「永遠を背負う男」ジャネット・ウィンターソン

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ギリシア神話の巨人族ティタンのアトラスは、ポセイドンと大地の息子。かつてアトランティス大陸の住人たちはアトラスに忠誠を誓っていたのですが、ゼウスとの戦いでティタン族は破れ、アトランティス大陸は沈み、アトラスはその巨躯で天地を背負うという罰を受けることに。そして時が流れ、そこにヘスペリデスの園に金の林檎を取りにやって来たヘラクレスが現れます。ヘラクレスはエウリュステウス王のために様々な仕事をさせられており、これが11番目の仕事。アトラスはヘラクレスにしばらくの間その重荷を任せて、ヘスペリデスの園に林檎を取りに行くことに。

マーガレット・アトウッドの「ペネロピアド」同様、英国のキャノンゲイト社が主催する「世界の神話」シリーズの第一回配本作品。この物語の主人公は、ギリシャ神話に登場する巨人・アトラス。天地を背負う巨人。そしてこのギリシャ神話のエピソードにジャネット・ウィンターソン自身の物語が絡められています。
ギリシャ神話で見るアトラスは、その重荷を重荷であるとしか捉えてないはずなんですが、こちらの作品ではアトラスがその重荷を憎みながらも愛しているようなところが特徴。一時はヘラクレスがその重荷を代わって背負い、そのままアトラスが逃げてしまうこともできそうになって... でも結局アトラスはヘラクレスに騙されてまた重荷を背負わなくちゃいけなくなるんですが、ここでアトラスは騙されて怒るのではなくて、「やさしく穏やかに、ほとんど慈愛をこめた行為として背負う」のです。本当に辛いのであれば、世界がどうなろうとも構わず下ろしてしまえば済むこと。
そしてこの重荷の話は、いつの間にかジャネット・ウィンターソン自身の重荷とシンクロしていきます。彼女の重荷は、やはり宗教的に厳格な里親の家庭に育ちながらも同性愛に目覚めてしまったことなのでしょうね。重荷を下ろしてしまえば、世界は崩壊してしまうかもしれない。それでも彼女は自分の重荷を下ろします。その時どうなったか。結局のところ、本当に世界が崩壊することなんて、なかなかないってことですね。ほんの少しの勇気を出せばいいだけのこと。そんなメッセージが伝わってくるようです。
マーガレット・アトウッドとの違いは、この長さでも語りたいことはしっかり語りつくしてるってことかな。ヘラとヘラクレスの会話も面白かったし、アトラスとライカの邂逅も素敵でした。(角川書店)


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