「バーナム博物館」スティーヴン・ミルハウザー

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町の中心にあるバーナム博物館は、様々な様式が混在している上、非常に複雑な構造。そしてその中には、ありとあらゆる不思議な物が詰まっているのです... という表題作「バーナム博物館」他、全10編の短編集。

まるで表題作となっている「バーナム博物館」そのままのような本でした! 10編の短編が、まるでバーナム博物館のそれぞれの展示室のような感じ。細密画のようにみっしりと描きこまれたそれぞれの物語が濃厚な空気を発散していて、読者を「自然な世界から怪奇・幻想の誤った世界へ」と誘います。しかも、ふと異世界に踏み込んでしまえば、もう二度と元の世界に戻れなくなりそうな危機感もたっぷり。でも博物館の中をいくら歩いて回ってもその全貌はなかなか掴めないように、この短編集をいくら読んでも、ミルハウザーという作家の全貌はなかなか見えて来ないのかも。博物館の中を歩くたびに新たな部屋や展示物が見つかるように、本を開くたびに新たな発見がありそうです。
私が特に気に入ったのは表題作の「バーナム博物館」と「探偵ゲーム」かな。「バーナム博物館」は「イン・ザ・ペニー・アーケード」の中の「東方の国」のような雰囲気で、説明だけといえば説明だけなんですが... それぞれの部屋や展示物を想像しているだけでも素敵。そして「探偵ゲーム」は、3人きょうだいの末っ子のデイヴィッドの誕生日に、久々に兄のジェイコブと姉のマリアンが家に戻ってくるんですが、ジェイコブは大遅刻をした上、何の予告もなく恋人を連れて来るんですね。で、4人で探偵ゲームというボードゲームをするんだけど... という物語。それぞれの人物のモノローグが積み重なっていく形式なんですが、ゲームの参加者1人1人だけでなく、ゲームの盤上の駒として動いている人物たちのモノローグも入って、それぞれの思いや腹の探り合いが渾然一体。どちらが現実なのか分からなくなりそうなほど緊迫感たっぷり。
シンドバッドの架空の8番目の航海を物語りながら、時折「千夜一夜物語」がヨーロッパに広まった経緯などの考察が挟み込まれる「シンドバッド第八の航海」や、「不思議の国のアリス」の冒頭のアリスが落ちるシーンだけを描きこんだ「アリスは落ちながら」も楽しかったし、「千夜一夜物語」や「不思議の国のアリス」を読み返したくなっちゃう。そして最後は、映画化もされた「幻影師、アイゼンハイム」。「イン・ザ・ペニー・アーケード」の中の「アウグスト・エッシェンブルク」タイプの作品。やっぱりこれが一番ミルハウザーらしい作品なのかもしれないなー。(白水uブックス)


+既読のスティーヴン・ミルハウザー作品の感想+
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スティーヴン ミルハウザー, 柴田 元幸「バーナム博物館 」なかなか不思議で雰囲気のある表紙なんだけれど、出ないようです、残念。読み終... » Lire la suite

Commentaires(2)

四季さん、こんばんは~。
四季さんも「探偵ゲーム」お好きだったんですね!
こんがらがってきそうだったけど、私も面白く読みました。
ああ、そして、こうして『イン・ザ・ペニー・アーケード』との対比でもって書かれてしまうと!
私も読まなきゃな~。笑

柴田元幸さんとトマス・ピンチョンなどの訳者(って読んでないですけど)佐藤良明の『佐藤君と柴田君』を読んだときに、そもそもミルハウザーが気になっていたのでした。
この本で言うなら、スチュアート・ダイベックの『シカゴ育ち』も気になっていてたんですよね。
なんだか色々思い出してきちゃいました。笑
宿題発覚?!、な感じです。笑

つなさん、こんにちは~。
「探偵ゲーム」、面白かったですよねー!
でもね、全体的には「イン・ザ・ペニー・アーケード」の方が好きだったんです。
最初に読んだのがそっちだったからなのかもしれないのですが。
つなさんもぜひぜひ読んでみてくださいませ♪

「佐藤君と柴田君」なんて本もあるんですか。
うわー、また気になる本が増えちゃったじゃないですか。いやーん。(笑)
訳者さんのエッセイって、ほんと面白いのが多いですよね。
しかも読んだ後には気になる本が脳内山積み状態になってしまうという効能が…
私も宿題は沢山抱えてるんですけど、どうにもなかなか進まなくて。
頑張らなくちゃ!(笑)

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