「タンホイザー」リヒャルト・ワーグナー

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愛の女神・ヴェーヌスの美しい洞窟。ヴェーヌスは薔薇色の光が漏れる洞窟の豪華な臥所に身を横たえ、タンホイザーはそのかたわらに寝入っています。周囲では妖精たちや人々による歓楽の情景。しかしその歓楽の宴が終わって目覚めた時、タンホイザーはヴェーヌスのもとを去る決意を固めていたのです。それは夢の中で耳にした教会の鐘の音がきっかけ。タンホイザーは、ヴェーヌスの寵愛を受ける今でも自分が死すべき人間であることに変わりはないこと、森や草原、空、鳥、教会といった地上のもの、そして自由を求めていることを語ります。

ワーグナーによるオペラ「タンホイザー」。タンホイザーは13世紀のドイツに実在した詩人。ヴェーヌス(ローマ神話の愛の女神・ヴィーナスね)の洞窟で永年過ごし、ある時に悔い改めるつもりでローマ法王のもとに行くのですが赦しを得られず、再びヴェーヌスの洞窟に戻ったという伝説があるんだそうです。なぜヴェーヌスが洞窟にいたのかといえば、キリスト教がヨーロッパに広まるにつれて、神話の神々は厳しい弾劾を受けるようになり、それを避けるために地下に宮殿をかまえたから。そして、それとはまた別に、テューリンゲンのヴァルトブルクの城で行われた、詩人たちによる歌合戦の伝説もあるんだそうです。ノヴァーリスの「青い花」(感想)の主人公・ハインリヒ・フォン・オフテルディンゲンもこの歌合戦に参加してたんだとか。そしてワーグナーがこの2つの伝説を結びつけて、「青い花」のハインリヒをタンホイザーに置き換えて書いたのがこの作品。

話の雰囲気とか、エリザーベトの清らかな愛情、タンホイザーの迷いなんかはいいんですけど... これじゃあ、ヴェーヌスが可哀想。ヴェーヌスの愛情が本物だったという線も十分あり得ると思うのに、ここではあくまでもキリスト教に対する異端の魔女的に描かれてるんですよね。まるで魔法でタンホイザーを誑かしたみたい。でもそれは違うでしょ...? と言いたくなるのは、私が神話好きだからでしょうかー。いや、実際にはこうしか書けないんでしょうけど。最後の姿が哀しいです。
「ニーベルンゲンの指環」の4冊はアーサー・ラッカムの挿絵でしたが、こちらは東逸子さんの挿絵。新書館のこのシリーズはどれも美しいですね。他のワーグナー作品も今度読もうっと。そしてこの本を読んでる時にたまたまリストのCDをかけてたんですが、最後にタンホイザー序曲が! そうだった、忘れてたー。...というのもすごい話ですが(笑)、私としてはこのシンクロにびっくりです。(新書館)


+既読のリヒャルト・ワーグナー作品の感想+
「ラインの黄金」「ワルキューレ」「ジークフリート」「神々の黄昏」リヒャルト・ワーグナー
「タンホイザー」リヒャルト・ワーグナー
「さまよえるオランダ人」「ローエングリン」リヒャルト・ワーグナー

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Commentaires(6)

四季さん、こんにちわ&今年もよろしくお願いします。

新書館のこのシリーズはとっても綺麗ですよね!
「ローエングリーン」も東逸子さんの挿絵で、こちらも素敵ですよ。
「トリスタンとイゾルデ」「さまよえるオランダ人」は天野喜孝氏でこちらも。
こんな素敵な本なのに絶版なのが残念で、常々復刊してほしいと思ってます。
実はこのシリーズ「パルジファル」だけ買ってないし…。

むつぞーさん、こんにちは。
こちらこそ、今年もどうぞよろしくお願いします。^^

新書館のこのシリーズ、ほんとすごいですね。なんと天野喜孝氏もでしたか! 
こんな本が絶版だなんて、ほんと勿体ない…。全部まとめて復刊して欲しいです。
むつぞーさんは色々持ってらして凄いなあ。でも1冊だけ持ってないなんて悔しいですね。
「パルジファル」は誰の挿絵なんでしょう。
今日ね、予約を入れておいたんですよ。借りるのが楽しみです~。

四季さん、すっかりごぶさたしてますが(^^;;
今年もよろしくお願いします。
こんど、タンホイザー序曲を演奏するんです。
私としてはこれもシンクロだなあ、なんて^^
ワーグナーのオペラ曲は音の厚みとかうねりが心地よくて好きです。
が、なんというか、ワーグナー著のこんな本があるとは知らなかったというか、
思いもしなかったというか・・・(はずかしー^^;;)
挿絵も東逸子さんならさぞかし素敵な本だと思うのに
絶版とはもったいないですね。
図書館にあるみたいなのでぜひ見てみます。
すてきな本を教えてくださってありがとうございました!

