「夢の丘」アーサー・マッケン

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貧しい牧師の家に育ったルシアン・テイラー。学校の休みの期間に牧師館の近隣の見晴らしのいい場所を見つけようと歩き回り、空の凄まじい赤光に目を奪われ、人の通らなくなった暗い小径を歩き回り、ローマ人が大昔に作った砦を眺めます。書物が好きで、様々な文学を読んで成長したルシアンは、やがて円い小山の秘密や秘境の谷の魔法、葉の落ちつくした林の中を赤い渦を巻いて流れる小川の音などを英語の散文に移し変えたいと、少しずつ書き始めることに。

「空にはあたかも大きな溶鉱炉の扉をあけたときのような、すさまじい赤光があった」という文章から始まる物語。その「赤い光」は作中に時々登場し、最後の最後までとても印象に残ります。
これはアーサー・マッケンの自伝的作品なんでしょうね。文学少年のルシアンが、自分の家の周辺の景色の美しさに気づき、その感動を文字に書き留めようとします。出版社に送った原稿は結局盗作されてしまうのですが、それでも書き続けるルシアン。ルシアンの持っている理想は現実から乖離してるし、ルシアン自身がルシアンの幻想の世界に生きているようで、ものすごく現実感がないんです。これは結局、現実と理想のあまりのギャップの大きさにルシアン自身が耐え切れなかった、ということなのかしら。ルシアンの書く言葉、そして作り出す文学はその橋渡しになるものというよりも、幻想を支える土台のようなものだし... 現実と向き合うための盾のようなものですね。そして読んでいる私も徐々に現実感を失ってしまうことに...。
場面場面の描写はとても印象に残ってるんですが、でもそれが頭の中で1つの流れとはならなくて、バラバラに存在してるみたいな感じなんです。今ひとつ掴みきれなかったのが残念なんですが、なんだか不思議な作品だったなあ。

作家の朝松健さんのこのお名前ってアーサー・マッケンからなんですかね?(創元推理文庫)

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