「イワンのばか」「人はなんで生きるか」トルストイ

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副題はトルストイ民話集。この2冊で全部で14編の物語が収められています。
どれも読んだことがある話なので、子供の頃に岩波少年文庫で読んでいたものと、入ってる話は同じなのかな? 岩波少年文庫版が手元にないので、比べられないのがもどかしいー。そして比べられなくてもどかしいといえば、訳もなんですよね。岩波文庫版は中村白葉訳、岩波少年文庫版は金子幸彦訳と訳者さんが違うので、岩波少年文庫の方は子供用に平易な訳となっているのかもしれないんですが、伝わってくるものは全く同じ。トルストイほどの文章になると、ロシア語→日本語なんて壁も既に壁じゃなくなってしまうのかしら、なんてふと思ってみたり。でもこの「イワンのばか」以下15編はトルストイ晩年の作品で、その頃のトルストイは、一般の民衆がきちんと理解できるように簡潔で平易な表現で書かれるべきだと考えていたようなので、日本語に直しても読み手に伝わりやすいのかもしれないですね。

内容的にはとてもキリスト教色が強いです。特に「人はなんで生きるか」の表題作とここに収められている「愛のあるところに神あり」「二老人」。「イワンのばか」も基本的にキリスト教色が強いんですけど、こちらに収められている作品は民話色も強いのです。「人はなんで生きるか」の方は、もっと純粋にキリスト教に近づいているような印象があります。キリスト教色が強いとは言っても、ロシアの話なのでイギリスやフランスの作品とはまた少し違う雰囲気だし、どことなく異教的な純粋さがあるような気がして結構好きなんですが。
他のたとえば「アンナ・カレーニナ」みたいな作品もいいんですが、私はこちらの方がずっと好き。芸術は宗教的なものを土台に持つべきだ、なんてことは思わないけど(トルストイはそういうことも言っていたらしい)、一般の民衆によく理解されるために簡潔で平易な表現で書かれるべきだという部分はその通りだと思いますね。私なんかからすれば、小難しい文章を書く人よりも、読み進めるにつれてすんなりと頭に入ってくるような文章が書ける人の方が頭がいいように思ってしまうんですけど、どうなんでしょう。誰にでも理解できるように表現できる方がずっと大切だと思うんですが... って、私の理解力ではあんまり難しいものは理解しきれないというのもあるんですけどねー。(笑)(岩波文庫)

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Commentaires(2)

「イワンの馬鹿」という話、文庫の解説だと、取材した民話があまりないかのように書いてあるけど、そうでもないですよね。
愚かにみえる若者が、じつは神の意にかなう子である…というのは、まさにこないだのペンタメロンの話や炭焼き小五郎と同じ(グリムだと「ハンスの馬鹿」)だし、
三人兄弟で相続するタイプの話は、シェイクスピアのリア王なんかでも用いられてるもの。

でも、この三兄弟話としての「イワンの馬鹿」で、特に重要なのは「カラマーゾフの兄弟」とのつながり。
カラマーゾフはまちがいなく、トルストイのこの作品と同様、ロシア民話「イワンの馬鹿」が大元にある。

そう思って読むと、興味深いのは、イワン。
ドミトリー・イワン・アリョーシャの三兄弟で、イワンがいちばん賢い。
でも、その賢さは、「神の不在の証明」というところに行き着いてしまう。
そして、隠れた四人目の兄弟=イワンの分身であるスメルジャコフによって、愚行が演じられる。
(父殺しであり、神の悪の側面(父=神=フョードル)を抹殺する試み。それ自体が悪の源泉なんですが。)
つまり、いちばん愚かでもある、イワン。
民話を元に、じつに巧妙にひねってある設定です。

末弟のアリョーシャは、この物語の主人公で、「白痴」の主人公ムイシュキンの流れをくむ点で「馬鹿」なんですが、
彼は人が生きていく上で、神の存在がむしろ積極的に要請される…つまり「証明」されるべきようなものではなくて、生きていくことで体得され見出されるものだと、はじめから(アプリオリに)わかっている。
愚かであると同時に、神に愛されている子である、アリョーシャ。
ドストエフスキーは、この考え方をたぶんカントから学んでるんです(ドストは獄中で読んだらしい)。

まあ、私のカラマーゾフの読み方ですが。
たぶんドストエフスキーもそう設定してると、私は思ってるんです。

そうそう、文庫の解説にはそんなことが書かれていましたね。
確か、イワンとその2人の兄、という昔ながらの構図を利用してるだけだとか…
でも確かに、愚かに見えても実は…というのも民話ならではだし
3人兄弟とか3回繰り返すとか、上の2人がダメで一番下の子が上手くという辺りでも
きちんと民話のセオリーを踏まえてますものね。
確かにトルストイの創作部分も大きいのでしょうけれど。

ああ、「カラマーゾフの兄弟」…
もうすっかり忘れてしまっていて、何が何やら状態なんですが(汗)
でも確かに大元にあるのは「イワンのばか」なんでしょうね。
イワンが次男というのが意味深。
ロシアではイワンという名前は普通に使われてる名前なんでしょうし
そういう意味では、ロシア以外の人の方がイワンと聞いてピンときそうな気もしてしまうんですが
やっぱり一番ピンと来るのはロシアの人なんでしょうか。(笑)
…やっぱりきちんと読み直さなくちゃ。>カラマーゾフ

カントに関しては全くといっていいほど何も知らないんですが…
…あまりに規則正しい生活をしていたので、近所の人がカントの散歩するのを見て
自分の家の時計を直したとか、ある日本に夢中になって散歩の時間がズレて
近所の人が大騒ぎになったとか、そういうエピソードぐらいなんですが…(笑)
この人はドイツ人ですよね?
そんな風にドイツの人の哲学書を読むことによって
最終的にロシアの民話の真髄的な部分に立ち返っているのが面白いですね。

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