「さまよえるオランダ人」「ローエングリン」リヒャルト・ワーグナー

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ノルウェーに帰港間近に嵐によって流された貿易船。船長・ダーラントはたどり着いた岸辺に錨を下ろさせ、乗組員たちは休息を取ることに。そこに現れたのは赤い帆と黒いマストの船。その船は見る間に岸に近づくと、ダーラントの船とは反対側に接岸。全身をスペイン貴族のように真っ黒い衣裳に包んだオランダ人の船長が岸に下りたち、幽霊船の水夫たちが陰鬱に歌い始めます。オランダ人の船長を見て自分も岸に降り立ったダーラントは、オランダ人の見せた宝物に魅せられて、娘のゼンタをオランダ人船長に与える約束をすることに... という「さまよえるオランダ人」。
先代のブラバント公爵が娘のエルザと息子のゴットフリートを遺して亡くなって間もなく、ゴットフリートが森で行方不明になるという出来事が起こります。これは公爵領を狙うテルラムント伯爵の妻、実は魔法使いでもあるオルトルートが、ゴットフリートを白鳥に変えてしまったため。テルラムント伯爵は弟殺しの罪でエルザを訴え、丁度ブラバントを訪れていたハインリヒ1世が訴えを聞いて神明裁判を宣言。エルザは夢に現れた白銀に輝く甲冑姿の騎士に、自分の苦境を救ってくれるよう祈ります... という「ローエングリン」。

先日読んだ「タンホイザー」と今回読んだ「さまよえるオランダ人」「ローエングリーン」の3作は、いわゆる「ロマン派歌劇三部作」とされているのだそうです。世の中に出たのは、「さまよえるオランダ人」→「タンホイザー」→「ローエングリン」の順番。「さまよえるオランダ人」でワーグナーらしさが確立されて、「ローエングリン」が一番完成度が高いそうなんですけど... 私としては「タンホイザー」が一番好きだなあ。

まず「さまよえるオランダ人」。私はてっきりオランダ人が七つの海を彷徨う羽目に陥った伝説そのものを描いてるのかと思ってたんですけど、そうじゃなかったんですね! 物語が始まった時、呪いがかけられてから既に相当の年月が経ってました。でも父親が勝手に娘の結婚を決めてしまって、恋人同士が引き裂かれる話かと思ったんですが、どうもそういう話でもないらしく...。
娘がすっかり神懸ってしまって(それともこれは悪魔憑き?)、これじゃあ意味不明だよ... 分からないといえば、オランダ人もワケ分かんないんですけどね。何も1人で全て決め付けなくてもー。そんなことじゃあこれからの結婚生活が上手くいくわけないっしょ? なんて言いたくなってしまうー。(いや、きっとそういう陰鬱なキャラクターということなんですね、きっと) でも天野喜孝氏の挿絵が凄いです。これですっかりオランダ人のイメージは定着。

そして「ローエングリン」は、聖杯伝説に絡んだ話。エルザと白銀の甲冑の騎士の話が中心で、エルザが騎士の名前も素性も聞かないという誓いを立てなくちゃいけなくなるところがポイントなんですけど、まあ見てはいけないと言われれば見たくなるし、聞いてはいけないと言われれば聞きたくなるのが、この世の常。それでも魔女がいなければ、そんなに性急に事は運ばなかったでしょうね。あっさり引っかかったエルザは、まるでパンドラみたいな美しいおばかさん。この話は、実は魔女の1人勝ちのような気がします。この魔女はゲルマン神話の神々を信仰してるのかな? 「恩恵に浴しながら、おまえたちが背いた神々の 恐ろしい復讐をいまこそ思い知るがいい」なんて台詞が出てきます。ゲルマン神話の神々を信仰してるとなると、そんな悪い人に思えなくなってしまう私もダメダメ。(笑)
ということで、こちらは東逸子さんの挿絵です。エルザ、可愛いなー。(新書館)


+既読のリヒャルト・ワーグナー作品の感想+
「ラインの黄金」「ワルキューレ」「ジークフリート」「神々の黄昏」リヒャルト・ワーグナー
「タンホイザー」リヒャルト・ワーグナー
「さまよえるオランダ人」「ローエングリン」リヒャルト・ワーグナー

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先日紹介されていた「ニーベルングの指環」もそうですが、こんな本があったんですねえ。
ワーグナーの楽劇は昔から好きでよくCDで聴いたりDVDやTVで観たりしているのですが実際の演奏は聴いた事がありません。音楽が強烈なのでアレですが、物語の方も世界初のヒロイックファンタジーかもしれない当時としては斬新なものですよね。

