「階級にとりつかれた人々」新井潤美

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イギリスを理解する上で無視することができないのが「階級」という概念。その中でも一括りにされがちな「ミドル・クラス」は実は「アッパー」「ミドル」「ロウアー」という区分に分かれており、その中でも「ロウアー・ミドル・クラス」は、イギリス人の階級に関するこだわりがはっきりと現れる部分。しかしそれらの区分にこだわること自体がスノッブと思われがちなため、敢えて言葉に出したがらないイギリス人も多いのです。そんなロウアー・ミドル・クラスを中心に、イギリスの人々やイギリスの文学を改めて考えていく本。

以前読んだ「不機嫌なメアリー・ポピンズ」もすごく面白かったんですけど、こちらも面白かったです。やっぱりこういう知識は、イギリス文学を読む上では必須ですね。知ってるのと知らないのとでは、もう全然理解度が違ってしまうんですもん。大学の英文科だって、こんなこと教えてくれないし!

そしてイギリスの階級で一番厳しい視線にさらされてるのが、ロウアー・ミドル・クラスということらしいです。上流階級からそういう目で見られるならともかく、同じミドルクラスの中にいるはずの人たちから笑いものにされて、はっきりと線引きされてしまうとは...。
その原因は、まずロウアー・ミドル・クラスの人々の強い上昇志向。中身が伴ってないのに外見的なことだけ上の階級の人たちの真似をすることが「分をわきまえない」と嘲笑されるんですね。そしてこのクラスの人たちが上の真似をして身に着けた生活習慣や趣味、言葉遣いが逆に「ロウアー・ミドル・クラスっぽい」と揶揄されることに...。確かに、無理にお上品ぶる人たちに白い目が向けられるというのは分かる気がするし、それだけならそれほど問題もないはず。でもここで問題なのは、ロウアー・ミドル・クラスの人たちが上のクラスの真似をするのは、必ずしも自分たちの上昇志向のためだけではないということ。たとえば高級商店の店員だったり教師だったりとアッパー・ミドル・クラスと直に接する仕事についていることの多い彼らは、その場に相応しい服装や言葉遣いを求められるというんです。しかも限られた収入の中でやりくりしなくちゃいけないっていうんですから! それで嘲笑されてたら、それはちょっとお気の毒。でもどうやらそういう状況が斟酌されることはないみたい。素朴なワーキング・クラスの方がロウアー・ミドル・クラスよりも魅力的とされているっていうんだから、びっくりです。

そうか、ジェローム・K・ジェロームの「ボートの三人男」は、ロウアー・ミドル・クラスの小説だったのか。ジョージ・ギッシングもロウアー・ミドル・クラスの作家なら、P.G. ウッドハウスの「ジーヴス」も、ロウアー・ミドル・クラスの執事。(カズオ・イシグロの「日の名残り」の執事のモデルはジーヴスなんですって)「タイムマシン」などSF作品で有名なH.G.ウェルズが実はロウアー・ミドル・クラスの小説を沢山書いてたなんていうのもびっくりでした。(中公新書)


+既読の新井潤美作品の感想+
「不機嫌なメアリー・ポピンズ」新井潤美
「階級にとりつかれた人々」新井潤美

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Commentaires(8)

こんにちは。

うーん、外国人には難しいイギリスの階級社会ですね。
「階級に」は未読ですが、今度読んでみます。

映画編では、
「スクリーンの中に英国が見える」国書刊行会
「映画でわかるイギリス文化入門」松柏社
なんていうのもあります。

映画の方ですが、「ハリー・ポッター」の
ハーマイオニのアクセントはしっかりアッパー・ミドルなのだとか。
ウイーズリー家は魔法界の由緒正しい家柄ですが、
子どもが多くて経済的に大変なので、ドラコが突くのはそこなのだそうです。

本や映画の見方がすっかり変わってしまいますね。

きゃろるさん、こんにちは。
この著者の新井潤美さんは実際にイギリスの寄宿学校に入ってたそうで
そこで微妙な階級の違いを実感されたそうなんですね。
だからとても説得力がありました!
「不機嫌なメアリー・ポピンズ」も面白かったですし。

この本の中でも、ハリー・ポッターのことに触れられてました。
とは言っても、映画じゃなくて本の方なんですが
マルフォイはアッパー・クラス、ロンは経済的に落ちぶれたアッパー・クラス、
ハーマイオニーは向上心にあふれたロウアー・ミドルクラスタイプですって。
自分の勤勉さや独学で得た知識をひけらかして自慢するところが
典型的なロウアー・ミドル・クラスなんだそうです。
ああ、映画のハーマイオニーは歯切れの良いきちんとした話っぷりですよね。
むしろロンの方が庶民的な気が…

