「絹」アレッサンドロ・バリッコ

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19世紀末。エルヴェ・ジョンクールは、20年かけて南仏の町・ラヴィルデューを養蚕の町にしたバルダビューに誘われて、蚕の卵の売買の仕事を始めることになります。しかしやがてヨーロッパの養蚕農家は疫病に悩まされるようになり、その疫病はじわわと全世界に及ぶのです。蚕の卵が疫病に冒されていないのは、世界中で日本だけ。32歳のジョンクールは、最近まで鎖国をしていたという日本へと向かうことに。

絹を生み出す蚕、そしてそれを巡る人々の物語。
まず「日本の読者へ」という序文があって、ここに描かれている日本は西洋人の空想の中に存在する日本だと書かれていました。日本人に読まれることを想定しないで書いたので、日本人にとってはあり得ない姿かもしれないし、登場する日本語の名前に抵抗を感じるかもしれない、と。確かにここに描かれているのは、西洋の映画に登場するようなエキゾティックな日本の姿。でもハリウッド映画の「フジヤマ・ゲイシャ」じゃなくて、もっとしっとりと静かな雰囲気なんですよね。だから私は逆に、イタリア人の思い描く「幻想の日本」として結構楽しめたかも。「ハラ・ケイ」なんて名前が出てくるたびに、妙に反応してしまうんですが。(笑)
そしてバリッコがその「ハラ・ケイ」という名前を使ったのは、言葉の響きがとても好きだったからなのだそう。それも含めて、全体的にそういう感覚的なものをすごく大切にした作品なんですね。訳者あとがきに、作者が「物語がひとりでに透けて見えてくるようにしたかった」と語っていたとある通り、ものすごく光を感じる物語でした。太陽の光をそのまま仰ぎ見るのではなくて、ごくごく薄い絹の布ごしに感じる光。(ん? なんだか几帳のような... ああ、「窯変源氏物語」が私を呼んでいる!) 文章もまるで詩を読んでいるようで音楽的だし(バリッコは実際、音楽学者でもあるらしいです)、そんな文章で描かれた場面場面はとても幻想的。特にハラケイの家を訪れて美しい女性に出会う場面は、まるで夢の中の一場面のようです。話がどうこういうよりも、感覚的に楽しむ作品なんだろうな、きっと。(白水uブックス)


+既読のアレッサンドロ・バリッコ作品の感想+
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「絹」アレッサンドロ・バリッコ

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Commentaires(2)

映画『SILK シルク』の原作ですね。
サカモトがサントラを担当したので、原作を読まずに観にいきました。
映画もどちらかというと幻想的でした。
さて、いつになったら原作を読めるやら(^_^;

美結さん、こんにちは。
あ、そうです、映画の原作です。幻想的でしたかー。
あくまでも想像なんですが、この作品、イタリア語で音読したら
すごく美しい作品なんじゃないかなーと思うんですね。
となると、その美しさがどのぐらい日本語の訳に表れてるのか…
詩を訳すぐらい難しそうです。

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