「ねじの回転」ヘンリー・ジェイムズ

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夜になると暖炉のまわりに集まり怪談に聞き入る人々。その時「子供に幽霊が出たという話は初めてだ」という意見が出たことがきっかけとなって、ダグラスがかつて聞いた、2人の子供に幽霊が出たという話になります。それはかつてダグラスの妹の家庭教師だった女性の体験談。彼女は既に亡くなっているのですが、死ぬ前に、初めて家庭教師をした屋敷で起きた出来事を原稿に書き、ダグラスに送ってきていたのです。それはサセックス州にある田舎の屋敷で、両親を既に亡くした2人の子供、フローラとマイルズの家庭教師をした時に起きたことでした。

恩田さんの「ねじの回転」を読んだ時から気になってはいたんですが、幽霊物と聞いてちょっと躊躇... ひなたでゆるりのリサさんが高校生の頃から大好きな本と伺って、それに背中を押されてようやく読めました。ヘンリー・ジェイムズってアメリカの作家さんかと思ってたんですけど、イギリス的ですねえ! と思ったら、生まれはアメリカだけど子供の頃からイギリスやフランスに何度も行ってるし、最終的にはイギリスに住むことになったと知って納得。読んでる間、中学生の頃に読んだシャーロット・ブロンテの「ジェーン・エア」を思い出して仕方なかったんです。

メインの幽霊話は実際にその体験をした家庭教師の女性の1人語り。雇い主の男性と会った頃から、既にちょっぴり不穏な空気が漂ってます。たとえ何が起きても、その男性に苦情は入れないという約束。そして子供たちのいる郊外の屋敷へ。初めての家庭教師の仕事に緊張する彼女。でも天使のように可愛い子供たちにすぐに夢中になってしまいます。最初はすごく上手くいくんです。家政婦の夫人ともすっかり親しくなるし。でも亡霊たちが現れた頃からだんだん歯車が狂ってきて... 彼女は亡霊たちから子供たちを守ろうと奮戦するんですが...
でもね、1人語りですしね。どこからどこまで本当なのか分からないんです。不穏な目で見ると全てが不穏に見えてくるし、まるで世界が崩壊していくのを目の当たりにしてるような感じなんだけど。そしてこの彼女がだんだん追い詰められていく様子がすごく面白かったんだけど!

ただ、訳文がちょっと。これがもっと自然な日本語なら、もっと楽しめたんだろうなあ、と思ってしまいます。でもね、例えば中学の時に「ジェーン・エア」を読んだ時も、もしかしたら訳文はあまり、だったのかもしれない、なんて思うんですよね。その頃はそんなことは全然気にせず、物語の勢いに夢中になってたのだけど... いつの間にかそれができなくなってるというのは、自分が文章を見る目が少し磨かれたということでもあるんでしょうけど、でもやっぱりちょっと悲しいな。(新潮文庫)


+既読のヘンリー・ジェイムズ作品の感想+
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Commentaires(6)

これ私も大好きです。

結局、他人に判らないものは判らない、ってところがいいです。

いろんな解釈ができる、意図的に曖昧にした小説、
というのが一般的な評価です。
(もちろん今でも研究と論争は続いているのですが)
でも私は、読者それぞれに委ねる曖昧な感じではなく、
「こういうことは第三者には判断できないのだ」
ってことを書いているように思えました。
意識の流れとかホラーとか、そんな括りに入るものではありません。

たとえそれが幻覚だとしても、当の本人には見えていたわけですし。
そして幽霊が実在するか否かなんて、今でも判っていません。
フィクションなので何でもありなわけですが、
幽霊がいる(可能性のある)作品世界、という先入観で臨むと、
ややこしいことになってくるような気がします。
これはフィクションの罠で、これもまた見事です。

タイトルも秀逸ですね。

岩波文庫版の行方昭夫訳が私はいちばんしっくりきました。
訳者あとがきも丁寧です。

雑誌「幻想文学」が廃刊になってさびしいですね。

kotaさん、こんにちは!
家庭教師の女性の雇い主の男性への恋心もイミシンですよね。
ダグラスの話っぷりが思わせぶりな割に、実際には直接関係ないんですけど
でもやっぱりちょっと影響してたりするのかなって。

>「こういうことは第三者には判断できないのだ」
ああ~、なるほど~。それはストレートですね。でもほんとそうなのかも。
彼女にとってはあれが真実の物語だったんですものね。
…他の使用人の視点からはどう見えてたのかな?
…あの子供たちの視点から見ると、どんな物語になるんだろう?
なんて考え始めると、それがまた楽しいですが♪

これはきっとものすごく研究し甲斐のある作品なんでしょうね。
心理学的な分析をする人も多そうですね。

本屋に岩波文庫版も創元SF文庫版もなかったので
安易に新潮文庫版を選んでしまったんですが、これはちょっと失敗でした。
創元の方でも南條竹則さんだからハズレはなかったでしょうに…
最近、やっぱり岩波かなあって感じになってきてます。安心して読めるのが多いような。
一昔前のはフォントが苦手だったんですけど、最近のは大丈夫ですし。
やっぱり今度リベンジしようっと。

「幻想文学」、ほんと残念です~!!

