「小鳥たちが見たもの」ソーニャ・ハートネット

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おかあさんと離れ、おばあちゃんとローリーおじさんと暮らすようになって、新しい学校に通い始めた9歳のエイドリアン。学業はそこそこ、運動はオンチ、それでも美術だけは飛びぬけて得意という引っ込み思案の大人しい少年。学校で仲良しなのは、同じく運動オンチのクリントン。そんなある日のこと、エイドリアンはテレビで3人の子供が行方不明になったニュースを見ることになります。それはエイドリアンの家の近くでの出来事。メトフォード家の3人の子供、10歳のヴェロニカと7歳のゾーイ、5歳のクリストファーが日曜日の午後にアイスクリームを買いに家を出たまま、そのまま帰って来ていなかったのです。

もう、息が止まりそうになりました...。こういう話だったんですね。読み終えた時は、もうショックが大きすぎて何も書けそうにないと思ったんですが、一晩経って少し落ち着いたので、やっぱり何か書いておかないと。
いえね、最初から不穏な空気が流れてるんです。冒頭は3人の子供たちのいなくなった場面。その時のことが淡々と書かれていて、その締めくくりは「三人の子どもはアイスクリームを買うこともなく、家にももどらなかった」。でもこの3人の話はここまで。そして始まるのが主人公のエイドリアンの話。
エイドリアンは、とても感受性の強い子なんですね。本当は美しいものにも敏感なんでしょうけど、ここで語られるのは怖いものの話。エイドリアンには怖いものが沢山あるんです。頭の中に怖いものリストがあって、その日の朝に朝刊で見た「海の怪物」もその1つ。「ナショナル・ジオグラフィック」で見た流砂もそうだし、自然発火や津波もそう。閉店後の店に閉じ込められるのも怖ければ、学校におばあちゃんが迎えに来なくなるのも怖いし、色々と想像が膨らんでしまうのを止められないんですね。だからこそ美術が得意にもなるんでしょうけど。
祖母と叔父と一緒に暮らしてるのは、どうやら母親が精神的に不安定だからみたい。祖母も日々頑張ってるんですが、エイドリアンが同じ家にいること自体に苛々してます。周りに誰1人として、余裕がある人間がいないんです。みんな自分のことに必死で、無条件にエイドリアンを胸に抱きとめられるような状態じゃなくて。みんな悪い人間じゃないし、エイドリアンのことを愛してるのに。エイドリアンはそんな手がかかるような子じゃないのに。
そして学校でも色々あります。学校でのエイドリアンの友達はクリントンだけで、でもエイドリアンはこのたった1人の親友に満足してるんですが...。

大人の余裕のなさとか、子供の世界の残酷さとか、そういうの1つ1つは自分の身近でもよく見かけるようなことなんですけどね。私はエイドリアンみたいな感受性はもってないけど、でもどれもがものすごく痛いほど分かりすぎてしまって(しかもこのおばあちゃんが、うちの母そっくりなんだわ)、何もかもが一気にエイドリアンに襲い掛かってくるようで、それがまさにエイドリアンの怖がってる流砂や津波のようで、いたたまれなかったです。それでいて物語そのものはとてもとても静かで美しくて、最後は、ああ、小鳥が飛び立ったんだな、って思ったのだけど。
最初のソーニャ・ハートネット作品がこれでなくて良かった。いえ、本当は最初に読むのに相応しいような作品なんだけど... 私にはちょっとつらすぎました。(河出書房新社)


+既読のソーニャ・ハートネット作品の感想+
「銀のロバ」ソーニャ・ハーネット
「小鳥たちが見たもの」ソーニャ・ハートネット

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小鳥たちが見たもの ソーニャ・ハートネット/河出書房新社 両親と別れ、祖母と暮らす少年エイドリアン。街では、行方不明になった子どもたちのニュース... » Lire la suite

Commentaires(4)

四季さん、こんにちは!
あの静謐で美しいラストを読んだ気持ちは未だに忘れられません。
しばし言葉を紡げず、どう感想を書こうか立ち止まってしまいましたもの。
複雑に気持ちを揺さぶられながらもソーニャの世界に夢中になっていました。

今手元に『木曜日に生まれた子ども』と新作『サレンダー』があります。
またどっぷり浸ろうと思います♪

TBさせていただきますね。

リサちゃん、こんにちは!
ご報告に伺わなくちゃと思っていたら、先に見つかっちゃいましたね。
見つけて下さってありがとうございます~。
ほんと、あのラストはすごいですね。
この上なく静謐で美しくて、でもすごい衝撃で…。
いや、あそこまで美しいからこそ、これほどまでに衝撃も大きかったんでしょうね。
もう本当に、昨日の晩は寝られないかと思いました、私。(笑)

あとがきに、ソーニャ・ハートネットは1作ずつ雰囲気が違うとあるし
確かに「銀のロバ」とこの作品とはまた全然違っていたので
他の2作、私もぜひ読んでみようと思ってます~。
どんな感じなのか、楽しみですね。^^

四季さん、こんばんは。
「最初の」ソーニャ・ハートネット作品として読んじゃったので、
ちょっとんーぎゃーー!!でした。
美しいんだけど、美しいんだけど、あまり鳥肌とか言いたくない
んですが、ぞわぞわきて仕方ありませんでした。
衝撃ですよねえ。

でも、めげずに(?)、他の作品も読んでみようと思います。

「小鳥たちが~」も心を痛めるような物語ではあるけれど、それでも
魅力がありますものね。
四季さんのこの記事からもそれが伝わってきましたし(途中でこの本
読む!と決めたので、最初は四季さん記事を斜め読みしてたんですけど)、
やっぱり読んで良かったと思います。
他の作品も楽しみです。

つなさん、こんにちは。
わー、最初に読まれたのですねー。それは「んーぎゃーー!!」ですね。(笑)
でしょでしょ、ものすごく美しいんですけどね。それだけに衝撃がーーー。
後ほどつなさんの感想を拝見させていただきますね。楽しみ♪

でもツラすぎるほどツラいんだけど、読んで良かったと思える作品ですよね。
それがすごいと思います。
もし私がこの本を最初に読んでしまったら、もう衝撃が大きすぎて動揺しすぎて
当分他の本を手に取れなくなっちゃうと思うんですが(実際、今すぐには無理です…)
それでもやっぱり時間が経てば、他の本を手に取るようになると思いますし。
ふふふ、「最初に」読んでしまったつなさんもぜひぜひ♪

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