「日本語が亡びるとき」水村美苗

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体調を崩していたにもかかわらず、アイオワ・シティで行われるIWP(International Writing Program)という長期プログラムに参加した水村美苗さん。そのプログラムに参加している作家は総勢20名以上。日本人は水村美苗さんのみで、中国、韓国、ヴェトナム、ビルマ、モンゴル、ボツワナ、イスラエル、ポーランド、ルーマニア、ハンガリー、ウクライナ、リトアニア、ボスニア、イギリス、アイルランド、ドイツ、ノルウェー、チリ、アルゼンチンの詩人や小説家という多彩な顔ぶれとなります。そしてこの時水村美苗さんは、地球のありとあらゆるところで、金持ちの国でも貧乏人の国でも様々な政治状況のもとで、様々な言語によって人は書いている、と実感することに。

日本語と日本語の文学に対する危機感について論じる作品。「日本文学が「文学」という名に値したころの日本語さえもっと読まれていたらと、絶望と諦念が錯綜するなかで、ため息まじりに思っている人たちに向けて書かれているのである」として、「普遍語」「現地語」「国語」の3つの概念から言語について考えていきます。
まず、この「普遍語」「現地語」「国語」の概念が面白いんです。それに日本語における漢字・ひらがな・カタカナのことについても漠然としか知らなかったので、すごく興味深く読みました。漢文の返り点って、平安時代からつけられていたんですね! 漢文を読みやすくするために、平安時代の人々は漢文の横に返り点をつけ、助詞や語尾を書き添えるようになったのだとか。最初は漢字をそのための表音文字として使ってたそうなんですけど(真仮名)、やがてその文字が省略されカタカナとひらがなが生まれることになったのだそう。その頃の日本における「普遍語」は漢文。
でも、かつてはギリシャ語やラテン語、その他聖典や教義書を書く言葉だった「普遍語」が長い年月を経た今、英語の一人勝ちになってるというんですね。

多少冗長に感じられた部分もあったし、近代日本文学に対する個人的な感傷も感じたし、最終的な結論も少し急ぎすぎているような気がします。それでも1章のアイオワ大学での話、パリでの講演から続いて自然に展開していく論はとても面白かったし、興味深く読みました。ただ、確かに1人1人が日本語を大切にしていかないと日本語の存続も危ぶまれる状況にはなるのかもしれないし、既に「美しい日本語」が失われつつあるというのは日々感じてるのだけど、やっぱり日本語とその文学が亡びることはないと思いますね。たとえ全てが英語に置き換えられてしまっても、ギリシャ・ローマ文学といった過去の言葉で書かれた文学を読み、その原典を参考にする人間は決していなくならないのとは同じように。そもそも第1章で、自分の言葉で書き続けている作家たちのエピソードがあったではないですか。もちろん、そのためにはそれぞれが意識を持つことがとても重要なのだけど。

「私小説From Left to Right」を唯一訳すことのできない言語は英語... ほんとだ、確かにその通りですね! いや、これは盲点でした。(笑)(筑摩書房)


+既読の水村美苗作品の感想+
「本格小説」上下 水村美苗
「私小説 from left to right」水村美苗
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「日本語が亡びるとき」水村美苗

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Commentaires(2)

ギリシア・ローマ文学を例にした文学の未来へのお言葉とても感銘を受けました!
ほんとほんと四季さんの仰られる通りだなあって・・・。
わたくしはこの本は100ページほど図書館で読んであとは色々なブログを巡回して情報を集めて文学の未来についてちょっと考えてみました。でも考えているうちに混乱してしまったのですが、僕が言いたかったことって四季さんの書いて下さったことなんだなあって気づけて、でも自分ではそれをどういう風に書いていいのか判らなかったのに四季さんはそれをズバリと言い当てて下さったことに感激しました。すごい!すごいなあ^^
僕も四季さんのように表現できたら!って強く感じました。
ではでは~^^

ええっ、ほんとですか!>感銘
そ、そんな感激だなんて照れますぅ。いいのでしょうか。
でもでも、kyokyomさんも同じことを感じてらっしゃったんですね。^^

いつもブログに感想をアップする時はアマゾンでASINとか調べるんですが
この本には随分沢山レビューがついててびっくり。
私は水村美苗さんの本を全部読むつもりにしてるので、当然のように手に取ったんですけど
他の方が全員そうだとは思えないですよね。
となると、テーマに惹かれた方も少なからずいらっしゃるというわけで…
それだけ問題意識を持ってる方が多ければ、きっと亡びないですよね。(笑)

100ページって言ったら、最初の2章ぐらいですか?
考えも一段落したところで、続きも読んでみてください。^^

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