「ねじの回転・デイジー・ミラー」ヘンリー・ジェイムズ

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スイスの小さな町・ヴェヴェーのホテル「トロワ・クロンヌ」に滞在している伯母の見舞いにジュネーヴから来ていたアメリカ人青年・ウィンターボーンは、このホテルに母親と弟、従僕と共に滞在していた若く美しいアメリカ人のデイジー・ミラーに出会います... という「デイジー・ミラー」。そして、夜になると暖炉のまわりに集まり怪談に聞き入る人々のためにダグラスが話すことになったのは、妹の家庭教師だった女性が体験した出来事。彼女は20年前に亡くなっているのですが、死ぬ前に、初めて家庭教師をした屋敷で起きた出来事を原稿に書き、ダグラスに送ってきていたのです...という「ねじの回転」の2編。

先日新潮文庫で読んだ「ねじの回転」の訳が今ひとつだったなあと思っていたら、kotaさんが岩波文庫の訳が一番しっくりきたと教えて下さったので、早速リベンジ。確かにこっちの方が全体的に訳が滑らかで読みやすかったです! やっぱり文章に気をとられないと、その分純粋に楽しめますねー。でも訳を細かく見比べる気なんていうのは毛頭なかったし、最初から最後まで通して読むだけのつもりだったんですけど、「あれ、ここって...?」と不思議になったところがいくつかあったので、結局その辺りだけちょっと見比べてみることに。そしたらこれが相当違っててびっくりです。
例えば、家庭教師となった彼女が学校の校長からの手紙を家政婦に渡そうとした場面。

字が読めないのです! しまったと思い、なんとかとりつくろい、書簡を開いて彼女に読んでやりました。それから、途中でつっかえたこともあって、結局、折りたたんでポケットにしまうことになりました。(岩波文庫)

わたしの相談相手は字が読めないのだ! わたしはへまをしてしまってたじたじだったが、でも出来るだけとり繕おうとして、また手紙をひらいた。そして彼女に読んで聞かせようとしたが、いざとなるとまたためらわれて、もう一度それをたたみ直し、ポケットに戻した。(新潮文庫)

違いますよね。結局、彼女は手紙を読んだのでしょうか。それとも読まなかったのでしょうか...?(笑)

前回読んだ時も、下男と前任の家庭教師のことは大体分かってたつもりなんですけど(新井潤美さんの「不機嫌なメアリー・ポピンズ」を読んだしね →感想)、岩波文庫では先に「デイジー・ミラー」が入っているので、ここで階級とか男女の付き合いのことに関するヴィクトリア朝風の道徳観が読者の頭にしっかりインプットされるんです。確かにこの構成は技アリだなあ。

そしてそのデイジー・ミラーも面白かったです。こちらは登場するのはアメリカ人ばかりなのに、舞台は歴史と伝統のあるヨーロッパ。主人公の若者は常識的な紳士だし、その伯母さんは社交界で地位のある人物。でもミラー家は裕福なんだけど、ニューヨークの社交界では低く見られる存在。デイジー自身も、とても美人なんだけど教養はないと見なされてます。男性と2人でも気軽に外出するデイジーに、アメリカ上流階級の婦人たちは眉をひそめるんです。
アメリカ人たちがニューヨークの社交界とそこの価値観をヨーロッパにそのまま持ち込んでいるというのが、なんか可笑しいんですよね。みんな自由気侭なデイジーのことをアメリカの面汚しだって考えてるんですけど、実際にヨーロッパの社交界の人々はどう思うのかしら? アメリカの社交界のことなんて、実は洟も引っ掛けてないんじゃないかしら。だからこそ、ここまで頑張っちゃうのかもしれないなー。(岩波文庫)


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