「おばあさん」ネムツォヴァ

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とある山村に住んでいたおばあさん。3人の子供たちは既に独立しており、おばあさんはばあやと2人で小さな家に何不自由なく暮らしていました。おばあさんにとって村人たちはみな兄弟姉妹であり、村人たちにとっておばあさんは、お母さんであり相談相手。全然寂しくなどなかったのです。ところがそんなある日、ウィーンにいる娘から手紙が舞い込みます。それは、娘の夫が仕える公爵夫人の領地に一家で移ることになったので、ぜひ一緒に住んでくれないかというもの。おばあさんは迷った挙句、結局そこに移ることを決意します。

amazonのリンク先は岩波文庫ですが、私が読んだのは岩波少年文庫版。岩波少年文庫版、amazonにはないんですー。1956年出版という本だから無理もないですが。岩波文庫版も1971年なので、いずれにせよ古いですね。岩波文庫では作者名がニェムツォヴァー。同じ方が訳してらっしゃるので、きっと中身は同じだと思いますが。

あとがきによると、ニェムツォヴァーはチェコの近代小説の基礎を作ったと言われる作家。この「おばあさん」はチェコでは最も愛読されている作品で、チェコ人でこの本を知らない人はいないとまで言われるほどの作品なんだそうです。という私がこの本を知ったのは、45回目のたら本「ご老体本。」のkyokyomさんの記事から。カフカやカレル・チャペックにも影響を与えたらしい、なんて聞いたら読まずにはいられませんとも! でも実際に読んだ感触としては、むしろ思い出したのはシュティフター。この淡々とした語り口、淡々と流れていく日常。調べてみると同時代の人だし! しかもシュティフターはオーストリアの作家だと思ってたんですけど、どうやら生まれはチェコみたい。そうなんだ!(その頃のチェコはオーストリアの属国だったんですね)

そしてこの作品は、ニェムツォヴァーが本当に自分のおばあさんのことを書いた作品なんだそうです。細かい部分は色々と変えられてるし、おばあさん像も実際よりもさらに理想化されているようですが♪
嫁いだ娘の家に住むようになり、忙しい娘に代わって家の中をやりくりするようになるおばあさん。孫たちには自分の若い頃の話や沢山の物語を語って聞かせ、孫たちはその物語の中から自然と人間として生きていく上で大切なことを学んでいくんですね。特別なことが書かれているのではなくて、ごく平凡な日々の描写の方が断然多いです。チェコの農村風景がまた良くて~。でも一番印象に残ったのは、戦争中におばあさんが夫を失った後の話。プロシア王に留まることを勧められ、子供たちに立派な教育を約束されながらも、おばあさんは故郷に帰ることを選ぶんです。そして本当に苦労して故郷に帰るんですけど、それは子供たちがチェコ語を失わないようにするため。...たとえばアゴタ・クリストフの作品を読んでいても、母国語というのはとてもポイントとなる部分ですよね。一度ヨーロッパが戦乱の渦に巻き込まれたら、いつ国も言葉も失ってしまうか分からないんですものね...。そして先日読んだ「カモ少年の謎のペンフレンド」のお母さんのように、10ヶ国語を操るようになったりするわけで。この辺りは、いくら日本人の私が分かったつもりになってても、本当に実感として感じるのは難しい部分なんでしょうけれど。

あー、なんだか無性にシュティフターが読みたくなってきた! シュティフターは3冊か4冊読んだんだけど、あと何冊あるんだろう? 全部読みたい! シュティフターの作品はそれこそ普通の人々の普通の日々の話ばかりなので、その時代にはつまらないと評判悪かったそうですが~。自然描写が本当に美しくて、大好きなんです。(岩波少年文庫)

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Commentaires(6)

四季さん、こんにちは!
そうそう、だいたいにおいてこういう平穏に進む小説というのはそれはそれで起伏に富んだ物語とはまた違った味がありますよね。
もっとこう、なんてことのない日常生活をくっきりはっきり見えてくれるようにしてくれるというか、それほどドラマチックでもない自分の普段の生活だって捨てたものじゃないんだって。
実際本があることで喜びに触れています。本は読んでも読んでも読みつくすことがないから死ぬまで楽しめるのは嬉しいといえば嬉しいです。同時にすべてを読めないであろう悲しみも同居しているのですがそれは贅沢な悲しみでしょうか。

