「青いチューリップ」「青いチューリップ、永遠に」新藤悦子

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1542年。父のカワと一緒に羊を連れて山の上の草原に来ていた7歳のネフィが出会ったのは、バロという男。人に追われて3日3晩飲まず食わずで歩いてきたというバロは、食料と水をもらったお礼に、遥か西にあるオスマンの国の都イスタンブルの話を物語ります。それは、スルタン・スレイマンがぞっこん惚れ込んで1年前に正式な妃にしたフッレムが宮廷の新しいハレムの庭に青いチューリップを欲しがっているという話。そして何年も青いチューリップの研究をし続けているアーデム教授の話。青いチューリップは都では幻の花とされていました。しかし、カワやネフィの来るこの山では咲いているのです。突然行ってもスルタンには会ってもらえないと考えたカワとネフィは、青いチューリップの球根を持ってアーデム教授に会いに行くことに。

トルコに造詣の深い新藤悦子さん初の児童書という作品。読んでみると夢枕獏さんのシナン(感想)とかなり時代的に重なっててびっくり。背景は16世紀のスレイマン1世の時代。シナンはもう既に建築家頭となっていて、アヤソフィアを凌ぐモスクを建築させようとしていた頃の話です。まあ、この時代がトルコにとって黄金時代だから当たり前といえば当たり前なんでしょうけどねー。それにスレイマン1世もシナンも名前しか登場しないんですけどね。あ、でも、「青いチューリップ、永遠に」の方にはスレイマン妃のロクセラーヌが登場していました。(この作品ではフッレム妃という名前) そしてイブラヒム大宰相とのエピソードも。

その後のヨーロッパでのチューリップ狂時代を予感させるようなストーリーを下敷きに、都に出てきた羊飼いの少年・ネフィの成長や、絵師に憧れるアーデム教授の娘・ラーレの話などが展開。面白かったんだけど、描きたいことがちょっと多すぎたかも、という印象も...。これだけ詰め込んだにしてはよく整理されていると言えるんでしょうけど、もうちょっと絵のことに焦点絞っても良かった気もします。絵師頭の一番弟子・メフメットの葛藤とか、もっとじっくりと読みたかったし。でもこの辺りの話は本当に興味深いです。当時のトルコでは写実的な絵は基本的に禁止されていて、肖像画を描くこともできないし、花の絵を描くにもいちいち文様化しなくちゃいけないというのがあるんですが、見たままを描くのが好きなラーレは、それがどうしても納得できないんです。で、宮廷の絵師頭をしている祖父に尋ねるんですね。その時の答が「文様にだって生命(いのち)がある。目に映るものを、一度殺して、新たな生命を吹き込む、それが文様というものじゃ」という言葉。これがとっても印象的でした。
そして「青いチューリップ、永遠に」は、それから1年後の話。こちらの方が新藤悦子さんの肩からも力が抜けたのか、話の中心がはっきりしていて読みやすいです。波乱万丈という意味では少し控えめになってるし、1作で勝負という感じだった前作に比べて、良くも悪くもシリーズ物になっちゃってるんですけどね。中心となっているのは、相変わらず絵師に憧れているラーレと、印刷された本を初めて目にして、宝石のような本よりも、人々が手に取りやすい薬草帳を作りたいと考えたネフィが中心。ラーレは描いた絵が認められて、女絵師としてちやほやされるようになるんですが、そこで気づかされるのは、「生きている」ことと「生かされている」ことの違い。籠の中の鳥よりも空を飛ぶ鳥の方が、のびのびと歌うということ。いくら華やかで美しい世界だろうと、閉ざされた世界にいるよりも外の自由な空気の方が大切だということ。となると、ラーレを巡る青年たちの中では、型破りなネフィがいかにも魅力的に映るわけで...。ライバルのメフメットにももう少し見せ場を作ってあげて欲しいなー。(講談社)


+既読の新藤悦子作品の感想+
「空とぶじゅうたん」1・2 新藤悦子・こみねゆら
「青いチューリップ」「青いチューリップ、永遠に」新藤悦子
「エツコとハリメ」新藤悦子
「トルコ 風の旅」「イスタンブールの目」新藤悦子
「時をわたるキャラバン」新藤悦子
「羊飼いの口笛が聴こえる」新藤悦子
「チャドルの下から見たホメイニの国」新藤悦子

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新藤 悦子, 小松 良佳 「青いチューリップ (講談社文学の扉) 」 「青いチューリップ、永遠に (文学の扉) 」 またまた、「Ciel... » Lire la suite

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あ、もうどちらも読まれたんですね。
私はこれから取りかかろうと思ってたところです。
トルコってネタの宝庫ですね。
地理的に見て東西の文化が混ざりやすい場所ですが、
歴史的に見ても奥が深そうだし。
私の憧れの職業、羊飼いも出てくるんですね!
ますます楽しみ~♪

読みました~。
ほんと、この辺りはネタの宝庫ですよね。
東西の文化が出会うところというのもすごくソソられるし~。
去年は敢えてその西側の本をメインに読んできたので
今年は東側も読もうと思って! 色んな本と出会えそうで楽しみです。

あ、羊飼いに関してはほんと最初の数ページしかなかったんですが…
それにちょっと突っ込みどころはあるんですけどね。
でもでも、ぜひ楽しんでくださいね。^^

四季さん、こんばんは。
新藤さん、四季さんとこでとっても気になったので、読んでみました。
これ、読むつもりだったので、四季さんの記事を斜め読みしたまんま、
借りてきて読んだんですが、今四季さんの記事を読むと、そうそう~!
と思わず拳を振り上げそうに。笑
でもって、面白いんだけど、なんだか随所が惜しかったです。
メフメットにもっと見せ場を!、というのにも全く同感です。笑
続きもあるのなら、是非見せ場を作ってあげて欲しいところですが、
続きにはメフメット自体がいなくなっていたりして、と思わないでも
なかったり。彼、砂漠に旅する理由がないですもんね。笑

新藤さん、ノンフィクションだとどの辺が四季さんのお勧めでしょうか?
「物語」ではないものも、ちょっと読んでみたいなぁ、と思いました。

*記事中リンク&トラバいたしました。

つなさん、こんにちは~。
おお、読まれましたか。
そうなの、面白いんだけど、詰めがちょっと甘いでしょう?
もっと焦点を絞り込んで、
その上でメフメットがもっと魅力的に動き回ってくれれば
話ももっと締まったのではないかと思うんですよねえ。
確かに、続編ではメフメットの存在すら出てこないかも!(笑)
旅する理由もないし、そうでなくてもモスクの仕事で忙しそうですしねー。

新藤悦子さん、ノンフィクションでもどこか詰めの甘さを感じるんですが
今のところは「イスタンブールの目」が一番好きですね。
これは写真やイラストも楽しいですよ~。ほんと行きたくなります。
でもこれはイスタンブール案内の本なので
もっとノンフィクションらしい「エツコとハリメ」がいいかも?
こちらはカッパドキアの村に住んで絨毯を織る話です♪

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