「ローマ人の物語 ハンニバル戦記」3~5 塩野七生

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紀元前265年、シチリアの第一の強国・シラクサがメッシーナに進攻し、メッシーナはローマに救援を要請。ローマはメッシーナとは同盟関係になく、しかもローマの軍団はいまだ海を渡ったことがないにもかかわらず、メッシーナの要請を受諾することを決定します。もしローマが断れば、メッシーナがカルタゴに頼ることは目に見えており、カルタゴがメッシーナを手に入れると、ローマまでもが危うくなってくるのです。結果的にメッシーナとシラクサを手に入れたローマにカルタゴが強い危機感を抱き、第一次ポエニ戦役(紀元前264~紀元前241)が勃発することに。

ローマとカルタゴとの間に闘われたポエニ戦役を中心に対外戦争の時代を描く巻。第一次ポエニ戦役の勃発する紀元前264年から、スペイン全土を領有することになる紀元前133年までの130年間を、プロセスを丹念に追いながらみていきます。カルタゴといえば、ローマの祖・アエネイアスと恋に落ちたディードの国~。なんですけど、ここではそういった伝説的なことには全く触れないんですね。「ローマは一日にして成らず」の時とは違って、今回はアレクサンダー大王のことなんかもきちんとしたスタンスで書かれていたように思います。

いや、この巻はほんと面白かった。面白いとは聞いてたんですけど、ほんとすっごく面白かった。子供の頃にハンニバルの本を読んだことがあるんですけど、そもそも戦争物は好きじゃなかったし、印象に残ってるといえば、せいぜい象ぐらいだったんです、私。(汗)
でも海軍どころか輸送船すら持っていなかったローマが、地中海最強の艦隊を擁する海運国カルタゴに対するために船を作って船の漕ぎ手を育成して、陸戦が得意なローマ軍ならではという工夫を凝らして... なんて読んでるとほんとワクワクしてしまいます。やっぱりこの柔軟さがローマの武器なんですねー。そして2人の対照的な男たち。まずは孤高の男・ハンニバル。彼に最後まで付き従った兵士たちにとって、ハンニバルは父親のようなものだったのではないでしょうか。兵士たちはハンニバルの背中を親父の背中のように見て育っていったに違いない。そしてハンニバルの好敵手・スキピオ。こちらは孤高なハンニバルとは対照的な、人の心を掴むのが上手い大らかで人懐こい青年。彼ら2人の姿が対照的に描き出されていて、それだけポエニ戦役の明暗がはっきりと現れているような気がします。

そして今回もローマの特徴として色々出てきたんですけど... 敗軍の将に責任を求めないこととか、軍の総司令官である執政官に一度任務を与えて送り出したら最後、元老院ですら口出しはしないこととかね。戦争続きで国庫が空になっても、簡単に増税したりしないとかね。でも旧敵国にとってはとても温情なはずの措置も、一歩間違えると弱腰と間違えられちゃう。ここで塩野七生さんが強調しているのは、こういった「穏やかな帝国主義」が成功するには、双方共に納得して許容している必要があるということ。確かにそうかもしれないなあ。そして紀元前146年、ローマはそれまでの「穏やかな帝国主義」から「厳しい帝国主義」に方針を転換することになるんですが、この辺りが納得できるのは、確かにこれまでのプロセスを丹念に見てきたからこそなんですね。(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず」1・2 塩野七生
「ローマ人の物語 ハンニバル戦記」3~5 塩野七生
「ローマ人の物語 勝者の混迷」6・7 塩野七生
「ローマ人の物語」8~10 塩野七生 「ガリア戦記」カエサル
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前」8~10 塩野七生(再読)
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以降」11~13 塩野七生
「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ」14~16 塩野七生
「ローマ人の物語 悪名高き皇帝たち」17~20 塩野七生
「ローマ人の物語 危機と克服」21~23 塩野七生
「ローマ人の物語 賢帝の世紀」24~26 塩野七生
「ローマ人の物語 すべての道はローマに通ず」塩野七生

+既読の塩野七生作品の感想+
「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」塩野七生
「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」塩野七生

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