだけのことはありますね。 (講談社)


+既読の伊勢英子作品の感想+
「ルリユールおじさん」「絵描き」いせひでこ
「旅する絵描き パリからの手紙」伊勢英子
「グレイがまってるから」「気分はおすわりの日」伊勢英子
「マキちゃんの絵にっき」「ぶう」伊勢英子
「カザルスへの旅」伊勢英子
「はじまりの記憶」柳田邦男・伊勢英子
「1000の風 1000のチェロ」「雲のてんらん会」いせひでこ
「空のひきだし」いせひでこ
「むぎわらぼうし」竹下文子・いせひでこ
「大きな木のような人」「ルリユールおじさん」いせひでこ
「にいさん」いせひでこ
「ざしき童子のはなし」「よだかの星」「風の又三郎」「水仙月の四日」宮沢賢治・伊勢英子

+既読の柳田邦男作品の感想+
「はじまりの記憶」柳田邦男・伊勢英子
「砂漠でみつけた一冊の絵本」柳田邦男

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大きな事故や人為的事件があると、思い出すのが柳田邦男さん。 多くの優れたノンフィクションを著されていることで著名な方。 基本的に人間はミスを犯すもので... » Lire la suite

Commentaires(2)

四季さん、こんばんは。
記事中のリンクありがとうございます。
でも、トラバもしちゃいました♪

伊勢さんの感受性には、やはりハッとさせられますよね。
時々鋭すぎて怖いぐらい。笑

この表紙、おっと文庫化されているのですね。
手元に置いておいて、時々はらはら捲ってみたい感じの本だから、文庫化は嬉しいですね~。
(という私は、例によって図書館で借りて、読んでます。笑 買おうかな)

つなさん、こんにちは!
トラバありがとうございます~。

ほんと、ハッとさせられますよね。
時々「芸術家ってヤツは…」なんて思いながら読んでました。(笑)
感受性が鋭いというのは、本当は素敵なことなんだけど
なんだか見ていて痛々しくなっちゃうこともありますね。
なーんて、感受性のカケラもない私に言われたくはないでしょうけど。(笑)

この本ね、私も本当は図書館で単行本を借りて読んだんです。
文庫になってるからそちらの画像を載せたんですけど、
どうやら品切れ再版未定状態のようです。(5年ほど前の本なの)
アマゾンの中古は、いつになく値段設定が高め…
あ、今気づいたら単行本の方が安いです!
単行本の方が、文字色も変えてて雰囲気が柔らかくていいかも~。
(どうやら文庫の文字色は全部一緒みたいです)

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