「砂漠の宝 あるいはサイードの物語」ジクリト・ホイク

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12歳のアブリにとって初の旅となったのは、父が引き連れる小さなラクダの隊商に入って、同じ砂漠に住む別の遊牧の民を訪ねる旅。そしてその帰り道に一行が出会ったのは、1人で旅をしている見知らぬ男でした。スレイマンという名のその男は、昔話の語り部。彼は一行に加わることになり、帰り道の間、一行がお茶や食事で休むたびに物語を語ることになります。

日常&読んだ本log のつなさんのところで知った作品です。(記事
舞台となっているのは現代のサハラ砂漠なんですが、砂漠の民は昔ながらにラクダの隊商を引き連れて旅をして、語り部は昔話を語っています。アブリの希望で、スレイマンの語る物語には車や飛行機や電灯が登場するんですが、実際には魔法と冒険の物語。水の妖精ペリが登場して捨て子のサイードに贈り物をするところなんかを見ても、昔ながらの物語といった感じですしね。でも昔話の語り手と言えば、既に存在している話を自分なりにアレンジしながら語っていくものなのかと思っていたんですが、ここに登場するスレイマンの物語は違いました。隊商の面々の助けを得ながら、身の回りに現れる様々な物にインスピレーションを得ながら、物語を聞き手と一緒に作り上げていくんです。どんな話を聞きたいか聞き手に尋ねるのは当然としても、その後はかなり成り行き任せ。これが面白い~。スレイマンによると物語には3つの種類があって、1つはまず本当に起きた出来事が物語になったもの、次は夢が物語になったもの。そして最後は周囲にある物から紡がれた物語なのだそう。ここで語られてるのはこの最後のタイプの物語ですね。語っているスレイマン自身にも、話がどんな風に発展していくのか分かりません。ただ、周囲に現れる事象を見逃さないように気をつけながら、物語を絨毯のように織り上げていくだけ。
スレイマンの語る物語の主人公・サイードの旅は、宝物を探す旅。サハラ砂漠のニジェール河に始まり、モロッコや、エジプトのカイロ、北イエメンの首都サヌア、そして再びニジェール河へとサハラ砂漠の周囲を巡る旅。出会いと別れを繰り返しながらの物語は、最後の最後で意外な方向へ。いや、この最後がいいですね。まさかこんな風に繋がっていくとは!

そして物語を語るたびに、その締めくくりに登場する言葉も素敵。

誉むべきかな、アッラーの神。われらに言葉を授け、昔語りをする術を与えたまいしアッラーの神に感謝!

これこれ、こういうのが好きなんです♪ これは手紙の最後の署名のように、語り手それぞれに決まった言葉があるのだそう。
この物語の作者はドイツ人なんですが、本が読めるようになった頃からずっとアラビアの世界に魅せられて来たんですって。うんうん、分かる~。ものすごく伝わってきます。いや、もう雰囲気たっぷりの作品でした。(福武書店)

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ジクリト ホイク, 酒寄 進一 「砂漠の宝―あるいはサイードの物語 ?」 トゥアレグ族の少年、アブリ。彼の父は、駱駝の隊商を率いる長のアフマ... » Lire la suite

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四季さん、こんばんは!
楽しんで読まれたようで、私も嬉しいです♪
(記事中、ご紹介&リンクありがとうございます)
そういえばいまさらですが、四季さんとこのカテゴリーは地域の分野別
になっているのですね。
ふふふ、私もここを参考にまた色々探せそう~。
そして、「アラブ・ペルシャ・トルコ」が、がんがん増えている!笑

ところで、四季さんはドイツに亡命したシリアの作家、ラフィク・シャミ
はご存知ですか?
私は「夜と朝のあいだの旅 」という本を読んだのですが、
(http://ameblo.jp/tsuna11/entry-10054589721.html)
amazonでは高評価だったものの、私はいまひとつ入り込めず…。
いや、ドイツとアラブというので思い出したのですが…。
自分の中では、ヨーロッパと中東って、結構違う印象を持っていたのですが、
距離的にもそんなに遠いわけではないし、実際にはある程度の近しさは互い
に持っているものなのかなぁ。

つなさん、こんにちは~。
いやあ、ほんと楽しかったです。
いい本をご紹介くださって、こちらこそありがとうございます♪
あ、そうなんですよ。>カテゴリ
本当は地域別の神話・伝承関係のはずだったんですが
結局その地域にまつわる本は全部入れてて、結構イイカゲン…。(笑)
でもそうなると、前のブログで感想を書いた本を入れられないのがちょっと寂しいです。
たとえば「柘榴のスープ」とか。
いずれ何らかの形でリンクしておきたいんですが、あの作者さんの本は今のところ1冊しかないし。
そうだ、F・マリオン・クロフォードの「妖霊ハーリド」もアラビアの雰囲気たっぷりで楽しかったですよ。
http://ciel.relieur.net/archives/06/12/03_6.php

ラフィク・シャミという作家さんは初耳です。
調べてみると、結構沢山書いてらっしゃるんですね。
ほんと、アマゾンでは軒並み高評価!
でもつなさんの書かれている、後ろのセットが透けて見えちゃうというのは
なんだかすごーく分かる気がします。

ヨーロッパと中東って、結局のところ陸続きだし、
たとえばトルコがハンガリーを支配してたなんて時代もあるわけだから
案外近いのかもしれませんねー。
キリスト教徒にとって、一番身近な異教徒の脅威って感じでしょうか?(笑)
あとね、今、中近東からドイツに行く人ってとても多いみたいです。
トルコ人労働者のことも、ドイツですごい社会問題になっているのだとか…
日本から遠く眺めてるだけでは、分からない部分も多そうですね。

そうそう、「妖霊ハーリド」は、四季さんとこで気になって、まさに読みたいー!と思っていた本だったのです。笑
でも、これって、たぶん、絶版本ですよねえ?
気長に探すことにしますー。

そうなんですよー、既に絶版なんです。>「妖霊ハーリド」
図書館にはないですかねえ? 文庫だから難しいかな…
でも雰囲気たっぷりの作品なので、もし見つかったらぜひぜひ♪

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