「ユートピアだより」ウィリアム・モリス

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ある初冬の晩、社会主義同盟の集まりから帰ってきた「私」は、家についた途端ベッドに転がり込んで、すぐに寝入ってしまいます。しかし翌朝、すっかり日が高くなってから目が覚め、服を着替えて外に出てみると、そこは6月上旬のようなうららかな美しい朝。空気が心地よく、そよ風が気持ち良いのです。なかなか眠気が去らないせいだと考えた「私」はテムズ川で泳ぐことを思い立ち、いつの間にか家の真正面にできていた浮桟橋から舟に乗り込むことに。しかし水の中から見た川岸の光景はいつもとはまるで違っていて、船方の青年も14世紀風の美しい服装をした洗練された紳士だったのです。その船方の青年・ディックと話すうちに、「私」がなんと未来のロンドンにいることが判明して...。

19世紀に生きる主人公が、22世紀の未来にタイムスリップしてしまうという物語。未来のイギリスはまさにユートピア。貨幣制度は既に廃止されていて、人々は生きるために働いているのではなく、自分の楽しみのために、あるいは夜の眠りを心地良くするために働いています。機械によって粗悪品が大量生産されることもなく、美しい手工芸品が喜ばれる世界。生活に追われて嫌な仕事に追われるということもなく、各自がそれぞれに好きな仕事をこなし、必要とする人に必要とする物を供給することによって自然に社会が運営されていくという仕組み。いつか「革命」がおきて、そういった世界が来ることを望んでいた主人公は、自分の生きていた時代から後に一体何が起きたのか、古老たちに聞かずにはいられません。
これはモリスにとっての理想の社会の未来図なんでしょうね。モリスにとって現実の19世紀の世の中がどんなものだったのか、そして彼の持っていた社会主義とはどのような思想だったのか、この作品を読むとよく分かります。でも、あまりに夢物語で... もちろんこの作品の中でもこれは夢物語なんですけど(笑)、ここまでくるとなんだか逆に痛々しくて、読むのがちょっとツラかったかも。
でも、満ち足りた幸せな生活を送っていると、人間の老け方も全然違ってくるというのが面白かったです。主人公はじき56歳という年齢なんですけど、未来の世界では80代ぐらいの老人と思われてるんですね。逆に20歳そこそこだと思った女性が実は40歳を過ぎていたり、がっしりと逞しい初老の男性が実際には90歳ぐらいだと分かったりして、主人公はびっくり。確かに生活に追われてると老けやすいでしょうけど、ここまで極端なのは... でも言いたいことは分かるような。(笑)(晶文社)


+既読のウィリアム・モリス作品の感想+
「世界のはての泉」上下 ウィリアム・モリス
「理想の書物」ウィリアム・モリス
「輝く平原の物語」ウィリアム・モリス
「ジョン・ボールの夢」ウィリアム・モリス
「ユートピアだより」ウィリアム・モリス
「不思議なみずうみの島々」上下 ウィリアム・モリス
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