教えてくださった本も探してみますね。
ありがとうございます。^^

「日の名残り」の執事のモデルって、ジーヴスなんですかーーー!
衝撃の余り、思わず叫びそうに。笑
「日の名残り」では、最後にユーモアの勉強を始めてた気がするんですが、ジーヴスにはユーモアのセンス(っていうか、あれは意地悪?)で負けてる気がいたします。
ジーヴスで思い出すのは、どちらかというと、坂田靖子さんの漫画、「マイルズ卿ものがたり」だったりします。
こちらもまた、主人の扱いがいっそのこと小気味良いほど容赦のない執事が出てきます。

って、ものすごくピンポイントで反応してしまってすみません。
そうですよねえ、こういう階級を知っていた方が、同じ本を読んでいても見える世界が広がりそうです。
「不機嫌な~」も四季さんとこで読んで、面白そうだな~と思ってはいたのです。
でも、四季さんがいつもうまくまとめておられるので、ついついそれで読んだ気に。笑

あ、ごめんなさい、今読み返してみたら
ジーヴスがモデル、というほどではなかったみたいです…
カズオ・イシグロ氏が、執事という人間に会ったことがなくて
あのスティーヴンズという執事の人物像や語り口を作り上げるのに
ジーヴスからヒントを得たと語っていたそうなんです。
ジーヴス自体は、執事としてステレオタイプみたいですね。
で、ウースターもアッパークラスのステレオタイプ。その辺りが面白いところだそうなんですけど…
実は私はまだこのシリーズ読んでなくて。(汗)
あ、坂田靖子さんの「マイルズ卿ものがたり」も、読んだことないんですよー。残念。
読んでるのは「バジル氏の優雅な生活」ぐらいかな…
イギリスを舞台にした作品が多いですね。

「不機嫌な~」もこちらも、ほんと面白かったですよ!
自分が面白がってる部分が、実は思いっきりズレててびっくりしてみたり。(笑)
いや、私も結構ピンポイントだったりしますし(汗)、ぜひ読んでみてくださいませ~。

 こんばんは。樽井です。
 イギリスものの場合、やはりそういうのが理解できていればもっと作品の奥行きが広がるんだろうし、そのためにも原書でさくさくと読めるだけの英語力があればいいんでしょうけれど、、もう英語はアレルギーといってもいいくらい苦手だし、自分にはわからないことが一杯です。
 イギリスものの小説とかもちょいちょいは読むのでわかると面白いんでしょうけれどね〜。

樽井さん、こんにちはー。
「原書でさくさく」ができれば、何かといいんでしょうけどねえ。
それは私も無理です。(キッパリ)
でも、こういう知識を持ってるのと持ってないのとでは
読んだ時の反応が恐ろしいほど違ってきてしまうことを、改めて思い知らされちゃいました。

あ、でももちろん、そういう知識が必要不可欠というわけでもないと思うんですよ。
知らない方が、逆に自由に楽しめるという面もあるわけですしね。

とは言っても、目からうろこが本当にボロボロボロボロと…
ここまでくると、いっそ爽快感があります。(笑)

こんにちは。
イギリスの階級社会。
難しそうなので敬遠してたのですが、この本は面白そうですね!
「不機嫌なメアリー・ポピンズ」の方を先に読んでみようかな♪
私はあまりイギリス文学は読んでいないのですが(汗)海外ドラマが大好きで。
それらを見る時に、また違った面白さを発見できそうです。
ちなみに、マンガになるのですが波津彬子さんの「うるわしの英国シリーズ」はご存知ですか?
もし未読でしたらぜひ~☆

fumikaさん、こんにちは~。
イギリスの階級社会は奥が深そうですよ。
新たな発見が色々あって、どちらの本もすごく面白かったです。
BBCが制作したようなドラマを見る時にも役に立つかもしれませんね。
クラスによる言葉の使い分けなんかをチェックするのは難しいけど
部屋の装飾を見た時なんかに、ふふっと笑えるかもしれません~。

「うるわしの英国シリーズ」、知りませんでした!
残念ながら、ここ数年どうも漫画が読めない状態が続いてるんですが
それはぜひチェックしておきますね。
ありがとうございます。^^

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