「マーティン・ドレスラーの夢」スティーヴン・ミルハウザー

Catégories: / /

 [amazon]
19世紀末。葉巻店主の息子として生まれたマーティン・ドレスラーは、9歳の時に既に葉巻やパイプ、煙草に関する知識を十分持ち、客の気質を素早く見抜いてはぴったり合った品を勧めるのを得意としていました。人々はマーティンを気に入り、その判断を信頼していたのです。やがてヴァンダリン・ホテルの早番フロント係のチャーリー・ストラトマイヤーに、ホテルのロビーの葉巻スタンドでは売っていない高級パナテラ葉巻を毎日届けることによって、ビジネス上の初の成功を収め、14歳の時にマーティンはヴァンダリン・ホテルのベルボーイとして働くことになります。

今回主人公として描かれているマーティン・ドレスラーという人物像自体は、ミルハウザーが描いているほかの人物たちと基本的に同じ。自分の興味の対象に打ち込んで、素晴らしい作品を作り上げるというのも同じ。でもマーティン・ドレスラーは芸術家じゃないんですよね。アウグスト・エッシェンブルクやJ・フランクリン・ペインと同じように確かに職人気質なんだけど、マーティン・ドレスラーが作り出すのは時代を先取りするようなカフェレストランでありホテルであり、決して自動人形や絵画やアニメーションではないんですよねえ。そしてもう1つ違うのは、彼には全面的にお膳立てを整えて後押ししてくれる人間がいないということ。そういう人間の存在によって、アウグスト・エッシェンブルクやJ・フランクリン・ペインは自分の作り出す芸術品に没頭していればそれで良かったんだけど、マーティン・ドレスラーは自分が作り出す立場でもあり、全面的にお膳立てを整える立場でもあり、なんですよね。その都度パートナーはいるんだけど、気がついたら去っていってしまっていて。
いつものようにミルハウザーらしさを堪能できたし、今回は長編のせいかマーティン・ドレスラーの感情の移り変わりもいつも以上に濃やかに描かれていたんですけど、やっぱりどこか違うなあって気も...。いつもと同じような人物造形だけに、生み出すものに期待してしまうのかな。レストランやホテルというのがリアルすぎるんですよね、多分。あまり夢みる対象にはならないからかも。(白水uブックス)


+既読のスティーヴン・ミルハウザー作品の感想+
「イン・ザ・ペニー・アーケード」スティーヴン・ミルハウザー
「バーナム博物館」スティーヴン・ミルハウザー
「三つの小さな王国」スティーヴン・ミルハウザー
「マーティン・ドレスラーの夢」スティーヴン・ミルハウザー

| | commentaire(0) | trackback(0)

Trackbacks(0)

「マーティン・ドレスラーの夢」スティーヴン・ミルハウザー へのトラックバック一覧:

URL TrackBack de cette note:

コメントする(要JavaScript)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.