「私を離さないで」カズオ・イシグロ

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キャシー・Hは31歳。もう11年も務めているというベテランの介護人で、仕事は提供者と呼ばれる人々を世話すること。仕事がよく出来るのに2~3年でやめされられる人もいれば、まるで役立たずなのに14年間働き通した人もいる中で、キャシーの仕事ぶりが気に入られていたのは確か。キャシーが介護した提供者たちの回復ぶりは、みな期待以上だったのです。6年ほど働いた時に介護する相手が選べるようになったキャシーは、親友のルースとトミーをはじめとする自分が生まれ育った施設・ヘールシャムの仲間に再会することになります。そんなキャシーがヘールシャム時代のこと、そしてヘールシャムから卒業した後のことを回想していきます。

「提供者」「介護人」といった言葉。そして一見普通の生活に見えるけど、どこか普通と違う「ヘールシャム」の施設の話。もしや... という予感が正しかったことは、徐々に明らかになっていきます。ヘールシャムの生徒たちが「教わっているようで、教わっていない」のと同じような状態ですね。トミーの言う「何か新しいことを教えるときは、ほんとに理解できるようになる少し前に教えるんだよ。だから、当然、理解はできないんだけど、できないなりに少しは頭に残るだろ? その連続でさ、きっと、おれたちの頭には、自分でもよく考えてみたことがない情報がいっぱい詰まってたんだよ」... 違うことに注意をひきつけておいて、その間に他の内容を忍び込ませるというのは、当たり前のことなのかもしれないけど、なんかスゴイな。
何についての話なのかは、読み始めて比較的すぐに見当がついてしまうんですけど、終始淡々としているキャシーの語り口が逆に哀しくて、怖いです。やっぱりカズオ・イシグロはいいですね。それでも一番最初に読んだ「日の名残り」が一番好きだったなとは思うのだけど。(ハヤカワepi文庫)


+既読のカズオ・イシグロ作品の感想+
「日の名残り」カズオ・イシグロ
「遠い山なみの光」カズオ・イシグロ
「わたしたちが孤児だったころ」カズオ・イシグロ
「浮世の画家」カズオ・イシグロ
「私を離さないで」カズオ・イシグロ
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カズオ イシグロ 「わたしを離さないで 」 1990年代末のイギリス。十一歳だったキャシー・Hは、ジュディ・ブリッジウォーターの『夜に聞く歌... » Lire la suite

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凄さで言うと、この『私を離さないで』が凄いな~と思うんですけど、
もう一度読み直した『日の名残り』はしみじみと良い物語だったんだ
なぁ、と思いました。
あれもまた本当は哀しいし、取り返しのつかない話でもあるんだけど、
ラストのジョークの練習を決意しようとするところとか、ある意味、
明るい結末でしたもんねえ。
『私を離さないで』は、とにかく色々な感情を揺さぶられる作品だった
なぁ、と思います。

カズオ・イシグロの作品を読むたびに
自分が「日の名残り」と比べてることに気付きました、私。
この作品も凄いなとは思うんです。
ほんと凄いですよね。
でも「日の名残り」の方が、読んだ後にぐぐっときたなーって。
んんー、もっと普通だったからなのかも。
なんていうか、すごい基本を見せ付けられてしまったというか。(意味不明)

でもこれも良かったですね。
最後にくるものが分かりながらも、ずぶずぶとはまり込んでしまう…
一気に読んでしまいましたよ。途中でやめられないですね。

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