「李世民」小前亮

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隋の大業13年(西暦617年)。ほぼ300年ぶりに中国全土統一を果たしたにも関わらず、2代目皇帝・楊広の3度に渡る高句麗遠征失敗のため、隋の皇帝の権威は完全に失墜。国中で反乱が起こり、皇帝は都を捨てて江南の地へと逃れて酒色に溺れる日々を送っていました。楊広の母方の従兄にあたる唐公・李淵もまた、長男・建成、次男・世民の力に支えられて決起します。その頃、「龍鳳の姿、天日の容なり。年二十に至れば、必ず世を済い、民を安んずるべし」と言われた李世民は20歳となっていました。

後に唐の太宗皇帝となる李世民が群雄割拠の時代に決起、中国全土を統一して覇権をとるまでを描く歴史小説。いやあ、読み応えがありました。これがこの小前亮さんのデビュー作とはびっくり。
題名は「李世民」だし、確かに最終的に覇権を取るのは李世民なんですけど、李世民が主役の物語というよりも群像劇ですね。李世民は確かに若き英雄として描かれてるんですが、他の群雄と同じ程度の扱い。だから、もちろん群像劇としての面白さはあるんですけど... うーん、李世民をもう少し人間的に掘り下げて欲しかったかなあ。そもそも出番が少ないし、なんだか李世民の人物像をふくらませるより、父親の李淵の無能ぶりを強調して李世民を引き立たせてるみたい。みんなが一目見て納得するような「真王」ぶりが今ひとつ伝わってこなかったのが残念だったんですよね。それを考えると、作品そのものもどこか決定的な盛り上がりに欠けてたような気も...。戦争の場面の描写には迫力があるし、メリハリも利いてるのになんでだろう。各武将についてのエピソードも分かりやすく配置されてるし、章が変わるたびに新しい勢力図が挿入されてるから情勢の変化も掴みやすいのに。もしかしたらその「分かりやすさ」への配慮が裏目に出て、勢いがなくなっちゃったのかしら。
でも、一番の興味だった兄・李建成との決着のつけ方は良かったです。李建成の人物像にも、世民と建成が2人並び立って父を支えてるという構図にもすごく合ってるし、これはすごく納得できました。それにここで思い悩むこの李世民はとても人間的。こういうところをもっと早く前面に出してくれれば良かったのに。
この方、他にも宋や明の時代の作品を書いてらっしゃるみたいだし、いずれそちらも読んでみたいな。この李世民が皇帝になった後の話もぜひ書いてほしいですー。(講談社文庫)

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四季さん
コメント&TBありがとうございました。同時期にかぶっているなんて珍しいです。もしかして四季さんとかぶるのってはじめて?かも。
>李世民をもう少し人間的に掘り下げて欲しかったかなあ。
まったく同感です!タイトルにちょっと合っていない感じがしましたね。むしろ「唐建国」とか「唐勃興」とか「唐開闢史」とか・・・センスないですが・・・そんなタイトルの方がしっくり来そうな感じでした。

他の本も読んでみたいのですが、この本のように全般を平たく書いてあるとしたら・・・と思うと手が出ません。
今回は李世民だから読めた、というような気がしてきました。
とはいえ、本を読む時間がほぼないんですよー。。。こちらにもたまには来るのですがどんどん頻度が下がってしまって。

今年300冊読めるかどうか怪しくなってきました。。。

やぎっちょさん、こんにちは。
ほんと珍しいですよね、かぶるのは。多分初めてだと思いますよー。
しかもこんなところで!(笑)

あー、やぎっちょさんも思われてましたか。>李世民をもっと掘り下げて欲しい
これで戦上手の強い武将っていうだけなら、あの程度でも別に構わないと思うんですけど、
李世民の場合、魏徴や李靖といった隋の忠臣を振り向かせる魅力も必要なわけですしねえ。

同じ群像劇を書くにしてももう少しやりようがあったんじゃないかって、後になってみると思いますね。
やっぱり広げすぎたのかな。あれもこれも書きたいというのは分かるんですけど。
これで李世民さえもっとじっくり描きこまれていれば
平たさもある程度解決するし、満足度が相当違ってきたような気がします。
今回、李世民よりも竇建徳の方がずっと人間的で面白かったです。(笑)

お仕事、ほんとお忙しそうですね。大変そう。いや、いいことだとは思いますが!
という私も少し変化がありまして、今年は読了本の数がすごく減ってるんです。
9月に少し挽回したんですが、去年の今頃に比べると80冊も少ないんですよー。
でもまあ、数じゃないですしね。お互いぼちぼち読んでいきましょう♪

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