「羊飼いの口笛が聴こえる」新藤悦子

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トルコの村で絨毯を一枚織り上げた新藤悦子さんは、絨毯に取り付かれたかのように絨毯の産地を巡る旅へ。そして気づいたのは、自分が惹かれるのは何年もかけて精緻に織り上げられた高価な絹の絨毯ではなく、遊牧民が織る伸びやかな絵柄のウール絨毯であること。絨毯を通して遊牧民の歴史を肌で感じるうちに、遊牧地を訪ねてみたくなった新藤さんは、トルコ西部の山にある遊牧民の夏の放牧地で羊飼いに挑戦することに。

遊牧民は本来、夏の遊牧地ヤイラと冬の遊牧地クシュラを往復する生活。現在は定住化政策によって、村で暮らしている遊牧民が多いようですが、それでもヤイラは遊牧民の誇りと憧れなのだそう。でもびっくりしたのは、ヤイラに行きたがってる新藤さんの前では「ヤイラなんて、今はもうないよ」とその存在を隠そうとすること。新藤さんが村の社交場であるチャイハネ(喫茶店のようなもの)に何度も通って親しくなっても、なかなか教えてもらえないんですね。一旦バレてしまえば、どのヤイラに行くのがいいのか話し合い始めるんですが。これは「日本人女性がなんで羊飼いなんかを?」というのもあるんでしょうけど、自分たちの拠り所として大切にしておきたいというのもあるのかな...。そして現実の羊の遊牧は、長閑で牧歌的な昼のイメージとは大違い。なんと日没から夜明けまでの夜通しの作業でした。そりゃ女性にはなかなか難しいはずだわ。
そしてこの出来事と同じように印象に残ったのは、幻の白い天幕(ユルト)を見たいという新藤さんが、「どうせあとで貧しいと馬鹿にするつもりだろう」と持ち主に断られる場面。その裏には、ここ数年でトルコ人労働者がめっきり増えたドイツで、トルコの貧しさを売り物にして悪口を言うようなテレビ番組が増えたという現実があるんだそうです。そして「ユルトにクラスというのもいいものですね」なんていう新藤さんに対するシェヴケットの言葉は、「冬にここに来れば考えも変わるよ」というもの。
ヤイラのことも白い天幕のことも、今の生活を愛しながらも厳しい現実の壁が立ちはだかっているというのが伝わってくるみたい。客人をもてなさないのは恥だと考えているトルコ人にそんな言動をさせてしまうなんて、その裏にあるものを考えてしまいます。きっと興味本位で無神経な客も増えてるんだろうなあ...。(朝日新聞社)


+既読の新藤悦子作品の感想+
「空とぶじゅうたん」1・2 新藤悦子・こみねゆら
「青いチューリップ」「青いチューリップ、永遠に」新藤悦子
「エツコとハリメ」新藤悦子
「トルコ 風の旅」「イスタンブールの目」新藤悦子
「時をわたるキャラバン」新藤悦子
「羊飼いの口笛が聴こえる」新藤悦子
「チャドルの下から見たホメイニの国」新藤悦子

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Commentaires(4)

四季さん、こんばんは。
おお、まだまだ新藤悦子さんが続いているのですね♪
この周辺、私も興味があるので嬉しいです。

この間読んだ、「おどりば金魚」という本に、ギャベ(ギャッベ)が出てきたんですが、ここでおっしゃってるのも同じなのでしょうか??
いまひとつ、ギャベとキリムの違いが分からない私です…。

最近、ライトノベルの「狼と香辛料」を読んだのですが、そこで出てくる羊飼いの生活もなかなかに苛酷なようでした。
羊飼いというと、何となく「アルプスの少女ハイジ」のペーターのことを思い出しちゃうんですが(あれは、太陽の光の中、さわやかでしたよねえ)、あれはヤギの番だったから違うのかしら?笑

つなさん、こんにちは~。
そうなんですよ。気がついたら新藤悦子さん続きで、あと2冊残すのみ…
別に読破したいと思っていたわけではないんですけど
やっぱりこの方面の本が読みたいとなると、そうなってしまいますね。(笑)

ギャベというのはよく知らないんですが、
調べてみると、ペルシャ遊牧民の手織り絨毯?
遊牧民がテントに敷いて使った、厚みのあるラフな絨毯みたいですね。
いわゆるペルシャ絨毯よりも、ちょっと庶民的な感じなのかしら…
ギャッベキリムというのもあるみたいで、私も違いがよく分かりませんが
キリムというのは平織りらしいので、糸を結んでいく絨毯とは織り方が違って
もっと薄手のものなのかななんて思うんですけど、どうでしょう。全然違うかも。(笑)

この本でも羊飼いとヤギ飼いの違いの話が少し出てきたんですけど
従順で牧羊犬の言うことを素直に聞く羊の方が、遊牧はずっと楽なんですって。
ヤギは自我を通したがって、四方八方に散ってしまって大変みたいです。(笑)
でもこの地方で夜に遊牧するのはもっぱら羊で、ヤギは昼間とあったかな…
本を返却してしまったので、今は確認できないんですが。

羊飼いっていえば、私もすっかりハイジのイメージだったのでびっくりでした。
でも考えてみれば、キリスト生誕の時にも、羊飼いたちが夜に野宿しながら群れの番をしてるんですよね。
あ、でもあれはベツレヘムだから、結局のところ同じような地方の話ですね。(笑)
ヨーロッパなんかだとどうなんでしょうね?
やっぱり羊飼いといえば、昼間のイメージなんだけどなあー。(笑)

おお、すごい、読破目前ですね!笑
わが図書館にはあまり揃ってないみたいで、せっかく前回お勧め頂いたのに、
「イスタンブールの目」も「エツコとハリメ」もしばらくは読めそうにあり
ません…。
この本はあるみたいなので、こちらからいってみようかなぁ。

そうそう、ギャベはそれです!
確かにキリムは織りのイメージだけど、ギャベはもっと厚そうだし、固めて
(?)ある感じですよね。
検索して、ギャッベキリムという言葉が私を惑わせたのでした。笑
投げっぱの疑問にお答えくださり、ありがとうございました。

そっかー、ヤギは我が強いのか…。笑
沖縄の本とか読んでも、ヤギの肉は相当癖がありそうですけど、生きてる時も!

聖書の羊飼いは確かにそうですねえ。
そこは何とも思ってなかったけど、確かにそのまんまですね。笑
ほんと、ヨーロッパの羊飼いってどうなってんのかなぁ。

つなさん、こんにちは!
この本、どこか焦点が定まりきらない感じもなきにしもあらずなんですが
図書館にあるなら、ぜひどうぞ~。
あと「トルコ 風の旅」はありますか? もしあったらこれもいいですよ。
という私の方は、「砂漠の宝」を読みました!
ちょっと風邪をひいてしまって感想が溜まってるんですけど
アップしたらまたそちらにTBさせていただきますね。^^

ギャッベキリムというのは相変わらず分からないんですけど
ギャベとキリムの違いはそんな感じですかねえ?
多分全部実際に並べてみれば、違いは一目瞭然なんでしょうね。
でも、実際に見てしまったらハマってしまうかも… と思うとちょっとコワい。
元々エスニックな布物が大好きなんですよー。更紗とかね。
キリムとか絨毯とか、写真で見てるだけでも惹かれるのが多いのでキケンです~。(笑)

沖縄の山羊料理は相当強烈そうですよね! でも一度食べてみたーい。
あとはやっぱりハイジの影響で、ゴートミルクも飲んでみたいです。

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