あとピアノ版のタンホイザーというのもあるんですねえ。はじめて聞きました~
(視聴だけですが。)

わあーー、瑛里さん! お元気でしたか~?
ブログを時々覗いては、更新されないなあ、って思ってたんです。
こちらこそ、今年もどうぞよろしくお願いします。^^
そしてタンホイザー序曲を演奏されるとは。それはすごいシンクロですね。
ということはオーケストラですよね? いいですねえ。
あ、ワーグナーの本ね、実は私もなんです。(笑)
「指環」は読んだのに、それ以外の作品は全然考えてもいなくて… なぜ?(笑)
でもThe Light of the World の nyuさんが年末にバイロイト音楽祭を聴かれてて
その時にお話して、あ、そうだ、本もあるんだって気付いて。
本としては音楽之友社のオペラ対訳ライブラリーもあるようですが
新書館のこのシリーズはオススメですよ!(訳者さん、同じ方でした)

ピアノ版タンホイザーは、リストの編曲なんです。
これも素敵なんですが、やっぱりきちんとしたものも聴きたい、というか
それならいっそのことDVDででもオペラを観てみたい… なんですが
本やCDの方が身近で、後回しになってしまいそうです。(^^ゞ

四季さん、新年のご挨拶が遅れてしまって申し訳ないです。
本年もよろしくお願いします。
さてさてこのシリーズ、
『指輪』『オランダ人』『マイスタージンガー』を読みましたよ。
訳も良いけど、挿絵も素敵ですよね。

『タンホイザー』は実際に新国立劇場オペラで見ました。
音楽は素敵なんだけれど、どうしても物語に納得できない!
ヴェーヌスも気の毒な存在だけれども、
乙女エリーザベトの自己犠牲っていったい・・・??
乙女の祈りによって奇蹟(木の杖に葉が茂る)が起こるのは、
奇蹟として受け入れよう。
でも、どんなに乙女が祈ろうとも、
問題の男自身の反省(懺悔)が乙女のそれと対等のレベルでなくては、
男が許されるハズが無い。
タンホイザーの反省がエリーザベトの祈りを上回ってこそ、
タンホイザーに救いの道が生じるハズ。
そして、タンホイザーの反省の深さが乙女の祈りを上回る真摯さをもっている
というのならば、何故そこにエリーザベトの命の犠牲が伴わなくては
奇蹟を起こしえないのか。
女が男に対して一方的に愛を捧げて魂の救済をしようとしたところで、
男の側にその女の愛を受け入れるだけの心がなければ、神は男を許さないのでは?
いや、許してはいけないのでは。
何で女が一方的に男のために死なねばならんのだよ。
(いや、舞台上ではタンホイザーも結局死んでたけどさ。)
納得できんぞ! 私の感覚からすれば、
「エリーザベトの自己犠牲の愛によってタンホイザーが許された」という事実が
タンホイザーに重くのしかかり、今後のタンホイザーの人生を縛る、
という展開の方が納得出来るなー、と。

菊花さん、こんにちは!
こちらこそ、今年もどうぞよろしくお願いいたします。
菊花さんもこのシリーズ読まれてたんですねー。
お話の方も楽しんでますが、ほんと挿絵が素敵ですよね。
オペラを実際にご覧になったとは、さすが菊花さん…!

あ、物語に関して仰ってることはすごーーくよく分かります。

>「エリーザベトの自己犠牲の愛によってタンホイザーが許された」という事実が
>タンホイザーに重くのしかかり、今後のタンホイザーの人生を縛る、

確かにこの展開の方が数倍説得力がありますよね。私もその方がいいです。
でもね、これはあくまでもワーグナーの時代に書かれたものですからねえ。
どうしても男性のドリーム全開だと思うんですよ。
女性は可愛らしくて優しくて、大切に守ったり崇めたてたりするべき存在で
でもその実、男性は女性の人権なんてこれっぽっちも認めてなくて。
神様にしたところで、唯一無二の絶対的な神というよりも、所詮はキリスト教の神だし…
いや、キリスト教の神様だって本当は唯一無二の神様のはずなんですけど
キリスト教徒(主に男性)によって、既に思いっきりいいようにされてますから。

美しく清らかな乙女の自己犠牲によって、1人の男が救われた…!
ということに当時の観客は酔ったんでしょうね、きっと。
現代人としての感性からいくと受け入れがたい部分があっても
これはもう時代的なものということで、仕方ないのではないかなーと思います。

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