「ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず」1・2 塩野七生

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父と息子と僅かな人々を連れてトロイを脱出したアエネアスが、長い航海の果てにローマ近くの海岸に辿りつき、土地の王女を妻にしてそこに定住、その血を引くロムルスが後にローマを建国することになった... というのは、ローマ人たちに信じられていた建国の物語。「知力では、ギリシア人に劣り、体力では、ケルト(ガリア)やゲルマンの人々に劣り、技術力ではエトルリア人に劣り、経済力ではカルタゴ人に劣るのが、自分たちローマ人である」と自ら認めるローマ人がなぜあれだけの大文明圏を築き上げ、長期にわたって維持することができたのか... それを考えつつローマ帝国の興亡を描きあげる超大作の序章です。

リンゼイ・デイヴィスのファルコシリーズ(感想)にハマって、ヴェスパシアヌス、ティトゥス、ドミティアヌスという3人の皇帝について知りたくてその部分を読み、その後カエサルの前半部分だけを読んだ「ローマ人の物語」。今度は最初の1巻です。やっぱり最初の1冊目から順番に読むというのは重要ですね。例えばファルコシリーズに散々出てくるローマでの役職のことなんかもこの最初の2冊(ハードカバーでは1巻)に出てくるし。ローマにある丘のこともよく分かるし。でも読みながらちょっと混乱してしまったんですけど、これってあくまでも「小説」だったんですね。塩野さんが調べたことを想像を交えて書いた小説。こんなに歴史解説書のような書き方をしているのに、それでも小説なのか!というところで、どうも私としては受け入れがたいものがあるんですが...。

いえ、ローマ部分はいいんです。各人の造形や出来事を膨らませて書いているのが分かるから。でもね、文庫の1巻途中からギリシャについての記述が始まるんですよね。「では、ローマよりは先発民族であったギリシア人は、ローマからの調査団を迎える前五世紀半ばまでに、どのような歩みをしてきたのであろうか」なんて文章で始まって、完全に説明口調で書かれてしまうと、そこはどうしても純粋な解説を読んでいるような頭になってしまうわけです。そこは純然たる事実が書かれているのだろうと思ってしまう。でもそうではないんですね。実際その内容はホメロスの「イーリアス」「オデュッセイア」、アイスキュロスの「アガメムノーン」を始めとするギリシャ悲劇、ヘロドトスの「歴史」といった作品の要約を繋ぎ合わせたようなもの。トロイ戦争から帰ったアガメムノンが浴室で殺されたのはお話だろって分かるとしても、そういういかにも「お話」ってとこ以外は、事実だと思い込む人も多いんじゃないかなあ...。もう少し気を配って書いて欲しいなって思っちゃう。こういうとこも塩野さん流の小説なんだとしたら、どこまで信じて読んだらいいのか分かりませんー。
なんて書きましたが、ローマ人の部分は面白いです。ローマ人がなぜギリシャ人よりもエトルリア人よりも強い勢力となり、そして長い間生き残ったか。それがすごく分かります。私としては、カエサルの部分を読んだ時も思ったんですけど、敗者を滅ぼすのではなくて同化させる道を選んだことじゃないかと思いますね。もちろん寛容な宗教の存在も大きかったでしょうけどね。(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず」1・2 塩野七生
「ローマ人の物語 ハンニバル戦記」3~5 塩野七生
「ローマ人の物語 勝者の混迷」6・7 塩野七生
「ローマ人の物語」8~10 塩野七生 「ガリア戦記」カエサル
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前」8~10 塩野七生(再読)
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以降」11~13 塩野七生
「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ」14~16 塩野七生
「ローマ人の物語 悪名高き皇帝たち」17~20 塩野七生
「ローマ人の物語 危機と克服」21~23 塩野七生
「ローマ人の物語 賢帝の世紀」24~26 塩野七生
「ローマ人の物語 すべての道はローマに通ず」塩野七生

+既読の塩野七生作品の感想+
「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」塩野七生
「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」塩野七生

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Commentaires(4)

こんばんは。
 今年は各地で「ローマ人の物語」を読まれている方が多いですね。
 ローマ人の物語。確かに中には想像やらお話の部分が多いですが、まぁ大筋は資料もしっかりと活用して構築してくれているので、おおむね、一つの歴史観としてよいかと自分なんかはわりきって楽しんでいます。
 上でレビューがあがっているチェザーレ・ボルジアのほうは明らかに小説だとわかるだけに、そのあたりは著者さんもしっかりとわけてくれているのではなかろうか、、とは思うんですけれどね、どうでしょう。
 

樽井さん、こんばんは!
あ、今年は多いですか? 私の周りではあまり見かけないんですよー。

ええと、上にも書いたように、ローマ人の部分はいいんです。この辺りはすごく楽しく読めました!
確かに一つの歴史観として楽しめますよね。後の巻の、カエサル大好き~!ってとこも好印象でしたし。
でもギリシャ部分が…
事実とは言えない部分が複数目について、これはちょっとまずいんじゃないかなあって思ってしまって。
それに記述の真偽以前に、これじゃあちょっとお粗末かなあというのも…
ホメロスもヘロドトスもギリシャ悲劇も古代ギリシャ関係は、2~3年前にまとめて読んだとこなので、尚更かも。
あ、でもメインはローマですしね。以前他の巻を読んだ時も楽しんで読めたし
この巻でもローマ部分は楽しかったんですよー。いえ、本当に。
続きもじっくり読んでいくつもりです。^^

こんにちはー。

私も、いつかは「ローマ人」に手を出したいのですが、いつになることやら(^^;
歴史は好きだけど、カタカタ人名を覚えられない(爆)ので、拒否反応が大きすぎて…。
まぁ、長すぎるというのも敬遠の理由になってますけどね。

手と頭が丈夫な状態で長期入院した時用に、取っておきますわ(笑)
# そんな本が多すぎて、何年入院すれば読み終えるのか分かりません(^^)

あっこさん、どもどもこんにちはー。
おお、あっこさんも「ローマ人」に興味がありましたか。
確かに名前は覚えにくいですよ!
リンゼイ・デイヴィスのファルコシリーズもすごく面白いんだけど
名前を覚えるのに一苦労でしたもん…
同じカタカナでも現代の人の名前とはまた違いますしね。
それでもロシア人の長~い名前よりはマシかな?(笑)

長期入院本には確かにいいかも。
名前がネックで、睡眠導入剤になる可能性もありますが~。(笑)

># そんな本が多すぎて、何年入院すれば読み終えるのか分かりません(^^)

ふふふ、しかもなかなか入院なんてしなさそうですよね。(笑)

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