「朱唇」井上祐美子

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あるうらぶれた老人のもとを訪ねた客。老人の出す茶の香りや味が普通のものとはまるで違うと客が気づいたことから、老人はかつて金陵一と言われた妓女・王月生の話を始めます... という「朱唇」他、全7編。

井上祐美子さんの作品を読むのはほんと久しぶり。ブログを始めて5年目に入ってるんですけど、ブログには全然井上祐美子さんの本の感想がないことに気がついて、さっきちょっと呆然としてしまいました...。サイトを始めてから読み始めた作家さんなので、そっちには全作品の感想があるんですけどね。(サイトを始めたのは8年前かな) なんと新作が5年以上出てなかったってことなんですねえ。ええと、この「朱唇」は、唐代や明末期から清にかけて生きた妓女たちの物語。7編のうち「断腸」という作品だけは妓女ではなくて、そういった楼閣に生きる男が主人公なんですが、どの物語にも妓女が登場します。妓女といえば、宮尾登美子さんの昭和初期の土佐高知の色街を舞台にした一連の作品も好きだったなあーと懐かしく思い出すんですが、これは宮尾さんの作品のようなどろどろとした愛憎渦巻く世界とはまた全然違う雰囲気。

ここに登場する妓女たちはそれぞれに艶やかな美貌の持ち主。個性はまるで違うんですが、それぞれに美しくて芯の強い彼女たちの姿がとても魅力的。でもどれほど美しくて教養があっても、素晴らしい技芸の持ち主でも、時がたてば容色は衰えるし、見向きもされなくなるんですよね。花の命は短くて、です。一流の妓女となるような女たちはそのことをよく知ってます。だからこそ、自分の一番美しい時期を大切に生きているのでしょう。プライドの高さも、傍目には無礼に感じられる行動も、単なる我侭だけでなくて、それだけ自分の気持ちや誇りを大切にしているという証。
この中で特に強く印象に残ったのは牙娘と李師師かな。李師師といえば水滸伝にも出てきましたねえ。この妓女は結局誰だったのだろうと余韻の残る「名手」も良かったです。 (中央公論新社)


+既読の井上祐美子作品の感想+
Livreに、これ以前の全作品の感想があります。

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Commentaires(2)

凛として素敵な妓女たちが登場する短編集ですよね。
それにしても最近はなかなか新作が出なくて、
なんだか寂しいです。まあ、新作が出たら出たで
またぞろ私の中国行きたい病が再発するんでそれはそれでキケンなんですけれども。
井上祐美子の作品はアンソロジー含めて全作読んでいたつもりだったのですが、
いちご文庫(「虹の瞳きらめいて」「ローズガーデンの夏物語」は未チェックでしたー。

菊花さん、こんにちは。
この本、図書館で借りたんですけど、実は借りたの3回目なんです。
私にしては珍しいんですが、借りても読まないまま返してしまって…
多分中国物の時期ではなかったんだろうな、と今になってみると思うんですが
新作が次々に出るような作家さんだと、ちょっとできないことなので
自分のコンディションに合わせて読めるのが、嬉しいようなさびしいような~。(笑)

寡作な作家さんですけど、それだけにじっくり読ませてくれて、ほんとどれもいいお話でしたよね。
今回も堪能しました。
あ、いちご文庫の2冊は全然中国物じゃないので…
入手も困難だし、井上祐美子さんらしさも薄いので、スルーしてしまって正解かと…(^^ゞ

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