「ローエングリン」はワーグナーの作品では、音楽的には一番面白くない作品です。この三作では音楽的にはおっしゃるとおり「タンホイザー」が一番ですね。

わあ、piaaさんはワーグナーがお好きだったんですね。
私は音楽の方はちょろちょろと聴き始めてるんですけど、まだほんの初心者で~。
まだ聴いたことないのもいっぱい残ってるんです。
オペラも、まずはDVDででも観てみたいなと思ってるんですが… 長さを考えるとなかなか。
でもやっぱり観てみたいですねえ。そしていずれは実物も!
あ、「タンホイザー」の曲は、ほんととても素敵ですよね。大好きです。^^

このシリーズの「指環」は、アーサー・ラッカムの絵が美しいですよ~。
叙事詩としての「ニーベルンゲンの歌」とは、話がまた少しずつ違っていて
ワーグナーが自由に作り上げてる部分がとても興味深いです。
piaaさんもぜひ手に取ってみてください。^^

四季さん、こんにちは。
「さまよえるオランダ人」…たしかによくわかんないですよね。
なんでゼンタちゃんはいきなり幽霊船長に心を寄せはじめるのか、しかも恋人がいながら…肖像画に呪いがかけられていたとか…あるいは少し浮気性なんですかね(?)
ワーグナー作品に共通する「運命の愛」ってやつなんでしょうけど。
これも音楽が有名なだけに、曲を耳にするたびに不条理感がよみがえってしまって。
オペラはたいてい不条理のカタマリみたいなもの、ということもありますが。
いえ、でもやはり音楽はいいので、好きな作品です。

nyuさん、こんにちは~。
ああ、nyuさんも分からないと思われてましたか。
そうなんですよねえ、そもそもなんであの肖像画があったのかも謎だし…
ゼンタの恋人の青年がひたすら可哀想ですよねえ。
そんな浮気性な女の子だったら、船長ともうまくいくはずないじゃないですかねーっ。(笑)
「指環」とか「タンホイザー」は、筋書きとしてはきちんとしてたと思うのに
なんでこの作品はこんなに説明不足なんでしょう…
これじゃあ、破綻してると言ってもいいぐらいですよね?
まあでも…
結局、音楽の素晴らしさで全てが許されてしまうのかもしれないですね。(笑)

 こんばんは。
 さまよえるオランダ人。歌劇があったんですね。永遠に帰りつけない不死の船乗りの話という認識を僕はたくさんのホラーや伝奇ものの中でもっていたのですが、それと原典は違ったりするのですね。
 オランダ人はなにかと頭が悪いということでジョークのネタにされる民族みたいですがなんででしょうかね。
 

樽井さん、こんにちはー。
さまよえるオランダ人ね、元々は民間伝承なんですけど
それをハイネが詩にしたものを元に、ワーグナーが歌劇にしたんだそうです。
で、永遠に帰りつけない不死の船乗りの話という意味では、これもそうなんですよ。
そのさすらいに決着をつけるような話です。
でもね、読む前はその呪いをかけられたきっかけの話なのかと思ってたので
そうではなくてちょっとびっくりしたという…(ややこしいですね、すみません)


ハイネの「フォン・シュナーベレヴォプスキー氏の回想記」が元になったんだそうです。
そちらも読んでみたいんですが、これも既に彷徨ってるのかもしれませんね。(笑)


オランダ人はなんででしょうね? イギリス人は相当のオランダ嫌い?
「Go dutch」といえば割り勘のことだし… いや、それはマシな方ですよね。
ひどい言い回しが結構沢山ありますよね。

 四季さん、こんばんは。
 まさかとは思いますが、イングランド的にはオランダのバイキングにけちょんけちょんに攻め込まれたときの怨みがあるとか。。。あのお国ではいまだに「カエサルに侵略されたときから、我々の歴史は始まる」みたいな言い方もされるとかききますし、イングランドでそういうネタをつくったときにはまだそのイメージがあったとか??  まさかね。

樽井さん、こんにちはー。
オランダのバイキング? そんなのもあったですかー。それは知らなかったです。
バイキングといえば、デンマークとかノルウェーとかその辺りかと。
あとね、17世紀にイギリス・オランダ間で3回も戦争があったそうなんで、それかなあとか
それともイギリスがオランダのことを一方的に一段低く見てるのかなあーと思ったり。
でも一段低く見る程度じゃあんなに言い回しはできませんかね? もっと積極的に嫌いという感情がないと。

イギリスのフランス嫌いの方が有名なのにね。今思い浮かぶのは「french disease」ぐらい…。

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