「500年のトンネル」上下 スーザン・プライス

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21世紀の私企業・FUPが極秘裏に開発したのは、タイムチューブと呼ばれる一種のタイムマシン。チューブの片側の端は21世紀の現代に設置され、もう片側は現在は16世紀に設置されており、チューブが稼動すると、その中を歩いていく人間は通り抜けた時に16世紀のイングランドにいるという仕掛け。FUPは16世紀のイングランドの辺境地帯から石油や石炭、黄金などの資源を掘削し、さらにその辺りをリゾート地として売り出したいと考えていたのです。しかしその地方に住む好戦的なスターカム一族とはアスピリン錠をえさに同盟をしているはずなのに、彼らは地質調査に訪れた21世紀の学者たちを身ぐるみ剥ぐことなど何とも思っておらず...。

1998年に刊行されると、イギリス児童文学の2大タイトル、カーネギーとガーディアンの両賞にノミネートされて、「ハリー・ポッターと秘密の部屋」(J.K.ローリング)や「肩甲骨は翼のなごり」(デイヴィッド・アーモンド)などを抑えてガーディアン賞を受賞したという作品。
500年の昔にタイムスリップするという意味ではSFなんですが、SF色はその程度かな。むしろファンタジーと呼んだ方がいいかもですね。あとがきでもジュード・デヴローの「時のかなたの恋人」や他の作品が引き合いに出されていたけど、確かにそんな雰囲気。あとダイアナ・ガバルドンの「時の旅人クレア」とか。過去に行っちゃった後は、O.R.メリングのケルト物にもちょっと近いかも。
過去に行った現代人が自分たちを「エルフ」の一族だと名乗って、近代技術を全て「エルフの技」なんて言ってるのが、現地に派遣されてる女の子が妖精の女王的な扱いを受けてるのと相まって面白いんだけど... 本文中でも引き合いに出されてたんですが、21世紀の人間と16世紀の人間の関係がまるでアメリカ大陸に上陸した白人と現地のインディアンのようで、ちょっとツラい部分もありました。これでもっと21世紀人に魅力があればねえ。21世紀人が、「野蛮で好戦的で、しかも貧しくて不潔」と捉えているスターカーム一族なんですが、その生き様の濃さや力強さは実はとても魅力的。ものすごく「生きている」って感じがします。それに引き換え、21世紀の人々の情けないことったら。確かに清潔で便利な生活なんだけど、何て無味乾燥で薄いのかしら。...というのが、作者の書きたいことの1つだったのかもしれませんが、この辺りのバランスがもう少し良ければ、もっと面白くなったでしょうに、とも思っちゃう。ちょっと残念でした。(創元推理文庫)


+既読のスーザン・プライス作品の感想+
「エルフギフト」上下 スーザン・プライス
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「500年のトンネル」上下 スーザン・プライス

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Commentaires(2)

こんにちは。
この本、つい一昨日某新古書店で見つけ、「お!」と思って拾ってきたんですが、
四季さんが感想アップされていて驚きました(笑)。
ファンタジー色が強い作品なのかと思っていたんですが、
私が想像していたのとは、ちょっと違った物語のようですね。
無事読み終えた暁には、またコメントさせていただきますが、うーんうーん(汗)。
まずは『エルフギフト』から読んだ方が良さそうですね(汗)。

七生子さん、こんにちは~。
なんと丁度買われたばかりでしたか! それは奇遇ですね。
ええと、ずっと読みたいと思っていた本だし、悪くはなかったんですけども
「エルフギフト」や「ゴーストドラム」の力強さに比べると…
って感じでしょうか。
そういった本のせいで、少し違うものを求めちゃってたせいかもしれないので
これを先に読んでしまうというのも手だと思いますよん。^^
ファンタジー色はそれほど強くないですけどね。
16世紀のイングランドは素敵でした♪

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