「充たされざる者」カズオ・イシグロ

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著名なピアニストのライダーは、長旅を終えてとある町に降り立ちます。ライダーの名前を聞くだけで、態度が丁重になる町の人々。どうやら町は何らかの危機に面しており、ライダーがその救世主と見なされ、大きな期待をかけられているようなのですが...。

ハヤカワepi文庫はほとんど全部読んでるんですけど、これは読み始めるまで随分長いことかかっちゃいました。なんせ1000ページ近くある煉瓦本。もちろん京極さんの方がもっと分厚いですけど、あっちは私はノベルスで読んでるし、ノベルスは本そのものが大きい分、形状的にはもう少し読みやすい! もう、読んでる途中で何度本を落としそうになったことか。なんでこういう本を上下巻にしないのかしら? 単行本の時は上下巻だったみたいなのに。
というのはともかく。

どうやらイギリス出身で、ドイツの小さな町に演奏旅行に来たらしいピアニストのライダー。初めて訪れた町のはずなのに、話している相手の顔に見覚えがあるような気がしてきたり、実際にその人間のことを知っていたりします。町にはライダーの妻や息子までいる...? そして時には昔の知り合いが現れることも。町の住民は皆一様に彼がライダーだと知ると大歓迎。みんながライダーと話したがるし、先を競って丁重にもてなそうとします。でも丁重に厄介ごとも持ち込むんですよね。そしてライダーがその場その場で相手に話を合わせているうちに、話はどんどんややこしくなっていきます。そもそもライダーはかなりのハードスケジュールらしいのに、自分のスケジュールを全然知らないどころか、演奏する曲も決まってません。きちんと世話役の女性が出迎えて、何か不満や疑問がないか確かめるのに、なぜかスケジュールをまるで把握してないとは言い出しにくい雰囲気。
とにかくこの世界は不条理でいっぱいで、まるで夢の中にいる時みたい。「不思議の国のアリス」状態です。でもライダーはその不条理をあんまり気にしてないんですよね。その場その場でライダーが選び取る行動が、この世界での事実となって積み重なっていくような...。
「充たされざる者」なのはライダーのことなのかと思いきや、町の住民は揃いも揃って「充たされざる者」でした。しかも彼らのやり取りを読んでいる読者もまた、読んでる間にすっかり「充たされざる者」になってしまうし。まるで他人の悪夢の中に紛れ込んでしまったような感覚の作品。読後感としてはまず「長かった~」なんですが、面白かったです。訳者あとがきを読んで、マトリョーシカには納得。確かに!(ハヤカワepi文庫)


+既読のカズオ・イシグロ作品の感想+
「日の名残り」カズオ・イシグロ
「遠い山なみの光」カズオ・イシグロ
「わたしたちが孤児だったころ」カズオ・イシグロ
「浮世の画家」カズオ・イシグロ
「私を離さないで」カズオ・イシグロ
「充たされざる者」カズオ・イシグロ

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Commentaires(3)

本屋で手に取り、京極堂より重くて躊躇しました。
マトリョーシカに言葉に心惹かれます。
じっくり味わう読書になりそうですね。
年が明けてから、たっぷり時間を用意して読みたいな。

はじめまして。
すごい読書量ですね~。
好きな作品が多いのでじっくり読ませていただきました。
カズオ・イシグロさんのこの作品は私も読みました。
他の作品と比べると話が入り組んでいて、おっしゃるとおり上下巻にしてくれればと読書中に何度も思いましたね。
もしてして、ここが早川書房の狙うところだったりなど考えてしまいました(笑)。

>美結さん
ほんと重くて読みにくかったです!
なんと京極本よりも重かったですか。いやーん。
あ、マトリョーシカは作中には出てこない言葉なんですけどね。
読み終えてみると確かにそうだなあと思いましたよ。
とにかく長いし、私はかなり休み休み読みました…
たっぷり時間がある時に、ゆっくりのんびり楽しんでくださいませ♪


>7kichiさん
はじめまして! コメントありがとうございます。
わあ、読んでる本好きな本が結構重なってますか?
あとで、7kichiさんのブログも拝見させていただきますね。楽しみ!

この分厚さは、早川書房の狙うところだったんですかねえ。
私が思ったのは、epi文庫それぞれに振ってる番号を間違えたせいで
上下巻にできなかったのかな? ということでしたが…
さすがにそれはないですかね?(笑)

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