あ、シュティフター見つかりました!
なんかですね、四季さんのところで過去の感想を拝見して、で、「晩夏」の二文字を目にしてなにかがパッと点灯しました、脳内で。
で、今日はブコフも寄ったし図書館にも寄ったけど晩夏は見つからなかったのです。
で、ひょっとしたら・・・と思って自分の部屋のダンボールを開けてみたら・・・あった、、、ありましたー!!
報告以上です^^

kyokyomさん、こんにちは。
ページターナーと言われるような起伏に富んだ作品も楽しいんですけど
私の場合、パパッと読んでパパッと忘れてしまうことも多いので…(^^ゞ
こんな風に1ページずつ大切にめくれる作品は、今の自分の気持ちにも合ってるし
実際とても良かったです。ほんとしみじみと味がありますよね。
ああー、死ぬまでにあとどれだけ本を読めるんでしょうね!
でもね、今はどんどん未読の本に手を出してるんですけど
もっとずっと年をとったら、大好きな本を何度も繰り返し読むようになると思うんです。
今は日々楽しみつつ、その時に読み返したい作品を探してる時期のような気もします。

シュティフター、ありましたか♪
「晩夏」、いいですよ~。上下巻と長いのにそれこそ何も起きないので
この作品を終わりまで読み通した人にはポーランドの王冠を進呈しよう、なんて
酷評されたこともあるそうですけど、それこそ読んでること自体が幸せになるような本です。
という私の一押しは、岩波文庫から出てる「水晶 石さまざま」なんですが
これは今は入手できなくなってるみたい…
どこかで見かけたら、ぜひ連れて帰ってあげてください。(笑)

四季さん、こんにちは。
シュティフターを読みたくなるような作品だなんて、興味ありますよ!
それにしても、シュティフターの訳書はいろいろあることはあるんだけど、メジャーどころの出版社からではないので絶版ばかりでなおかつ図書館にもない、なんてことばかりなんですよね。
そんななかで『晩夏』がちくまから出ているというのは喜ぶべきことではあるものの、続けて他の作品(特に長編)も読みたいなと思う読者にとってはちょっと困ってしまいますね。
それでも今年の5月に松籟社というところから『森ゆく人』という中篇だか長編(未読です)が出ているみたいです。ここからは『石さまざま』の全訳も出ているみたいで、がんばってほしいです。
ほかに常々読みたいなと思っているのは『ヴィティコー』という中世のチェコ、ベーメンを舞台にした叙事的長編小説なんです。でも当然のように絶版、図書館にも無いという有様なんですよね……
ビーダーマイアーというキーワードとともにもっと知りたいなといつも気になっている作家だけになんとももどかしいです。

nyuさん、こんにちは!
ほんとシュティフターが読みたくてたまらなくなりましたよ。
古い本なので図書館でも難しいかもしれないですが、もしあったら手に取ってみてください。
でも「おばあさん」はチェコの国民的文学となってるのに
同じ時代のシュティフターはなんでそんなに評判悪かったんだ…?なんて思ったり。(笑)

あ、そうなんですよね、松籟社。私も「石さまざま」の全訳が出てる~読みたい~とは思っていたのです。
なんと知らないうちに新刊まで出ていたとは! 「森ゆく人」ですか。
それはぜひ読んでみたいなあ。教えて下さってありがとうございます。
うわあ、「ヴィティコー」も気になります。でもうちの方の図書館にもやっぱりありません…
とりあえず、図書館にあるシュティフターの本に未読の作品もあるようなので、そちらから読んでみます。
ビーダーマイアー、かなり好きかも♪

改めまして、asaichiharuと申します。コメントありがとうございます!
Googleロゴのおばあさんの笑顔がとっても素敵だったのは
お話が素敵だからなんだと、こちらを拝見して分かりました。

きっと明日の朝ぐらいまでは、トップのロゴが変わったままなので、
ぜひGoogleチェコをご覧になって下さい~
http://www.google.cz/

ではおじゃま致しました。

asaichiharuさん、こんにちは。こちらまでありがとうございます。
Googleロゴのおばあさん、ほんと素敵ですね。
何でも受け止めてくれそうな大きな優しさを感じます。
残念ながら、朝見た時はもうロゴが普通のに変わっちゃってたんですけど
asaichiharuさんのところで見られて、本当に良かったです!

お話はほんと素敵なので、ぜひ図書館で探してみてくださいね。
大きなことは何も起きないし、ほんと淡々とした日常の情景なんですけど
しみじみと心に染み入ってくるような気がするお話です。^^

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