「サンダリング・フラッド」ウィリアム・モリス

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伝えられるところによると、その昔、サンダリング・フラッド(引き裂く川)と呼ばれる大河が大地を分断し、その上流の渓谷地方の東側にウエザメルと呼ばれる農場には両親を早くに亡くし、祖父母に育てられた強く頑丈な少年・オズバーンが住んでいました。オズバーンは生まれながらの詩人であり、しかもわずか12歳の時に羊の群れを襲った狼3匹を殺して、少年闘士としてその近隣では有名な存在となります。そんなオズバーンがエルフヒルドという名の同じ年頃の乙女と出会ったのは、彼が13歳になったばかりの頃のこと。しかしエルフヒルドはサンダリング・フラッドの西側の鹿の森の丘に住んでおり、2人は川越しに様々なことを語り合うものの、川は空を飛ぶ鳥以外の生き物に流れを横切ることを決して許しはしなかったのです。

北欧文学に強く影響を受けて書いたといわれる、ウィリアム・モリスの遺作。
確かに北欧文学の影響を受けているだけあって、まるでサガのような雰囲気を持つ作品。物語全体としてはオズバーンのサガで、オズバーン自身の成長物語と、オズバーンを始めとする男たちの勇壮な戦いが中心。そしてその中に、美しいエルフヒルドとの恋物語も描きこまれているという形。このロマンス自体は中世のイギリス文学にも見られるようなものなんですが、キリスト教圏というよりも北欧圏らしく、若い2人の思いがとてもストレートに描かれてます。
でも、とっても素敵な物語になる可能性が高い作品だったと思うんですが... 日本語訳がどうもとても読みにくくて話になかなか入り込めなかったこと、物語そのものにも推敲されきっていない、あまり整理されていない部分が目についてしまうのが残念でした。途中、エルフヒルドが行方不明になって、そこからはオズバーンの戦いばかりがクローズアップされることになるんですけど、この辺りが少々長すぎて冗長に感じられてしまいましたしね...。しかもオズバーンとエルフヒルドのやっとの再会も、盛り上がり不足。失踪していた間のエルフヒルドの物語を老婆が1人で全て語ってしまうというのも、その大きな要因かな。モリス自身が筆を取ったのではなくて、病床で口述筆記をしたそうなので、ある程度は仕方ないと思うんですけどね。
この老婆や2人に贈り物をする小人、そしてスティールヘッドなどの人物についても、最後に明かしてもっと盛り上げて欲しかったところです。モリスにもっと時間があれば良かったのに、残念!(平凡社ライブラリー)


+既読のウィリアム・モリス作品の感想+
「世界のはての泉」上下 ウィリアム・モリス
「理想の書物」ウィリアム・モリス
「輝く平原の物語」ウィリアム・モリス
「ジョン・ボールの夢」ウィリアム・モリス
「ユートピアだより」ウィリアム・モリス
「不思議なみずうみの島々」上下 ウィリアム・モリス
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「サンダリング・フラッド」ウィリアム・モリス
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