「絵描きの植田さん」いしいしんじ・植田真
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2年前、1匹の家ねずみ起こした事故のせいで耳がほとんど聞こえなくなり、恋人も失ってしまった絵描きの植田さんは3ヵ月後、画材一式とわずかな着替えを携えて、都会から遠く離れた高原の一軒家に引っ越すことに。
雪景色に包まれた、とても静かな物語。植田さんと高原の町の人たち、そしてイルマとメリ親娘の交流が、静かに描かれていきます。植田さんの日々は、鳥のさえずりも聞こえないとても静かなもの。私には、植田さんがそれほど心を閉ざしているようには思えなかったのだけど... それでも高原の小屋での孤独な生活を居心地良く感じているのは確か。「自分はずいぶん長く、この世の物音をきこうとしてこなかったのかもしれない。耳が悪くなっただけじゃない、みずから耳をふさぎ、かたく身をちぢめ、音を遠ざけていたんだ。それはまた、自分で音を出さずにいる、ということでもある。ちょうど冬の山奥でかたく凍りついた岩のように」という言葉がとても印象に残りました。
メリとオシダさんが一緒に植田さんの作品ファイルを見ている場面、窪地の「ばけもの」を見に行く場面、凍結した湖でのスケートの場面、火祭りの場面、それぞれの場面がとても印象的。火祭りの時に人々が山の神に向けて書いている祈りの言葉が、素朴で暖かくて素敵~。横領事件やイジメ問題が絶えない「向こう側」とは、まるで別天地みたい。
後半、植田さんの描いた絵が挿入されます。これは植田真さんが描いた絵。この植田真さんは、この物語の植田さんとはまた違いますよね...?(笑) 絵の雰囲気がとても物語の雰囲気に合っていて、絵を見ながらメリと同じ気持ちになれたような気がしたほど。植田さんの感情が久しぶりにほとばしり出たような絵の数々でした。(新潮文庫)
+既読のいしいしんじ作品の感想+
「トリツカレ男」いしいしんじ
「絵描きの植田さん」いしいしんじ・植田真
(Livreに 「ぶらんこ乗り」「麦ふみクーツェ」「プラネタリウムのふたご」の感想があります)
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小説なのに、文章で絵を描いてるような感じがしました。
余計なものがなくて静寂な雪景色のような植田さんの心のキャンバスに、
メリやオシダさんとの交流によって色が増えていき、
色鮮やかな春の景色が完成ってイメージ。
余白が奥行きを感じさせる植田真さんの絵も素敵ですね♪
これから冬が来るたびに読み返したくなりそうです。
ああー、ほんとですね。>文章で絵を描いてる
植田さんの心に色が増えるのと同時に
読んでる人の心にも色がどんどん増えていくから
やっぱり1人静かにゆったりと読むのが似合う本ですね。
sa-kiっちの年間ベストに選ばれたのも納得です。
1月に読むと、どうしても年末には印象が薄くなっちゃうから
ちょっと勿体なかったかしら…
でもほんと、今の季節に読むのにぴったりだったし!
素敵な本を教えて頂いて、ありがとうございました♪