「望楼館追想」E・ケアリー

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フランシス・オームが住んでいるのは、望楼館と呼ばれる建物。24世帯が暮らせるように設計されているのですが、現在住んでいるのは7人だけ。まずフランシスとフランシスの両親。いつも白い手袋をはめている37歳のフランシスは彫像となりきる仕事をしており、趣味は他人が大事にしているものをコレクションすること。父は椅子に座り続け、母はベッドに寝たきり。そして常に汗と涙を流し続けているピーター・バッグ、部屋に閉じこもってテレビばかり見ているクレア・ヒッグ、まるで犬のような「犬女」、最後は極端に綺麗好きの門番。望楼館はかつては偽涙館と呼ばれた16世紀の荘園の領主館(マナーハウス)であり、オーム家が何世紀にもわたって所有してきたもの。しかし今はオーム家も没落し、現在のこの姿に改装されていたのです。そんなある日、玄関の告知板に18号室に新しい住人が入るというメモ用紙が貼られ、今の静かな生活を失いたくない住人たちは恐慌に陥ります。

ああ、面白かった~。ここ3日間ほど小出しにしながら読んでたんですけど、もう現実の世界に戻って来られなくなりそうになりました。不思議で、でもなぜだかとても馴染んでしまう雰囲気。境目を意識させられるというか。これは好き嫌いが分かれるかもしれないですね。挿絵は作者自身によるものなんだそうで、かなりシュールな人物像がついてます。これを見て思い出したのが、マーヴィン・ピークの「ゴーメンガースト」。タッチは全然違うんですけどね。そしてティム・バートンの世界にも通じるような...。主人公のどこか歪んでいる「物」へのこだわりは「アメリ」を思い出すし。愛し愛されたいとは思っているのに、求めていた形での愛がなかなか得られない人々。
舞台となる望楼館はまるで時間が止まってしまっているような場所。ここに住む人々の時間も止まってしまってるようで、みんなそれぞれに自分の内面にこもって、過去の時間に生きています。かつては素晴らしい邸宅だった望楼館も今は哀しいほどの荒廃ぶりだし、このまま建物も人々もじわじわと消滅していってしまいそうな感じなんですが、そこに登場するのがアンナ・タップという女性。彼女の登場によって、止まっていた時間がまた動き出すことになります。
傷つきやすく臆病な登場人物たちの姿そのままに、物語そのものも少しずつ少しずつ近づいてくるような印象。短い章の積み重ねで丹念に追っていくせいか、全体の長さを感じさせないし、とても読みやすくて~。印象に残る場面が色々あったんだけど、特にフランシスの父と母の意識がそれぞれに過去を辿って最終的に出会う場面が素敵でした。(文春文庫)

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Commentaires(2)

静かに染み入るような素敵な作品ですよね。
どこか幻想的な雰囲気がとても好き。
何よりも題名が本当に秀逸だと思います。
だいぶん昔に読んだのですが,また読み返したくなる物語です。

話は変わりますが「カレワラタリナ」無事に入手しました。
かつて第三文明社レグルス文庫から刊行されていた本の再刊のようです。
ちなみに次は「ヘイムスクリングラ(二)」の模様。
ゆっくり待ちたいと思います。

この作品、元々は森山さんに教えて頂いたんですよね、確か。
いつのことなのかすっかり忘れてしまったほど前のことですが…
ようやく読めましたよ!
素敵な作品を教えて下さってありがとうございます♪
ほんと、この雰囲気がとても素敵ですね~。戻ってきたくなくなります。
そうそう、題名もすごくいいですよね。原題よりもずっといいんじゃないですか?
ほんとぴったりですもん。素敵ですよね。

「カレワラタリナ」ありましたか。私も買いに行かなくちゃー。
そうか、レグルス文庫のと同じなんですね。
散文訳というのがちょっと残念なんですが、それでも楽しみです。
「ヘイムスクリングラ」の続きも嬉しいですね!

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