「ペネロピアド」マーガレット・アトウッド

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トロイア戦争に10年、そしてエーゲ海を彷徨うこと10年。20年の留守の後にオデュッセウスが見出したのは、オデュッセウスだけをひたすら待っていたペネロペイア。従妹であるトロイアのヘレネほど美しくはないものの、ペネロペイアは頭が良く貞節な妻、とホメロスの「オデュッセイア」では伝えられていますが... ペネロペイアと、オデュッセウスの帰還の後吊るし首にされた12人の女中たちが冥界で語る、また別の「オデュッセイア」の物語。

以前読んだ「侍女の物語」がとても面白かったマーガレット・アトウッド。あれは旧約聖書のエピソードを元にしてたんですけど、こちらはギリシャ神話。ホメロスの「オデュッセイア」(感想)です。先日読んだベルンハルト・シュリンク「帰郷者」(感想)に続いての「オデュッセイア」ネタ。ギリシャ・ローマ時代の目ぼしい作品はほとんど読んでしまっているので、こういうところでも読めるなんて嬉しいです~。これは英国のキャノンゲイト社が主催する「新・世界の神話」企画の一環なのだそう。世界の超一流の作家たちによる神話が毎年数作ずつ刊行されて、2038年には100冊目が配本される予定なのだとか。これまた楽しそうな企画ですよね。

で、この作品、ペネロペイアが中心となって語り、その合間に処刑された12人の女中たちがギリシャ悲劇のコロス風に歌い、終盤では現代的な裁判が行われたりと工夫はあるんですが...
うーん、ちょっと描きこみ不足ですかね。どうも圧倒的に枚数が少なすぎた気がします。なんでこんなに軽く流してしまうんだろう? もしかしたら枚数制限でもあったのかな? オデュッセウスの遍歴の中の一つ目の巨人キュクロプスとの戦いが、実は酒場の片目のあるじとの勘定の不払いをめぐる争いだったとか、女神カリュプソとの愛の日々は、実は高級娼館で寄居虫になってただけだったとか、そういうのはいいんですけど... そういうのを出すんであれば、ペネロペイア側もそれに応じてもっと変化させて欲しかったし、それでも敢えて「気高い方のバージョン」を信じるというんだったら、それ相応の作りにして欲しかった気がしますねえ。なんだか中途半端。マーガレット・アトウッドなら本当はもっと全体的に作りこむことができたはずなのに! それだけの力がある人だと思うのに! 目新しさがなくてとっても残念。そもそもこの題名自体、意味が分かりませんよね... このシリーズの他の作品も読んでみようと思ってるのだけど、他のもこんな感じだったら悲しいなー。(角川書店)


+既読のマーガレット・アトウッド作品の感想+
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+既読の新・世界の神話シリーズ作品の感想+
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