「冬の夜ひとりの旅人が」イタロ・カルヴィーノ

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新聞でイタロ・カルヴィーノの新しい小説「冬の夜ひとりの旅人が」が出たのを知り、早速本屋で買ってきて読み始めようとしている「あなた」。しかし準備万端整えてじっくり読む体勢に入り、読み始めてしばらく経った時、妙なことに気付きます。製本のミスで、32ページから16ページに戻っていたのです。3箇所で32ページから16ページに戻るのをみつけた「あなた」は、翌日本屋で取り替えてもらおうとするのですが、本屋はその本はカルヴィーノの作品ではなく、実はポーランド人作家の小説だったと説明。続きを読みたい「あなた」は、その本をポーランド人作家の小説に取り替えてもらうのですが...。

カルヴィーノの作品を読んでいると思っていたら、それは実はポーランド作家の作品だった? そしてポーランド小説の続きを読もうと思ったら、その本は全然続きなどではなくて、チンメリア文学だった...? と、迷路の中にぐるぐると迷い込んでいくような、蜘蛛の巣に絡め取られていくような、蟻地獄に落ち込んでいくような感覚の作品。作中作がなんと10作! どんどん出てきて、でもどれも丁度話の中に入り込んだ頃に途切れちゃう。でもそれの作中作がまた面白いんですよねえ。どの話も続きを読みたくなっちゃうんですもん。

でも一番面白かったのは、終盤で何人かの読者たちが語ってる言葉。私はこれに一番近いかも。

私が読む新しい本のひとつひとつが私がそれまでに読んだいろんな本の総計からなる総体的な統一的な本の一部に組み込まれるのです。でも安易にはそうなりません、その総括的な本を合成するには、個々の本がそれぞれ変容され、それに先立って呼んだいろんな本と関連づけられ、それらの本の必然的帰結、あるいは展開、あるいは反駁、あるいは注釈、あるいは参考文献とならねばならないのです。何年来私はこの図書館に通って来て、本から本へと、書棚から書棚へと渉猟しているのですが、でも私は唯ひとつの本の読書を押し進める以外のことはしていなかったと言えましょう。(P.344-355)

ちょっと訳が如何なものかという感じもしますが...
これだけじゃないですけどね。前の読者が言ってるように再読で新たな発見をするというのもほんと分かるし。でも私の基本は、次の読者が言っているような記憶の彼方にかすかに残る「唯ひとつの本」を目指して、総括的な本を作り続けているような感じかな。(ちくま文庫)


+既読のイタロ・カルヴィーノ作品の感想+
「宿命の交わる城」イタロ・カルヴィーノ
「不在の騎士」イタロ・カルヴィーノ
「レ・コスミコミケ」イタロ・カルヴィーノ
「なぜ古典を読むのか」イタロ・カルヴィーノ
「まっぷたつの子爵」「木のぼり男爵」イタロ・カルヴィーノ
「イタリア民話集」上下 カルヴィーノ
「魔法の庭」イタロ・カルヴィーノ
「見えない都市」イタロ・カルヴィーノ
「マルコヴァルドさんの四季」カルヴィーノ
「冬の夜ひとりの旅人が」イタロ・カルヴィーノ
「柔かい月」イタロ・カルヴィーノ
「カルヴィーノの文学講義」イタロ・カルヴィーノ
「パロマー」カルヴィーノ
「くもの巣の小道」イタロ・カルヴィーノ
「むずかしい愛」カルヴィーノ

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 実は昨年買ったまま(もったいなくて)積んでいた作品。一年以上積んでた甲斐あって(?)ありえないくらい素晴らしい傑作だった。  今年... » Lire la suite

Commentaires(7)

うわー数日前から読んでいるのに、四季さんに先を越されてしまったー!w
今日中にはわたしも読み終わりそうです。
読み始めて意外な展開にクラクラしています~。w

ふっふっふ、お先に読み終わらせていただきました~。
年内には読みたかったんです。
この作品も面白いですよねえ。このクラクラ感はクセになりそうです♪
ちょろいもさんの感想、楽しみにしてますね。^^

いや~、これも大傑作ですよね~。
メタフィクションならぬメタ読書。
世界文学の傑作のスタイルを模した10作もの作中作。
アイディアの素晴らしさと、投入された物量の豊富さに驚かされます。

ふだんはじらされるのなんてまっぴらごめんですが、これは許せます。
本読みにはたまらない一冊ですね。

日本人作家が書いたのも中にあって、
題材がいたのかどうか気になるところです。
まっさきに思い浮かんだのは谷崎でした。

四季さんが未読のカルヴィーノだと「パロマー」がおすすめかもしれないし、
まったくおすすめできないかもしれません。
方法論が先走ってしまって肝心の中身が全くおもしろくないところがすばらしいです。
(でも、これも日本語訳が難ありで、著者の意図がぼやけてしまっています)

うわぁ、読んでみたいです!

総括的な本…こういう発想だけでも幻惑されるようです。
"ある意味では、すべてのものは他のすべてのものの注解として読むことができる。"
というポール・オースターの本の一節を思い出しました。
(『孤独の発明』/「記憶の書」より)
(cf. ttp://www12.atwiki.jp/liquidfish/pages/724.html)

わあ、カルヴィーノ人気はすごいですね。

>piaaさん
いや~、ほんと面白かったです。
実はこの世界に入り込むまでちょっと時間がかかってしまったんですが
一旦入り込んでからは、読んでいること自体がほんと楽しくて。読み終えたくなかったです…!
今年読んだカルヴィーノでは今まで「見えない都市」がダントツだったんですが
これも素晴らしいですね。双璧となりました。


>kotaさん
もうほんとたまらなかったです~。すごいですよね。
こんなの他の作家さんにはちょっとできないよなあって、しみじみ。
あ、あの日本人作家のとこ、私も思い浮かべたのは谷崎でした…!
ということは、本当にそうなのかも。
10作とも、カルヴィーノの中ではモデルがあったのでしょうか。
それぞれに思い浮かべる作品はありましたが… 合ってるのかは謎。
(そもそも私が知ってる限られた範囲に当てはめるには難がありますし・笑)

「パロマー」、ぜひ試してみますね。
どんな感じなんだろう… わくわく。

>liquidfishさん
ぜひぜひ、読んでみてください。
私はそのポール・オースターの「記憶の書」を読んでみたいです。
そう、本当にすべてのものは他のすべてのものの注解なのかもしれませんね。
うわ、ほんと読んでみたいです。
教えて下さってありがとうございます。^^

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