「ライラとマジュヌーン」ニザーミー

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アラブのとある豊かな首長の家に生まれたのは、待望の男の子・カイス。美しく賢く成長したカイスは、名門の子弟が集まる学舎に送り出され、そこでも優秀な成績を収めます。そんなある日出会ったのは、新しくこの仲間に加わった優しく美しい乙女・ライラでした。ライラとカイスはすぐにお互いのことを愛するようになります。なるべく目立たないように心がける2人。しかし2人のことは次第に噂となり、そんなある日、恋の重荷に耐え切れなくなったカイスの心は崩れ去ってしまうのです。それ以来、カイスは「マジュヌーン(狂気)」と呼ばれることに。

これも昨日の「ホスローとシーリーン」同様、先日読んだ「ペルシアの四つの物語」(感想)に収められていた話。
アラビアを舞台にした悲恋物語。カイスというのは8世紀に実在していた人物なんだそうで、この物語はアラブ各地はもちろんのこと、トルコ、イラン、アフガニスタンなどに伝説や民謡、物語詩などの形で広まったんだそうです。読んでいてあれっと思ったのは、同じニザーミーの作品でも、「ホスローとシーリーン」に比べて美辞麗句が少ないこと。もちろんライラのことは月のように美しいとか書いてるんですけど、勢いが全然違ーう。と思ったら、解説に書かれていました。アーリア系のイラン人が幻想的で繊細な情緒を好むのに対して、セム系のアラブ人は現実的で簡明直裁の理を尊ぶからなのだそう。

それにしても、失恋して気が狂うんならともかく、カイスとライラは両想い。まだ若いから大っぴらにするわけにはいかないにしても、そんな誰に邪魔されたわけでもないんです。カイスは両親の晩年の子で、しかも一人っ子。かなり大切に育てられたみたいだけど、別に甘やかされて弱くなったってわけでもないのに...。この狂気って、ライラと結婚できたら、果たして直っていたのかしら? それとももし結婚して念願のライラを手に入れたら、さらに壊れてしまっていたのかしら? カイスもライラも一生お互いのことを想い続けて、ライラは結婚しても自分の夫に一度も手を触れさせないほど。それほど愛し合っているんだから、既に悲恋とは言えないような気もするのだけど。
...結局のところ、これは12世紀頃からペルシャで文学に影響を及ぼし始めた「神秘主義思想(スーフィズム)」がポイントみたいです。これは粗衣粗食に甘んじて、俗世への念を絶って忘我の境地に到ろうとするもの。気が狂って砂漠に暮らすカイスの姿って、そのまんま神秘主義思想を実践してるようなものなんですもん。でも。ということは。ペルシャではなく、アラブやトルコではどんな話になってるんだろう? ちょっと読み比べてみたくなっちゃいます。(東洋文庫)


+既読のニザーミー作品の感想+
「ペルシアの四つの物語」岡田恵美子編訳
「ホスローとシーリーン」ニザーミー
「ライラとマジュヌーン」ニザーミー

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