私見におつきあいいただきありがとうございました。

心理学による分析は戦前まで主流でした。
でもフロイトが看破されたと同時にこっぱみじんになった覚えがあります。
って、そんなこと書きに来たわけじゃなく、
私も一昔前の岩波文庫は苦手でした。
フォントではなく、版がつぶれてしまってるのに刷り続けてるのとか、
組み方が考えられていないといった読みにくさからです。
(私が苦手なフォントは講談社文庫です)

岩波の「ねじの回転」は1ページ16行で、読みやすいです。
「デイジー・ミラー」のほうが先になっていて、
キリスト教や性や階級など、当時の価値観を把握しておいて、
いよいよねじの回転に入る、という順番も良いです。
創元文庫はなかなかホラーチックな感じで、
それもまた悪くなかったですよ。

映画化もされていますので観てみるといいかも、と思いましたが、
私が気に入っているのはマーロン・ブランド主演の前日譚のほうでした。
視点を変えると黒澤映画の羅生門みたいになおさら真実が遠のくかもしれませんね。
と書いたら、ジョン・ファウルズ「コレクター」を思い出しました。
きりがなくなっちゃいそうなのでこのへんで。

kotaさん、こんにちは!
いえいえそんな。私見を聞かせて頂けるのはとても興味深いです。
あらら、今は心理学による分析はこっぱみじんでしたか。
あの亡霊が家庭教師の内面を投影してるとか何とか色々ありそうだと思ったのに
こっぱみじんとは。(笑)
あー。岩波のあれはフォントの問題ではなく、版が潰れてるってことだったんですね。
あれはほんと読みにくかったなー。
講談社文庫は、フォントが大きめのせいでびっしり詰まってる感じがしますね。
新聞が大活字になった時も読みにくく感じたけど、同じようなものですね。

あ、この作品の映画は「回転」ですよね。デボラ・カーの。
デボラ・カーは結構好きなので(古い白黒映画も好きなので)
見てみてもいいかなあと思ったんですが
マーロン・ブランドの前日譚なんていうのもあったんですか!
それは知りませんでした…(検索中) あ、これですね、「妖精たちの森」。
前日譚ということは、死んだ家庭教師と下男ですか。
これもまた1つの解釈。という映画なんですね。面白そうー。

「コレクター」は、映画も見てないし本も読んでないんですが
先日イギリスの階級制度に絡めて説明してる本を読んだとこなので
そのうち読んでみようと思います。「デイジー・ミラー」は近いうちに!

四季さん、こんにちは!
『ねじの回転』読まれたのですね!今更のコメントでごめんなさい。
しかも、ご紹介までして下さって~。照れながらも喜んでおります(*^-^*)
1人語りってところが不穏さや恐怖感をそそりますよね。
もしかしたら語り手の精神状態が崩壊しているかもしれませんし、本当のところはわからない。この曖昧さがやはり絶妙で私の好みに合いました。
でもでも!読んだのが遠い昔。当時は訳に引っかかることもなく極自然に読んでいたのですが、四季さんの感想読んでもしかしたらかえってそれが良かったのかなぁ、と。
今読み返したら違和感ありまくりかもしれませんね。
そんな違いを辿りながら再読するのもいいかも!と再読する気満々です。

リサちゃん、こんにちは~。
いえいえ、本当は読んだことをお知らせしようと思ってたんですけど
丁度リサちゃんがバタバタされてる時期に重なってしまっていたので…
岩波文庫版でもう一度読んだら、その時にお知らせしようと思ってたんです。
前の記事なのに気付いて下さって、ありがとうございます~。(嬉)

ほんと、この1人語りってとこがいいですよね。
こうなってしまうと、真実がどうだったかってあまり問題じゃないんですね。
ここに書かれていることが彼女にとっての真実だから。
いや、もうすごい絶妙だな~と思いましたよ。すごいですね!
リサちゃんがお好きだと仰ってるの、ものすごく分かりましたよ~。

持ってらっしゃる本は新潮版ですか?
今読んだら、もしかすると「あれ?」って思われるかもしれないですね。
でもだからこそ、そう思わない時期に読まれてるのが羨ましいです。
今ってちょっとしたことでひっかかってしまってたりするけど
本当は、文章の良し悪しなんかに負けない物語のパワーってあると思うんですよね。
そのパワーにひたすら圧倒されてた頃に戻りたくなっちゃいます。(^^ゞ

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