「柔かい月」イタロ・カルヴィーノ

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遥か昔、元来太陽の周囲を回る惑星だった月は、地球の引力に吸い寄せられてしだいに地球に接近し、とうとう地球の周りに軌道を描くようになります。そして月と地球が相互の引力で引き合った結果、2つの天体の表面は変形し、柔らかい月の表面が地球に滴り落ちることになるのです。それを Qfwfq は帰宅途中の高速道路で見ていて... という「柔らかい月」他、全11編。

以前読んだ「レ・コスミコミケ」と同じくQfwfq 氏の出てくる短編集。あちらでも「月の距離」という月と地球がとても近くにあった頃の話から始まってたんですけど、こちらも月の話から。柔らかい月の表面が地球に滴り落ちるなんて部分もとても映像的で楽いし、その出来事が起きた当時もマディソン・アヴェニューには摩天楼があり、その時の月の滴り(隕石)に破壊されたものを、何百何千世紀かけて「かつての自然のままの外観を取り戻そうとして」再現しようとしているなんて、一体どんな発想なんでしょうね! 「語り」って、ほんと「騙り」なんだなあ。
ということで、この本は「Qfwfq 氏の話」「プリシッラ」「ティ・ゼロ」という3部構成。「Qfwfq 氏の話」で起源としての誕生、「プリシッラ」で細胞分裂としての生と死... 「ティ・ゼロ」で描かれているのは永遠のような一瞬? 最初は前面にいたQfwfq 氏は、第2部に入った頃から徐々に姿を消し始めて、第3部では、もういないも同然となってしまいます。2部の「死」と共に、「個」を失ってしまったみたい。先に書かれた「レ・コスミコミケ」から一貫して語ってきた Qfwfq 氏がこんな風にフェイドアウトするところにも、きっとすごく大きな意味があるんでしょうね。で、その第3部がまた面白かったりするんだわ! こういうの好き好き。そして最後の「モンテクリスト伯」で描かれてるのは、すでに迷宮のようになってしまった「イフ城」からの脱出について。「個」を失ったQfwfq氏は、ここから脱出していずこへ...? というよりカルヴィーノはどこへ脱出しようとしてるんでしょう。そうやって重さを払いのけて身軽になろうとしていたのかなあ。(河出文庫)


+既読のイタロ・カルヴィーノ作品の感想+
「宿命の交わる城」イタロ・カルヴィーノ
「不在の騎士」イタロ・カルヴィーノ
「レ・コスミコミケ」イタロ・カルヴィーノ
「なぜ古典を読むのか」イタロ・カルヴィーノ
「まっぷたつの子爵」「木のぼり男爵」イタロ・カルヴィーノ
「イタリア民話集」上下 カルヴィーノ
「魔法の庭」イタロ・カルヴィーノ
「見えない都市」イタロ・カルヴィーノ
「マルコヴァルドさんの四季」カルヴィーノ
「冬の夜ひとりの旅人が」イタロ・カルヴィーノ
「柔かい月」イタロ・カルヴィーノ
「カルヴィーノの文学講義」イタロ・カルヴィーノ
「パロマー」カルヴィーノ
「くもの巣の小道」イタロ・カルヴィーノ
「むずかしい愛」カルヴィーノ

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Commentaires(2)

四季さんのカルヴィーノ探索も快調に進んで、もうそろそろ終わりが近づいてきましたね。
私は「レ・コスミコミケ」と「パロマー」をまだ積んだままにしています。なんだか読むのもったいないような。

この本はおっしゃるっとおり、Qfwfqが消えてしまった第3部が最高に面白いですよね。
ところでこの本ははなぜ「柔かい月」なんでしょうか。「ら」は無いんですね。

piaaさん、こんにちは。
そうですね、なかなか快調に進んではいるんですけど、「くもの巣の小道」が未読なので
なんだか重要ポイントを外してるような気がしないでもなくて~。
そちらも近いうちに読みたいし、今手元にあるのが「パロマー」と「カルヴィーノの文学講義」なんです。
この2冊も楽しみ!
あ、piaaさんも「パロマー」はまだ読んでらっしゃらないんですね。
確かに読むのが勿体ないような気はしてしまいますよね。私もあまり続けざまに読む気にはならないです。(笑)

あ、ほんとだ、「柔かい月」だ! 今の今まで「ら」がないことに気付いてませんでした…
きゃー、ありがとうございます。ハズカシイ。

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